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リディアが女王に就き、ディオンは摂政に任命された。

政治に関してまるで知識がないリディアは、一から勉強の毎日で、ディオンはリディアに代わり忙しく働いている。最近は多忙なディオンと顔を合わせるのは寝る時だけで、リディアは寂しく感じている。


リディアは午前の勉強を終え、暫し休息する為中庭で座っている。一息吐いて、空を見上げた。


未だに自分が女王だなんて信じられない。実感がまるでなかった。三ヶ月経つが、ようやく落ち着きつつある。就任式が終わり、ディオンが摂政になり、臣下の大きな入れ替えがあった。ディオンは早速手腕を奮っているらしいが、リディアには良く分からない。

女王は自分だが、実質ディオンが国王と変わらない。


「情けないな」


今リディアに出来る事は、一日でも早く政治などの国に関する事柄を会得するしかない。だが、元々頭が弱い自分では正直いつになる事やら……。ここの所、ため息ばかりだ。


「……」


あれからクロディルドとセドリックは別々の牢に入れられた。だが、クロディルドは牢に入り半月経った頃自ら命を絶ってしまった。舌を噛み切り死んでいたそうだ。元々処刑される予定だったので、遅かれ早かれと言った所だろう。

息子のセドリックはまだ生きてはいるが、衰弱しきっており話すのもままならないらしい。彼は処刑はされないが、このままでは……。


「リディア陛下」


リディアが呼ばれて振り返ると、マリウスが立っていた。


「マリウス様、その様な呼び方はやめて下さいと何度も申しておりますのに……」


「ははっ。そんなに拗ねないでよ。可愛いね、リディア嬢は」


「もう……揶揄わないで下さい」


マリウスはリディアの隣に腰を下ろした。


「どう勉強は。大変かい?」


「すご~~~く‼︎」


「ははっ。だよねー。でも随分頑張ってる見たいで偉いよ」


そう言うと頭を優しく撫でてくれた。


「あぁ、そうだ。はい」


ハンカチを取り出すと、リディアの前で広げて見せる。中からはリディアの好物であるアプリコットが出てくる。


「わぁ、ありがとうございます!」


嬉々として好物に飛び付いてしまう自分を子供様だと思いながらも、手と口は動く。


口をもごもごさせながら、マリウスを見遣る。彼の地位は今は公爵となっている。ディオンが采配したのでリディアには何処かは分からないが、遠方に土地と屋敷を与えられたそうだ。

だが彼はそこには余り帰らず、何時もこうしてリディアに会いに来てくれていた。心細いのもあり、凄く嬉しかった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ディオンってさ、本当何でも出来るんだね~。ズルい」


「何がどうしたらズルいのか俺には分からない」


レフはディオンの少し後ろをついて来る。


「レフなりの褒め言葉だろう」


そう言ってレフの隣で笑っているのはルベルトだ。


心底驚いた。まさか生きているとは思わなかった。黒騎士団は数は少し減ってしまったが、大半は生き残り地下牢に打ち込まれていた。


リディアが女王となり、リディアの意向で以前と変わらず白騎士団と黒騎士団は存続する事になったのだ。


「私が悪い事をしたら、裁く人が必要でしょう」


そう言って悪戯っぽく笑ったリディアは、本当に愛らしかった。


「それより、妹ちゃんとは上手くいってるの?」


「レフ、陛下と呼べと言っているだろうが」


呆れながらルベルトが諌めるが、レフはどこ吹く風だ。


「あ、噂をすれば!あれ、隣にいるのはマリウス殿下じゃなくて、マリウス・ブロン公爵だね」


そこはわざわざ言い直すのか……ディオンも呆れる。今更だが、彼の基準が全く持って不明だ。因みにブロンとは、母であったクロディルドの生家の家名だ。あの様な事になったにも関わらず彼は平然とその名を使っている。躊躇いなどは皆無に見えた。やはり、変わっている……。


ディオンは、視線をリディアへ移した。隣にはマリウスがまるで寄り添う様に座り、仲睦まじく談笑をしている。


「あ、頭撫でてる~」


段々と苛々してくる。


「そう言えばさ、女王陛下がブロン公爵を第二夫にするんじゃないかって社交界では専らの噂らしいね~。どう見ても仲良いもんね、あの二人」


「……」


ディオンは奥歯を音が鳴る程噛み締めた。確かに最近そんな噂を耳にした気がする。


「お、おい‼︎レフ、お前はどうしてそう余計な事ばかり……って、ディオン⁉︎お、おい‼︎」


ディオンは踵を返すと足早にその場を後にした。これ以上あの二人を見ていたくない。不快だ。腹が立って仕方がない。


リディアの夫は自分だ。リディアは自分だけを愛してくれている。彼女と自分はただの夫婦ではない。元々義兄妹で家族だったのだ。誰よりも強い絆で結ばれていると、自負していた。

だが、最近になり自信がなくなってしまった。


彼女は女王だ。王となれば伴侶を複数持つ事は当たり前であり、認められている。そんな事は重々承知だ。故にディオンに止める権利も資格もない。今後リディアがマリウスや他の男を第二、第三の夫に選ぶ事も十分にあり得る。


リディアは男を知ってから益々美しく魅力的になった。これから先彼女の地位や権力だけでなく、女としての魅力も含め彼女に近付いてくる輩は少なくないだろう。自分の預かり知らぬ場所で他の男に身体を開く様な事があったらと考えただけで……嫉妬でどうにかなりそうだ。だからと言って、堂々とされるのも嫌だ。


「くそッ……苛つくっ」


独り言つ。ディオンはフラつく足取りで仕事に戻って行った。


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