sideミリア
大変です.....
私、前世を思い出してしまったようです。
記憶を思い出す前の【私】、ミリア・シルヴェンター侯爵令嬢はわがまま!理不尽!癇癪!が揃った典型的な悪役令嬢の幼少期のようです。
"悪役令嬢"
そう!それなのです!
前世の私の家族構成についてなどは一切思い出せませんが、乙女ゲームに沼りにぬまったヘヴィーなオタクだったようですね。
その中にあった「カラーランド~君を離さない~」という、なんとも言えない題名の乙女ゲームの世界のようなのです。
しかも、ミリアはメインヒーロールートの悪役令嬢。
ライバル令嬢ではなく、悪役令嬢!
ヒロインに裏で嫌がらせ、悪事の限りをつくす悪役令嬢。
大事なことなので何回も言います。私は悪役令嬢!
失礼。少し取り乱しました。
ですが、前世の記憶が戻ったとはいえ、ミリアの記憶の方が強いのでわがままを抑えるつもりはありませんわ!!オホホホホホ!
エンディングはどうだったでしょうか....
思い出していく内に自分の顔が青ざめるのがわかります。
ミリアの末路は良くて追放、修道院で生涯を終える、最悪の場合は、不審死、暗殺(メインヒーローの差し金).....メインヒーローはヤンデレでした。
前言撤回。わがままは言いません。とにかく死にたくないです。まだ乙女ゲームのシナリオが始まるまで6年あります。
9歳のミリア・シルヴェンターにも挽回の機会があるはず!とりあえず、護身術を学びたいですね........
6年後
皆さん、15歳になりました、ミリア・シルヴェンターです。
この6年、シナリオ通りに進んでる気がしてなりません。メインヒーロー、ヴィスタン・ゴールディア王太子殿下の婚約者に決まり、王妃教育を施されました。
なぜかヴィスタン様が週に一度は我が家に来て、私にくっついて、ニコニコと上機嫌に帰っていきます。
シナリオでは私とは事務的な手紙だけのやり取りだったはずですが.....と、思いながらも私は楽しそうに話しかけてくれるヴィスタン様に惹かれ始めていました。
しかし、乙女ゲームが終わる2年後までは気が抜けません。
この国には学園があり、貴族には15歳から18歳の間通う義務があります。
「カラーランド」の舞台はここです。
16歳で男爵の庶子として引き取られたヒロインは、貴族教育が間に合わず、数ヶ月遅れて特例で編入する。自分以上に注目されているヒロインのことが気に入らないミリアは、ヒロインをいじめ、それがきっかけでヒロインと攻略対象たちが運命的な出会いをしていく。そして、それぞれのルートに入り、障害を乗り越えていくという、定番の乙女ゲームでした。
私は強制力が怖く、今、私が出来得る限りの術を身につけました。
今では並の男に勝てる武を身につけ、完璧な淑女の面をかぶれる、そして、万が一強制力で追放された後、1人でもいきていけるような生活力を手に入れました。
ある時は、そもそもの前提を覆そうと、一度ヴィスタン様に婚約解消を求めたこともありました。
結果から言うと、ヴィスタン様に泣かれてしまいました。それからは、禁句ということになっています。
ですが、これ以上ヴィスタン様を好きになってしまってはゲームのミリアのようになってしまうかもしれない、そう思い最近はヴィスタン様を直視できず、避けてしまうことが多くなっています。
ぎこちなくなってしまい、ヴィスタン様に怪しまれましたが、今のところは大丈夫です。
学園に入学して数ヶ月、やっと慣れてきた頃、ヒロインが編入してきました。
私はヒロインをいじめるつもりはないので、近づきません。
今のところ、ヴィスタン様とヒロインの接触はなさそうです。
そういえば、入学してから良くヴィスタン様に会う気がするのです。学年が違ううえに、階も違うのになぜでしょうか。そして、ご挨拶すると、「不自由はないか。」や「何か手伝うことはないか」など、声をかけてくださいます。
初めは、ヒロインに会いに行こうとしているのかと思いましたが、私だけに声をかけてくださるのを見て、純粋に私を心配してわざわざいらしてくれているのが分かりました。
学園で、友人もたくさんでき、シナリオとは違うミリアの交友関係になり、安心して学園生活を楽しんでいました。
そんな時、ヒロインであるヒロルガルド・ブロンズ男爵令嬢が話しかけてきたのです。校舎裏に呼び出されたので、友人に一声かけ、向かいます。
そこには、可愛い顔を醜悪に歪めたヒロルガルドが立っていました。
「ねぇ!あなた転生者なんでしょ!じゃなきゃおかしいじゃない!ストーリー通りに進めなさいよ!」
