三話 『初陣』
ギルドで申請を終えた俺は2階にある、酒屋で体を休めている。姉妹達?少し待ってくれ俺だって疲れているんだ・・・。海に落とされ、色々手続きしたりして。少しは休ましてくれ。ギルドの中でも有名な飲み物【プチブール】を口に運ぶ。因みにこの飲み物お酒ではない、この世界では15歳でお酒は飲めるらしいが俺はこの現世を思い出させられる味が好きだ。だからと言って現世が好きとは言ってない。
「お客様、このギルドは初めてなのですか?」
「そうですね、最近この町についたばかりで・・・」
当然のごとく異世界から来たとは言えない。
今度質問されたら、遠くの国から来たと言っておけばいいか。
「あれっ? つっきー?」
聞き覚えのある声。
カウンター席で飲んでいた俺は声の方向を向いてみる。そこには案の定・・。
「やっぱりつっきーだ!! どこ言ってたの心配したんだからー!!」
と抱きついてくる妹、紅葉。この匂いに、この抱き心地つい笑顔になってしまう。
「周りから見たら犯罪はだね」
「真ねぇもいたんだ」
「喧嘩売ってるのかい? ツキヤ君~?」
「いえいえとんでもないっ・・・フッ・・・」
「可愛げのない弟めっ!」
こんなやり取りをするのもいつぶりか・・・?
これだけの時間会えなくてもこんなにも寂しいのだ。
「まぁ、とにかく座りなよ一緒に飲みながらこれからの事決めてこうぜ、マスターこの2人に同じいのを」
「かしこましました」
マスターは冷蔵庫からこの原料となっているものを作り始めた。
「さてさて、んでこれからどうするよ」
「私はせっかく異世界に来たんだし『旅』とかしたいな!」
旅ね・・・悪くないな。点々とこの世界を見回るのも悪くない。だが俺たちにそんな体力あるか?と言われたら・・・。
「それは、もう少し充実してからする事にするか」
「まぁ、いいけど・・・じゃあ真ねぇは! 何したい?」
顎に手を持ってきて考える仕草をする真ねぇ。どうせロクでないこと考えているんだろうな。
「取り合いずモンスターをぶっ殺したい」
「コラコラ。女の子がこんな汚い言葉使っちゃ行けません!」
「いいじゃん別にーツキヤだってよく使ってるじゃん!「しねゃあ!!!コラ!!!」とかさ1人で部屋で叫んでたりしたじゃん」
「やめて、お願いだからやめてぇぇ!」
顔を手で覆い隠しそんな黒歴史から目を背ける。あの時は仕方なかったんだよ。色々感情も高ぶってたし。
「そんなことよもだ! これからどうするかだって!」
話を元に戻す。
「取り合いずつっきーは職業何に就いたの?」
「あぁ・・・」
ステータスカードと言われるものを取り出す。自分のステータスが全部書いてある。いちいちスキルの【アビリタ】を使わなくてもいい便利なカードだ。
そのカードをクレハに見せながら言う。
「俺は【マジックシューペア】と言う職業についた、何でも槍を使いながらバックで魔法を使えるらしい職
業らしい。素晴らしくない?」
「ソウダネー」
なんでそんなに興味なさそうなの?普通に俺泣きそうなんだけど…。
じゃ二人はさぞかしとても良い職業に就いたんだろうなとな。
二人もステータスカードを取り出し俺に見せながら言った。
「私は、弓使い! アーチャーの職業につけたよ!」
いいとは思うな、実際クレハは遠距離攻撃が得意だからな。RPGとかでもそういう系統の職業ばかりついてたし適正ではないか?
