↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/62

手紙

 エマ・トリューゼから手紙が来たのは、それから二日後の朝だった。

 宛先は、アンジェリカ。一度お会いしませんか、とのことだった。



「やはり、わたしに接触して来ましたか」



 手紙の内容を確認して、アンジェリカは溜め息をつく。

 接触してくるだろうとは思っていたが、いざとなると気が重くなっていく。



「それで、日程は?」


「そちらの都合が良い日に、だそうです」



 アナが目を瞠る。



「初めて手紙が来たと思えば、初めてこっちの都合を考えている、とは」


「さすがに、立場が悪いと分かっているのでしょうね」


「どうしますぅ? トリューゼ令嬢とお会いしますかぁ?」



 アンジェリカは嘆息した。



「面倒くさいですが、早く片付けないといけませんね」


「では、お会いになる、と」


「手紙の用意をしてきますねぇ」


「いえ、その必要はありません」



 アンジェリカの言葉に、二人は怪訝そうに首を傾げた。



「ですが、日程の確認をしないと」


「彼女がどこに泊まっているか、分かってはいるのでしょう?」



 悪戯っぽい笑みを刷るアンジェリカを見て、二人は唖然とする。

 どうやら、アンジェリカが何を考えているか分かったらしい。



「アンジェリカ様、まさか……今すぐ向かわれるのですか?」



 アナから絞り出された言葉に、アンジェリカは頷く。



「とっとと済ませたいですから」


「いや、その気持ちはよく分かりますが、しかし」 


「つまりぃ、やり返そうってことですかぁ? あたし、賛成です!」


「ベルベット!」



 アナが叱咤する。だが、ベルベットは怯まず、それどころかぶぅぶぅと反論してきた。



「いいじゃないですかぁ。今まで突撃訪問されてばっかりでしたしぃ。たまには突撃訪問される身にもなれっていう話ですよぉ」


「だからといって、こちらもそうしたら、示しがつかないでしょう?」


「一回だけくらいなら、可愛いものですよぉ。あっちは十回はしましたしぃ」


「しかし」


「アナ、なにもやり返しだけじゃ目的ではないのですよ?」



 アナはアンジェリカを見る。



「と、いうと?」


「もし、あちらが何かするつもりであれば、準備は必要でしょう? 何日前からこちらにいらっしゃるけれど、準備はこっちがあちらに行く時間が分かってしまえば、あちらの準備が完璧になると思うんです」


「突然やってきたら、準備が疎かになって、なにかをするつもりであれば、阻むことができる、と?」



 アンジェリカは笑みを刷りながら、頷いた。



「クルト曰く、小細工する人物ではないようですが、令嬢自身がどうであれ、周りの人は令嬢の意思を尊重する、という証拠にはなりません。ましてや、わたしは突然現れた恋敵。恋は人を変えるとはいいますし、念には念を、ということで」



 アナはじっとアンジェリカを見つめる。真意を探るような視線だったが、アンジェリカは少し首を傾げながら、微笑んだ。


 しばらくして、アナは観念した、というばかりに盛大な溜め息を吐いた。



「分かりました……出掛ける準備をしましょう」


「そうこなくちゃ! では、クルト様に知らせますねぇ」



 ベルベットがタタタッと駆けて、部屋を出て行く。その足取りは軽やかで、小さな鼻歌が聞こえたような気がした。



「ベルベットは、やる気満々ですね」


「血の気が多いし、泥沼が好きなんですよ」



 頭が痛い、と言わんばかりにアナがこめかみを押さえる。

 泥沼、とは再放送のほうではない昼間のドラマで見たような、あの展開のほうのことだろうか、とアンジェリカは考える。


 不倫、三角関係、愛憎劇など、そういった言葉を知ったのは、主にドラマからだった。ベルベットが望んでいるのは、三角関係のほうだろうか。



「では、服を決めましょう」


「はい。お願いします」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。