四話 『出発』
「王国騎士! それも副団長って・・・」
王国騎士団3期副団長だ!!?
それってもしかして王国に使える優秀な騎士たちの事か? その副団長様がこんなところにいるなんて。何事だ?
「なぜ? こんなところに副団長様が?」
騎士団の副団長と知ったからか態度が変わったのが嫌らしくカリスは嫌な顔をしながら。
「やめてくれませんか? その言い方あまりそう言うの好きじゃないんです、普通にカリスって呼んでください」
「ああ、悪かった。そう呼ばさせてもらうよカリス」
「はい、そうしてください」
「じゃあ、さっきの続き何だけど、どうしてす副団長のカリスがスライムを狩りに?」
カリスは地面に刺していた大剣を持ち上げ肩に乗せると深刻そうな表情で答えた。
「最近・・・なにかとスライムの増殖が凄くて。国からの調査を司令されててですね」
スライムの増殖か・・・。
この街・・・いやこの世界に何らかの異変が起きていると考えていいのか?
「そうだったんだ、じゃあカリスちゃんはその為に来たんだね」
「そう・・・ね」
「じゃあ、俺達も手伝えることがあるなら手伝うよ」
「!?・・・いいんですか?」
「構わないよ、困ったらなんちゃらって言うでしょ?」
2人に同意は求めていないがそんな事を言ってしまう。俺も俺だ。どうしたというのだ? 異世界に来て気でも狂ったのかな?他の人の役に立ちたいだなんて思うなんて・・・。
「私達の意見は聞かないのね、別に構わないけど」
「悪いな、まなねぇ・・・。」
「変わろうとしてるんだから・・・」
まなねぇの顔は一見悲しいんでいる表情に見えたけど段々笑顔になってくる所を見ると少し安心した。
「で? 俺はどうすればいい?」
「そうですねー・・・。取り合いず王国に行きましょう、そこで色々説明します」
「!!?」
王国に行けるのか!?
王国は実力やそれなりの権力を持った人しか入れないらしい。
それが俺なんかが入っていいのか?それと姉妹達。なんの功績も挙げていない所かスライムから逃げようとしたんだぞ?
「さあ、行きましょう王国に」
「え・・・、俺達も王国に行けるのか?」
「当たり前じゃないですか? 私を助けてくれたんですよ? 」
「だって・・・王国って・・・」
「なにか間違えて覚えていませんか? 王国というのは優しい心を持った人やいい人しかいません。別に入れないなんてことは無いですよ?」
あ、そうなんだ。
◇
一旦ギルドに戻りクエスト報告した俺達は武器屋に立ち寄っていた。カリスも一緒に。
王国行きの馬車はまだ出ていないらしく、あと1日だけこの街滞在出来る。
ギルドで報酬金を確保し武器を購入するという話になりカリスのススメでこの武器屋へと来ていた。
「初めて見る顔だなぁ! おめーさんらここら辺ものじゃねーだろ?」
「そうですね、それなりの遠い国から・・・」
「そうか、遥々とこんな街にな」
うーん、ちょっと騙している気もするけど真実だからな。でもこの周辺の海の真ん中辺りに転生させられたんだっけか・・・よく分からなくなってきた。
「それよか、お前さんらは武器が欲しいんだろ? 今なら安くしておくぜ?」
「それはありがたい、ぜひ買わせてください」
なんて言ったて金は報酬金の5000だった。本来は2000のはずだったのだが目的より多くのスライムを倒したという事で報酬をそれなりにもらったという事だ。
因みにこれは3人で5000ではなく、一人一人に5000が配布された。まなねぇは倒していないのにな・・・。そんな事はいいか。
「ねぇ、ねぇおじさん! この弓を強化するとかは出来ないの?」
そう言って取り出し木のおんぼろの弓。
「あー・・・まぁ出来なくはねぇだけどよ? なんでその弓なんだ? 見たところそれはあまり強い弓とは言えねぇぞ? 買った方がいいんじゃねぇか?」
そう言えばその弓俺が【クリエイト】で作った1号弓だっけか。
