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糸魔術師の日常  作者: 3号
20/51

執事の想い

短めです。区切りついたので投稿しました

アンダーウッド中心部。貴族の屋敷や行政機関など多くの華美な建物が立つ中、一際大きく力を誇示する屋敷がある。

地上四階建て、横幅は他の貴族屋敷の数倍では効かず、正門は馬車が四台はすれ違える程。

出入りする人も多く、門兵達も検問に警護にと休む間も無く走り回っている。

屋敷の主人はエルフィン家。中枢行政機関も兼ねるここはアンダーウッドの王城といってもいい。

貴族や商人、兵士が行き交うそんな生家の見慣れた風景を馬車の車窓越しに見つめ、ユーリはつまらなそうに伸びをした。


「とうとう帰ってきちゃったのね、つまらない実家に」

「今朝ぶりでございます、お嬢様」


まるで長年旅に出ていたようなセリフを言う霊場に執事は苦笑い。


「楽しめましたか、外出は」

「それはもう! 刺激的でしたわ!! 屋台の串焼きがあんな粗野で美味しいものだって知らなかったですし、衣服の材料ってこんなに一抱えもある繭なんですのよ!! しかもこう、パタンって小さく畳めるし軽いし。それに私、井戸端会議も直に見れたのです!!」


身ぶりを交えて全身で楽しかったとアピールするユーリ。そんな主人の姿にシューインの頬も緩む。

ユーリはとても優秀だった。武術も魔術も学問も。大抵のことは躓きなくこなし、その成長の速さに家庭教師達は鼻高々と彼女のことを絶賛した。

ユーリはとても優秀だった。父の執務室で本を読むことの多かったユーリは、執務を行う父を興味深く見つめており、やがて質問するようになり、気がつけば少しずつだが執務を手伝えるようになっていた。今となってはエルフィン伯爵が任せようと思えば執務の一部を委譲出来るまでになっている。

容姿は端麗で目鼻立よく、艶やかな母譲りの黒髪は流れる絹糸のよう。その佇まいは令嬢としては凛としすぎている部分もあるが、揺るがない美しさと滲み出る自信がドレスのように彼女の魅力を引き立て飾り立てる。

いかんせん高い行動力や武術を好む性質から「じゃじゃ馬姫」などと揶揄されることもあるが、才色兼備とはユーリのことと言っても過言ではない。もし王の子が王女ではなく王子であったなら、確実に妃候補に入っていただろう。

しかし、ユーリを間近で、それこそ生まれた時から第二の父のように見守ってきたシューインには、そんな彼女がいつも寂しそうに見えて仕方がなかった。

家族を除けば大人ばかりで同年代と触れ合う機会のない環境。唯一の友と言える王女は立場上そんなに会えるわけではなく、年に数回お話しする程度。

伯爵家で働く貴族家にも同年代の子はいるが、どうしても家の利権が絡み無邪気に遊べるという訳ではない。特に他家の嫡男などは親しくすると婚約などにも発展しかねず、昔から敏かったユーリは積極的に貴族男子との交友を避けてきた。中には話程度はする相手もいるが。

そんな中で利権などを気にせず、ユーリの活発さにもついてこれる相手というのは、彼女にとって新鮮で楽しいものだったのだろう。


(旦那様も昔は旅人として雇った傭兵と遊び歩いておられましたしね。やはり親子ですか)


その傭兵の1人と結婚までした主人を思い出し、シューインは苦笑い。彼自身、若い頃に主人に振り回された事を思い出して口元が緩んでしまう。


「シューイン、何を笑ってますの?」

「いやはや、お嬢様が楽しそうに話してくださるので、私も嬉しいのですよ」

「ならもっと話しますわね!!」


パァと、まるで大輪の花が咲いたかのような笑顔で話すユーリに相槌を打ちながら、最近自分も親しくしている仕立て屋の少年を思い出すシューイン。まるで若い頃の出来事が蘇ってきたかのよう。


(このまま旦那様と同じ道を行くのでしょうかね……? まあ、そうなれば奥様が喜んで手助けするでしょう)


もしそうならなかったとしても、できればこの寂しがりやな主人と末永く遊んであげて欲しい。そう願う執事だった。


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