「良かったな。で? まなねぇは?」
クレハのステータスカードからまなねぇのステータスカードに目を移す。
「えーっと・・・上級魔法使い?」
これが言わいる上級職というものなのだろうか? 上級職は覚えるスキルも多いし、威力は強大だと言っていたけっな。
それにしても本当に上級職についてるとは驚きというか少し羨ましいな。
「どやッ!」
「そんな、ドヤられてもな・・・。期待はしているよ・・・」
さてさて、これからどうするか・・・まじで。
「じゃあ、取り合いずクエストでも受けてみるか? 俺達は一応ギルドに登録してあるわけだしさ」
「殺せなるら良いかな」
「私も取り合いずこの世界のモンスターがどんなもんか知りたいな。じゃないと攻略の仕様がないし」
「了解だ。じゃあクエストボードに探しに行くか」
立ち上がると同時に2人はマスターから出されたプチブールを飲み干しそのまま行ってしまう。
結局ここの代金は俺が払う事に。
因みにお金はキルが1000β用意してくれた。
そう言うのに関してはありがたいな、転生先があの海だったのは許せないけど。
「ほら! 行くよつっきー!」
「お、おう」
◇
クエストボード前。
クエストボードは方向で強さで分かれている。東南北西に四つずつクエストボードがあり、今俺達がいるのは東、東は下級モンスターが多く貼られている、強くてもゴブリン程度のクエストが貼られて冒険者達はここがオススメだ。
次に南、南は主に中級モンスターが多い、しばらくは戦いに慣れてからじゃないとここには行けないだろう。
北は、上位モンスターのクエストボード。ここは行けないだろうな、いや行きたくない・・・。経験で1回くらいは行ってみてもいいけどその時はパーティーを募集して10人くらいで行かないとな、まぁ、そこまで俺のコミュ力があるとは思えないけど。
そして最後に西のクエストボード。
ここは、本当にやばい・・・。上位職業15人パーティーで行って帰ってくるのは8任あたりらしい。これは行けないだろ。
この話も全部はあの優しいお兄さんが教えてくれた。本当、いい人に出会えてよかったな。
さて、なんのクエストを受けよう、結構いいクエストばかりなんたよな。
ゴブリンの討伐にリザードの撃退・・・。
どうするか・・・。
「ツキヤこれはどうだ?」
まなねぇが持ってきたのはRPGの基本モンスター【スライム】3体の討伐だ。
「よし、それにしよう。スライムなら死ぬなんてことは無いしな」
「スライム♪」
どうやらクレハはやる気満々のようだ。
そうだな初陣だし感情が高ぶるのはクレハただけに限ったことじゃない、まなねぇも良くない妄想をしているのか顔が悪い方で笑っている。
クエスト用紙をギルドに通し、スライムがいる平原へと向かった。
◇
広がる平原には多くのスライムがスポーンされていた。
よし! 狩ろう。
「ねぇ?つっきー? 」
「ん? どうした?クレハ?」
「どうやってスライム倒すの?」
「・・・」
「・・・」
そうだった。武器買ってないや・・・。
武器を買ってないって事は敵に攻撃ができないということだ。拳で殴ってもいいが攻撃力がないと相手がスライムであろうとダメージは与えられない。
「いやー、本当異世界に来てもツキヤのそう言う馬鹿な所は変わらないんだね、変わらなすぎてちょっとお姉ちゃん引いちゃうよ」
「目を逸らさないでぇぇ!! お願いだから!目を逸らさないでー!!」
くそっ・・・まなねぇだって武器の存在忘れてたくせに。
ま、まぁいいさ、こんなこともあろうとスキルを習得していたのだ。あの例の優しいお兄さんが低コストでも覚えておいた方がいいぞってこのスキルを教えてくれたのだ。
俺はそこら辺に落っていた少々長生きを持ち、スキルを発動させる。
「何するのつっきー?」
「まっ、見てなって」
俺が発動させたスキルは【クリエイト】このスキルは違うものへと作り替える事が出来るスキルだ。
手に持った木を丁寧に改造していき、先端部分を尖らせる、そして持ち手を作って・・・っと、よし!完成。
「これが俺の最初の武器だ!」
「おお!! つっきーすごい!」
「やる時はやるって事ね」
「や、やめてくれ照れるじゃないか」
良かったー!このスキル覚えておいてあれもこれもあの人のおかげだな。
さて、2人の武器も作ろう。
クレハの弓は木と糸を使った、これだけで簡単に作れるのだ。因みに矢だがあれは槍と同じ容量で作った、サイズはコンパクトにしたけどね。その弓をクレハへと渡す。