捨てていいって言ったのにな。
「これは、月兄が作った弓だから・・・手離したくないの! 出来れるならこれを強くしてよ!」
うっ・・・。やばい心を持っていかれそうだ。
可愛すぎる・・・。やめよう、まなねぇがまた言いかねないからな。
「それでいいのかぁ?」
「うんっ! これがいいの!」
武器屋のおじさんは「しゃーね、嬢ちゃがそこまで言うなら」と弓を受け取る。
俺はと言うと嬉しすぎて涙が出そうです。
「じゃあ、明日の朝には完成させるから取りに来な」
「わっかりましたー!」
クレハの弓は取り合いず解決だな。
んで次に・・・。
「私はロッドが欲しいのだけれど」
「ほお、姉ちゃんは魔法使いかなんかか・・・」
魔法使いと言うよりかは武道家の方が正しいんじゃないの? おっと、笑ってはいけない。
「使えるなら何でもいいわ」
「売る側としてもそういう訳にも行かねーんだよ、こう、希望とかねぇのか?」
まなねぇは少し考えると腕をポンと叩き。
「じゃあ魔法を放ったらクレーターができる位の威力を持つロッドを頂戴」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺と武器屋のおっさんは少しフリーズしてしまった。どうやったってそれはロッドだけの力じゃ無理だし、そんなものない。
それにそれがもし万が一売ってたとしても今の金額では絶対に買えない。
全く頭がいいんだか、馬鹿なんだかはっきりしてくれないか。と言いたかったがぶん殴られそうだったのでやめておいた。
「なに? その顔は? 要望を言えって言って用意出来ないの?」
やめて、やめてあげてもうおっさんの心は立ち直れないほどに折られているから。
「わ、分かった、取り合いず火力があればいいんだろそれならいいのがある・・・」
頭を抑えながらおっさんは奥の方からホコリ被ったロッドを持ってきた。
いくら汚くてもロッドの先にある魔岩石は綺麗なのだな。
「これは、《サラマンダー》の魔岩石が使われている。これをお前さんにやるよ」
まなねぇはそれを受け取るなりまじまじと見つめる。《サラマンダー》は中級モンスターであり今の俺たちでは到底適わない相手てまある。
「気前がいいんだね」
「ああ、金はいらない、だから常識を覚えてくれ」
「はぁぁ?」
良かったね、まなねぇ。
常識を覚えるだけでお金を払わずいい武器を手に入れるなんて。
「ま、別にただでくれるって言うならいいけど」
「ああ、頼むぜ」
さて、流れ的には俺の番か。
「じゃあ最後か?兄ちゃん希望は何だ?」
「俺は刀がほしい」
「月兄、刀が欲しいの? 槍の職業なのに」
「…多分使えるだろう…」
「刀だぁ?聞いた事はあるけどよ、作った事はないぜ」
俺は槍使いの職業だが刀を要望した。
その理由は職業がくても異なる武器は扱えるかという点が知りたかった。
別に聞けばいいとが…刀が欲しいということもあり、刀を希望した。
だが、話によれば作れないらしい、ここでやりを作ってもらっても良いが【クリエイト】で作った槍を使い回し使えばいいと思う。低コストだし。
「あ、そうだ俺の友人の息子がやっている鍛冶屋に行ってみたらどうだ?」
「ここからは遠いんですか?」
「ここから、右に行って真っ直ぐ行って…遠くは無いな」
「じゃ、行ってきます」
「おうよ」
そこまでして刀欲しいか?と言われればて…欲しいよ!
異世界にきたら絶対使ってやると思ったし、刀って現世じゃ違法だかなんだかで捕まるからな。
「クレハ達は先に宿に戻っててくれ、俺一人で行ってくるよ」
「一人で大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。すぐとは言わないが早く帰ってくるよ」
「はい…」
カリスは心配してくれているのか声をかけてくれる。
強いだけではなく優しさもあるというわけだ。
◇
ここが、その鍛冶屋か?
