第1話 成人の儀式
幼い頃、親に連れられて城下町に行ったことがある。その時近くで魔物が大量に発生して俺達を乗せた馬車が襲われた。
魔物は強くもう後には死が待つのみかと思ったその時、馬に乗って颯爽と魔物を斬り捨て一掃していった騎士が現れた。その姿を見て俺は必ずこんなみんなを守れる強い騎士になってやると誓った。
それから7年。
俺、レイジ・ジャルド、12歳。
生まれ故郷のナイフ村にて今日は成人の儀式を兼ねた感謝祭の準備をしていた。
この国での成人は12歳、つまり俺もこの儀式で正式に大人として認められることになるのだ。
とは言ってもこの村にいる限りは大人なんて関係はない、実際俺も10歳から村で大人達の手伝いを始めている。
重要なのは王国、そこの王族・貴族はもとより騎士団学校の入学条件である最低年齢がその12歳なのだ。村を出るのに両親や村長と話し合ってやりたいようにさせてもらえることは約束された。問題は騎士団の試験に合格して入学できるかが重要なわけだ。
騎士団自体は別に村出身の平民だからと言って試験を断るようなことはしないが前例が少なく好奇の目で見られることはあるだろう。
とは言えまずは儀式を受けなければいけないので手伝いを終わらせる。村の祭りだが今年は成人する人数が三人とこの村では多い方らしく村人たちも気合が入ってる。
「ようレイジ、いよいよこの日がやってきたな」
「なんだテオか」
俺に声をかけてきたのは黒髪の同い年の男、テオ・ユーゲントだ。
「なんだなんて言うなよ、俺もお前も同じ道を歩むんだからよ」
テオも同じく騎士団を志しているらしく、俺と同じように家族や村長とも話がついてる。同じ道とは言ってもこいつはおそらく俺よりも前を歩くだろう。昔からそうだったように……
「なんだよそんな顔して?」
「そうよレイジあなたも今日の儀式で大人の仲間入りになるんだから」
「お、ルナ。俺からしたらお前は逆に落ち着きすぎてる気もするがな」
ルナ・ティアー、長い金髪を揺らしながらこちらに近づいてくる。彼女も同い年、そしてどういうわけか彼女も王都に行くそうだ。
「まああなた達みたいに試験を受けるわけじゃないからね」
「そう言われたらますますなんで王都に行くかわかんねえな、そこで働くのか?」
どうもルナの王都行きに関しては彼女の両親の意思があるようでその辺をルナは、
「まあたぶんお父さんの決めたところで働くんだと思うよ」
と答える。彼女自身どうして王都に行かなければならないのかよくわからないようだ。
「まあ一緒に王都に行くんだし定期的に集まれるんじゃないかな?」
「だといいんだけどねぇ」
ルナのその言いようはどうにも気になったがあまり深く追及しても仕方ないのでその日は結局雑談をして解散した。
そしていよいよ儀式の日、村は神妙な雰囲気で僕達三人の儀式を行う。儀式と言っても王都のようにたいそうなものではなく、簡易的に手順を踏まえたものだ。三人分の儀式は特に問題なく終わりその後の村はお祭り騒ぎ、大人達の勧める酒を貰いながら夜を越した。
とある城にて、その城内は闇に包まれて光など届かない空間だが謁見の間には確かに4人の者がいた。玉座に座る王らしき者はこう言った。
「オル、ジグナチスナはどうだった?」
オルと呼ばれたものは答える。
「貴方様のおっしゃる通りあの世界は昔と同じでした」
「ゲートは?」
「こことをつないだ状態で維持するのは厳しいです。私の他に後一人なら同行して行き来できるかと」
「ではどちらが行く?」
そう言ってオルの近くにいた二人を見る。そのうちの一人が前に出る。
「国王様、僕がその役目を担い致します」
「良かろう。ではオルよ、ウォンを連れて行くがよい」
「「はっ」」
翌朝、ナイフ村の近くにあるタンセンの森に二人の男が突如として現れた。
「のらにぎぢ……?」
紺色のロープを身に纏った金髪赤目の男が相方にそう尋ねた。相方の白いロープ、黒髪で黒目の男は静かに頷く。そして指をさし金髪の男に訪れた変化を教える。
「!!」
金髪の男は何度も自分の手を見たり顔を触ったりする。
「オル?」
そして黒髪の男にどうなっているかを尋ねた。
「ここでは呪いが弱まるようだ。早速だがウォン、この森一帯を調べよう。私もここに来るのは初めてでね」
そう言って金髪の男ことウォンと黒髪の男オルは森の中を歩き始める。
暫くするとウォンは木になっていた赤い果実を1つもぎ取ってそれを齧った。
「やるのかウォン?」
その様子を見てオルは本を取り出してページをめくりだす。
「ふむ、この森にはかなりの魔物がいるがどれもあまり強くないな。奥に行けば本名達がいるようだがまだこの森に来たばかりだしやめておいた方がいいだろうね」
ウォンを見ればすでに果実は食し終えて後味を確かめるかのように口を動かしている。
ちょうどそこに運の悪いことに一匹のウサギが飛び出してきた。
「おや?ちょうどいいウォン、これにしよう」
ウォンは頷いて右手に先ほど食べた果実と同じような形をした、されど青い色の果実を生成してウサギに差し出した。
ウサギは何故か警戒することなくその果実を食べた。
「ひーとふるーつ」
ウォンのその一言によって次の瞬間ウサギは倒れ、そのウサギが爆発した。
「んー、あれ?今なんかあったか?」
昨日の夜の祭りの後、なんとか自分の家に帰って寝たはずだが……。
見渡せば見知った家具に慣れ親しんだ毛布と枕。どうも昨日の記憶は確かなようで安心した。
しかしさっきなんか大きな音がしたと思ったが気のせいだったのだろうか?まあ早起きは健康的な証だしとにかく俺は着替えて食卓に向かう。
昨日の騒ぎで疲れて起きていないと思っていた母さんがすでに朝飯の準備をしていた。
「おはようレイジ。今日で暫くあなたにご飯を作ってあげれないなんてさみしくなるわね」
そうだ、今日はあの二人と一緒に王都に行くのだ。騎士団の入隊試験はまだ二週間も先だが早く王都に行ってそこの生活に慣れた方がいいと村長に言われたのだ。
「母さん、今日まで俺なんかのためにありがとう」
気恥ずかしいものだがこれで暫くは会えないのだ、そう思って感謝の気持ちを伝えた。
「なんかなんて言わないで、これはあなたの決めた道よ。常に勝つ気で突撃しなさい」
母さんはよく微妙に言葉選びが違ったりする。だがその言葉は彼女の口からではなく心から出てくるのだと最近思うようになったのだ。
父さんも起きて家族三人の朝食を終えて、家を出る。
その日、誰にとっても運命の日だったと思えるほどの事件が起きた。
とりあえず主人公に突撃させる予定です。
評価よろしくお願いします。