婚約破棄を言い渡された日に婚約を申込まれました
「リリエッタ お前との婚約を破棄する
国王も了承済みだ」
卒業パーティで第一王子であるライオネルから婚約破棄を言い渡された。
前々からライオネルが男爵家のティナに入れ込んでいたのは知っていた。
だが、まさか婚約破棄されるとは思ってなかった。
優しくされたのは最初のうちだけで、傲慢な態度があらわになってきたので、好きにはなれなかった。
だから、あまりショックではない。
「分かりました。
国王陛下も了承しているのであれば私の言う事は何もありません。」
私は居たたまれないので、さっさとパーティ会場から抜け出した。
扉から出て少し歩くと後ろから声を掛けてくる人がいた。
見た事のない青年だった。
が、どこかでみたような品のある男性だ。
「あ〜 良かったらお茶でもどうかな?」
「貴方、先程パーティ会場にいらしたんですよね?
見ていたとおりで、私は楽しくお茶を飲む気にならないので、これで失礼します。」
「あ、いや、話だけでも…愚痴は聞くし
泣いてもいいし、無言でもいい」
良いお茶がある
薔薇園もある
色々な事を言っては引き留めようと頑張るので
『じゃあお茶だけなら…』とこたえてしまった。
スクールから王宮に繋がる道があり、門の前までくると自動的に開いた。
「こちらは王家の方達しか通れないのですよね?」
「私は王家の親族だから大丈夫だ。
リリエッタ嬢も大丈夫だからおいで」
王家…金髪碧眼 見た事あるような顔なのは王族だからだったのね。
しばらく歩くとガゼボがあり、席に案内された。
二人で座ると、どこからともなくお茶とお菓子を持ってメイドが現れた。
まるで来るのが分かっているかのようだ。
「さっきは酷かったね
親族として申し訳ない。」
「いえ、もう良いのです。
未練はありません。ただ…」
「ただ?」
「家に申し訳なくて、婚約破棄されたら
今後まともなお話はこないでしょう?」
男性は何か考えているようだったが
突拍子もない事を言ってきた。
「会ったばかりだが、私と婚約しては貰えないだろうか?リリエッタ嬢を初めて見た時から、良いなと思っていたんだ」
「私は貴方の名前も知らないのよ
それに、さっきライオネル殿下に婚約破棄された私を国王陛下が許すはずないわ」
「じゃぁ、国王が許可を出したらいいんだね?」
「ええ、それはそうだけど」
「私は"リック"と呼んでくれ
あと、実は私は魔法で少し若くしている。
本来は、もう少し…年が上だがよいかな?」
年が上⁉︎だから見た事がないのかしら?
わざわざゴマかす必要が分からないのだけれど
どうせこの先、まともな縁談はこなさそうだし
国王陛下が許可するとも思えないので
軽い気持ちで了承した。
返事を聞くと、この後色々忙しいから一緒には行けないが馬車を用意すると言われ、
いつもライオネル王子が使っているものより豪華な作りになっている馬車で家に着いた。
家に帰ると両親には婚約破棄の件について説明した。
両親は責める事はせず、優しく抱きしめてくれた。
優しい両親で良かったと思う。
それから1週間が経った頃、1通の封筒が届いた。
王家の紋章で封蝋されている書面を父が見ると
慌てて私を執務室に呼び出した。
「リリエッタ、お前最近誰かと婚約の話をしたか?」
この間の件だと分かるも、国王が許可しないと思い両親には話してなかった。
「はい。婚約破棄したばかりで許可されないだろうと思ってお話ししませんでした。
申し訳ございません。」
「許可?自分の事に許可はおかしいだろう」
「おっしゃる意味が分かりませんが?」
「お前はだれと婚約したと思っているのだ?」
「"リック"と言う男性です。」
「リック⁉︎」
お父様は頭を掻きながら上空を見上げて言った。
「間違いではないな…
リクセン国王陛下だ」
国王陛下は王妃様を10年前に亡くしており、一人でライオネル殿下を育ててきた。
確かお年は39歳とまだ若い。
私はめでたく国王陛下と結婚し王妃様となった。
翌年には男児も生まれた。
ライオネル殿下は…というと、王都から離れた辺境の地を治めるよう命じられ次期国王からは外されたそうだ。
結婚までの時間が短いような…
軽く読んで頂ければと思います。