うん、そうだよな、だって大きいもぃで『鍛冶屋』と書いてありるし絶対ここだわ。
入ってみるか。
石の扉を開いてみるとそこには一人の男の人が鉄の塊を打つ姿があった。
それにしても予想以上に室内は暑いな、汗がたれてくる。
「おっ!お客さんか…って!」
鉄の塊を打っていた人は打つのをやめこちらを見ると、そこには見覚えのある姿の人がいた。
「いいお兄さん!!」
「おう、まだ生きてたか!」
「はは…酷いですね」
ここの鍛冶屋を経営しているのはあの時色々親切に教えてくれたお兄さんだった。
まだ生きていたとは酷いけれど。
「これも何かの縁って奴かなッ!自己紹介するぜ、俺はリンタ=ギコタスっていう、お前さんは?」
「ツキヤだよろしく」
挨拶と自己紹介を軽くし本題を持ち込む。
「俺の武器を作って欲しいのだけれど」
「ああ、構わないけど【素材】とかは持ってんのか?」
「そう…だな」
一応素材は持っている、スライムの液体と木、位だ。
スライムの液体は倒した数分はあるがこれは何かに使えるのだろうか。
使えたとしてもそれはあまり武器には使われないんだろうな、使うとしたら多分【ポーション】とかだな。
「一応あるけど使えないってくれていい」
「ま、何も持っていないって事で良いんだな、で?なにを作ってほしいんだ?やっぱり槍か?」
「いや、刀を作ってほしい」
「刀か…」
何だろう、刀と聞くと皆そんな反応をしてくる、それもそうか職業槍の俺が刀を所望なのだから。
それに、リンタは刀を知っているんだな知識があるのだろうか?
「そうだよ」
「別にできないことはないだろう?」
「ああ、構わないさ。素材もこちらで用意してやるけど…本当に刀で良いのか?」
「お願いするよ」
刀は作ってもらう事になった。
後でできたら試しに切れるのか、使えるのかをスライムで試しに行くか。
「これも何かの縁だし、代はいらねーよ」
「いいの?」
「ああ、その代わり聞かしてくれよ槍職業のお前がどこまで使えるかを」
「そんな事でいいのなら、いくらでも聞かせるよ」
いい人だと知っていたがここまでいい人だとは思わなかったな。
こんににも助けてもらってるなんて、何か一つでも御礼ができればいいんだけれど。
あまりこの人のことよく知らないし。
「じゃ、刀は明日武器屋のおっさんの所に届けておくな」
「え?ここじゃないの?」
「明日は用があってな」
「そうなんだ」
リンタから直接貰えないのは残念だ。
「じゃ今度会うときに感想聞かせるね」
「…おう」
そのときのリンタの表情は鮮明に覚えていた、さっきまでの笑顔だった表情が一瞬にしてもう、会えないみたいな顔していたのだから。
最後の出会いと知っていたなら俺はここで普通に会話なんてしていなかった。
ここで…。
―――食い止めてた。
◇
翌朝
武器を受け取った俺達は、おじさんにお礼をいい、馬車へと乗って王国に向かっている途中だった。
リンタにもやはり最後にお礼をしたかったな。この刀凄くよく切れそうだし、とてもではないが俺の好みの刀だ。手に握った刀を見ながらそんな感想を述べる。
「ここから、王国までは一日ほどかかります。途中には中級もんすたー等もいますが大丈夫です、この馬車周辺にはモンスターを寄り付けない魔法をはってありますので」
「それは、安心できるな。ま、いざとなれば戦えば良いさ」
「月兄本気で言ってるそれ?」
「俺が嘘言った事あるか?」
「うん、なんども」
くっそ~。クレハには可愛い嘘しかついてないよ。
まぁ、じゃぁ、そんなわけでさて、出発しようか王国へ。