.....前世の乙女ゲームの世界そのままだと思い込んでいる夢見がちな少女、これが私のヒロインに対する第一印象でした。
私は、ため息をつき
「シナリオ通りに進めるつもりはありません。それに、仮にここが乙女ゲームであったとしてもここは現実です。みんな生きているのです!!」
そう、私も初めはここを乙女ゲームの世界だと思って、諦めていました。最後はどうせ断罪されるだろうと。ヴィスタン様との接し方も、初めは近づきたくなかったので、冷たくしていたけれど、根気強く、優しく話しかけてくれたことによって私は思ったのです。
今のヴィスタン様は乙女ゲームのヴィスタン様ではない。常に冷静沈着じゃなく、時には泣くし、怒る、そして何より、優しい、感情豊かな素敵な人だということに気づいたから。
今は強制力を恐れてヴィスタン様を避けてしまっていますが、現実だということは理解しています。
ヒロルガルドさんにも気づいて欲しい。そう願い、説得を試みます。
「ふんっ!何よ!あんたがその気ならこっちだって考えがあるわ!!」
しかし、私の説得もむなしく、そう言って去っていってしまいました。
その日から、ヒロルガルドさんは私の近くで「っきゃ!」と言ってこけたり、ビリビリにされた教科書を手に取り、チラチラとこちらを見て泣きだす。私が何もしていないのを友人をはじめ、クラスメイト全員が分かっているので、ヒロルガルドさんを白けた目で見る人が大半。周りが見えていないのか、そんな空気になっているのもきづかず、どんどん自作自演のいじめがエスカレートする。
そしてある日、私が友人と階段の近くにいるとき、急に隣で「きゃ!!」と言って階段に向かって倒れた。
私は、持ち前の反射神経でヒロルガルドさんを助ける。すると何を思ったのか、
「なんでうまくいかないの!あんたのせいよ!!」
人がたくさんいるのにもかかわらず猫が剥がれ、私を突き飛ばした。
浮遊感が私を襲う。バランスを立て直すこともできず、落ちていく。
覚悟を決めて目を閉じる....
(ヴィー......助けて)
「ミリー!!」
覚悟していた衝撃は来ず、ふわりとあの方の香りがした。恐る恐る目を開けるとそこには、私が助けを求めていた人がいた。
「ヴィー」
思わず昔の呼び方で呼んでしまう。
するとヴィスタン様は、私を見て安心させるようにふわりと笑うと、前を向いて表情を消し、
「ヒロルガルド・ブロンズ。」
名前を覚えてもらえていたことが嬉しいのか、告白されるとでも思ったのか、「はいっ!」という元気な声が聞こえた。
「貴様には相応の罰を受けてもらう。覚悟しておけ。」
冷たくそう言うと、ヴィスタン様は地面に座り込み絶望しているヒロルガルドを一瞥もせず、私を横抱きにしたまま去っていく。
「あ、あの!ヴィスタン様!おろしてください!」
「もうヴィーとは呼んでくれないのかい?」
先程凄んでいたとは思えないほど甘い声で私に囁く。
「っ!....ヴィー」
「ふふっ、なんだい、私のお姫様。」
もう乙女ゲームに振り回されないでいい。
これからは私のシナリオという道筋がない新しい未来が待っていると思うと、嬉しくなる。
「大好き!」
私は何の迷いもなく自分の気持ちを言うことができた。嬉しくなってふわりと笑う。
「っっ!俺もだよ。愛しのミリー。」
そう言ってヴィーは私の額にキスを落とした。
ヒロルガルドさんはその後、ブロンズ男爵に勘当されたらしいです。
そして公衆の面前で侯爵令嬢である私を突き落とそうとしたので、罪を逃れられるはずもなく、その上、ゔぃ、ヴぃ........失礼。
ヴィーを怒らせたので、誰も味方する人はおらず、
侯爵令嬢殺人未遂で修道院送りの罰が妥当のところを、ヴィーが無理やり次期王太子妃殺人未遂にし、生涯幽閉の罰になったそうです。
後味は悪いですが、現実を見て欲しいと私は思います。
私ですか?
私はヴィーの卒業と同時に結婚することになりました。元々の予定は私が卒業したらだったんですけどね。
なんだかあの一件からあってから過保護になってしまって、今、私は王宮のヴィーの私室の隣に一足早く部屋を賜り、一緒に過ごしています。
王妃になるので平和に生きることはできないかもしれません。でも、ヴィーと生きることができるのなら私は平和を捨ててでもヴィーの手を取りましょう。
たまにゲーム通りのヤンデレヴィーが登場したりはしますが、私はとっっっってもしあわせです!
FIN.
後日、ヴィスタン視点を書く予定です。




