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OP 第6話 【ニンゲンの感情は読めない】

ページを開いてくださりありがとうございます!

もし面白いと思ったら、ブクマ評価をして頂けると今後の励みになります!

初投稿で不慣れな点も多いかと思いますが、よろしくお願い致します!


コメントの方も、気軽にして頂ければと思います!

「ソフィアさ~ん、大丈夫~?」


「あ……」

 私が派手に転倒したという話を聞いて、救護班の教員が駆けつけてくれた。私の体温や心拍数を手際よく計った。


「あら、この程度ならすぐに治りそうよ~」

「……この程度?」


 まさか。あれだけのたうち回るような痛みが走ったのに、まるで軽傷みたいな言い回しだ。


「あの……右肩、診てもらえませんか。どうにかなってませんか?」

「ん~……? なんともなってないわね。何かあったの?」

「え!? いや、だって……!」


 そう反論しかけた時。さっきまで右肩にあった違和感が一切なくなっていることに気がついた。もちろん、身体は疲労したままだ。

 なぜか肩だけ。手も動くし、痛みもない。肩も普通に回る。


「……えっと、治っちゃったみたいです」

「あら、ホント! いいの~?」

「ええ、大丈夫です。ありがとうございました」


 思い返してみれば、治療が始まった時点で既に痛みがなかった気もする。ただの思い込みだったのだろうか、それとも……。


「……そうだ、あの人」

 私を執念深く狙っていた──ジオ。

 アイツ、今どんな顔をしているのだろうか。少し悔しさもあって、彼の姿を探してみた。

 憎きエルフを狩ってやったと誇らしげな顔をしているか、殺し損ねたと苦虫を噛み潰したような顔か、もしくは──。


「……いた」


 見つけた。少し離れたところで、ビスを中心としたいつものメンバーに迎えられている。どうせ、「あのエルフに負けた~」なんて話をして、周りに慰めてもらっているのだろう。

 何よ、馬鹿馬鹿しい。そう思って立ち去ろうとした。

 ……その時だった。


「……」


 彼は集まってきた友人らを素通りして……使い魔を連れてさっさと立ち去ってしまった。普段の彼とは違う様子に、友人らも困惑しているようだ。

 私に負けたことがそんなに悔しかったのだろうか。トップを奪われたことがそんなに────。


「あの人…………泣いてる?」


 泣いている、というか。涙目を見開いて虚空を見つめ、酷くやつれた顔をしている。さっきまで人を襲っていたとは思えない表情だ。隣の使い魔もその様子をのぞき込んでいる。

 ……と、彼は私に気付いたようで、その顔でじっとこちらを見つめてきた。思わずたじろいでしまう。文句でも言いに来るのかと身構えた。

 しかし、彼はこちらに近寄ることもせず……ただ首をゆっくり横に振りながら、何かをボソボソ呟いている。


「何、言ってるんだろう……」

 その怪訝な様子に違和感を覚え、耳を傾けてみる。周りの雑音にかき消されそうだが、かろうじてその震え声を聴くことができた。


「……う、違う、違う……違うんだ、違う……」

 

***


 なんとかテストが終わった帰り道。寮に戻るため、閑散とした道を歩いていた。テストの結果は数日後に出るとのことで、少しだけ気を緩めることができる。

「はあ……」


 あのテストの後、ジオの見せてきた怪訝な行動が引っかかっていた。怖いというか、少し気がかりだ。

 ……けど、今は頭が回らない。疲労がどっと出てしまったようで足取りもおぼつかない。今日のところは部屋に帰って休みたい……。


「……わっ!」

「おっ……と」

 ドンッと、肩に大きな衝撃が走る。誰かにぶつかってしまったようだ。疲労からかバランスを崩してしまい、尻もちをついてしまった。今日は災難だ……。


「いててて……」

「失礼! お怪我はありませんか」


 全身にローブをまとった人……どうやら、男性だったようだ。凛として佇むその人が差し伸べた手を取って、ゆっくりと起き上がる。


「ごめんなさい! ちょっとよそ見してて……」

「いえ、こちらこそ。人探しに注力しすぎたばかりに、前を見ていませんでしたね」


 なんとか立ち上がって、相手の顔を見ようとした。

 ……しかしその顔はフードで覆われていて、ほとんど見えない。唯一、フードの隙間から色白な肌と、さらりとした金髪が伺えるけれど……。

 その情報の少なさが、どこか変わった雰囲気を醸し出していた。


「……不思議ですね。君からは……とても落ち着く香りがします。なぜでしょう」

「えっと……何?」


 ごめん、変わった雰囲気というか、本当に変な人なのかもしれない。匂いを褒められたことはただの一度もない。しかも初対面の相手となると尚更だ。


「ああ、困惑するのも無理はありませんね。何といえばいいか……」


 と、彼は変な空気を感じ取ったのか、申し訳なさそうに口を開いた。


「僕、視力が死んでいるんですよ。目が見えていません。……だからこうして、匂いで情報を感じ取っています」


 面白いでしょう? と笑って、彼はフードを深くかぶり直した。

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