「わっ! 凄い弓まで作れちゃうんだ」
「まぁな、強いとは保証しないけど・・・」
「ううん! 一生大事にするよ!」
「あはは、ありがとな・・・」
強い武器が手に入ったらそんな物捨ててもらってもいいんだけどな。
次にまなねぇの武器なのだが問題が発生した。ロッドを作るにはそこら辺にある木だけではなく【魔岩石】という石が必要だった。何故足りないものが分かるのかというとこれも【クリエイト】の性質の一つだ。
【クリエイト】は発動するとリストが表示されそこから何が必要かが示される。必要な材料が揃っていると白字無いものだと赤字となっている。リストの欄の足りない素材をタッチするとその素材はどこにあるのかやどのモンスターを倒せばドロップするというのも書いてある。
そして、今回は必要な【魔岩石】だがこれは今の俺達では無理だ。何せ上級クエストに行かなくてはドロップしないものだからだ。
ロッドと言うのは案外作るのが難しい。
今回はまなねぇに諦めてもらい後日鍛冶屋で買うことにしよう。
「ま、まなねぇ、まなねぇのは今作れないから後でもいいよね?」
「仕方ないか、それなりの理由があるんでしょ」
「あ、ああ」
今日は珍しくストレートに話が進んだ。
こんな日は初めてかもしれないな。
「じゃあ、殺っちゃおうか!」
「殺る、殺る!」
今日のクレハちゃんちょっと怖い・・・。
「じゃあ、行っくよ!」
まずは、クレハが弓を構える矢を引く、狙いを定めてスライムにうち放つ。
「――キュンッ!!」
見事スライムに当たり、スライムはその場から消える、残されたのはスライムからドロップされたと思われる液体のみだ。
あれも後で回収しておこう。
そして、次に俺の番だ。
槍を構え背後からスライムを突いた。
「クキュンッ!」
うまくスライムを倒せたようだ。
一撃でスライムを倒せるという事も分かった事だし今度はゴブリンの大群と戦ってみようかな…。
なんて調子に乗っていると続々スライムがこちらに集まってくる。
これは、スライムの特性。【死集合】と言う。
一体のスライムが倒されるとそこに集まる習性があるらしい。
「どうしたものか…この数…」
目の前に広がるスライムの大群。たった二対倒しただけでこの数だ。
「つっきー!!どうするの!?」
「いや…その…逃げよう!!」
当たり前だ、これだけのスライムを相手にするほどの命と戦闘力は持ち合わせていない。
このクエストは失敗と終わるが…また次挑戦すれば良いだろう。
俺達がその場から退却するときだった。
スッと俺達の横をさえぎり一人の少女が大剣を構えスライムへと走っていく。
「お、おいッ!!」
声をかけるが聞こえていないのかそのまま走っていく、そして…。
「スキルリべレーションッ!」
少女の持っていた大剣は炎に包まれる。あれも何かのスキルの一種なのだろうか。
「はァァァッ!!」
大剣をなぎ払う。スライムの大群の半分は倒しただろうか。だがまだ残っているし、そんなに倒したらまた仲間を呼ばれるんじゃないのか?
「そこの人達なにをしているのですか?ぼさっと立ってないで手伝って下さいよ!」
「は、はい!!」
なるほど呼ばれる前にぶっ殺すってわけか。
ってなわけで槍を強く握りスライムに攻撃をしていく、クレハも弓をスライムに向け攻撃をする。まなねぇは・・・・・・見てるだけだ。
◇
ふぅ~。一通りスライムを片付けられたかな、なんせ休む暇なんて無かったからな。
槍は木で作ったからか、すぐに作ったからかもろいのか、ボロボロだ。
よく絶えてくれたと思っている。
「協力感謝するよ。ありがとう」
「あ、いえ。こちらこそ危ないところを」
この人は誰なんだ?別にたいした装備でもないし。
ま、大剣はすごいと思うよ、技術もかなりあったな炎を剣にまとわせられるなんて…。
にしてもこの子もあまりクレハと身長差は変わらないんだな。
「ところで、貴方は何者ですか? 大剣を使いこなせるなんてただものじゃないですよね?」
「確かになクレハの言うとおり、大剣なんてしれっと使えるものじゃない」
俺とクレハは大剣使いの少女に正体を求める。
すると、少女は身だしなみを整え大剣を地面へと突き刺し答える。
「私はカリス=レーテ。何者?と言われても困るりますね強いて言うなら…」
続く言葉をカリスは困り顔から真剣になり答える。
「王国騎士軍三期副団長…と言ったところでしょうか」
は?