実力
目の前はすべてが赤く染まっている。
建物が燃えている匂い、そして血の匂い。
目の前には町の人たちの無惨なしたいがごろごろ転がっていた。
「母さん!母さん!」
少年は頭から血を流しながらも一生懸命母親を叫びながら呼んだ。
「ダメよ、私はいいからあなただけで逃げなさい」
母親は化け物に持ち上げられながらも必死に抵抗して息子を逃げさせようとしている。
「母さんを離せ化け物!」
化け物は聖也の方に体を向けて睨んだ。
それだけで、たったそれだけで聖也は心臓をわしずかみにされたような恐怖に一瞬で包まれた。
動きたいけど体が震えてうこけず、立っているのがやっとだった。
「うっ...くそ!動けよ!」
聖也はなんとか動かそうと体に力を込めるが動かない。
そんな聖也を見ていた化け物は母親の方を向いて持っている逆の腕を振り上げた
「いやぁーーー!」
「母さーーーん!」
その時、聖也は恐怖よりも母親を助けたい気持ちが勝って化け物に向かって走り出した。
「母さんを離せーー」
地面に落ちていた木の棒を拾って化け物に向かって振るった。
木の棒は化け物に当たると同時にすぐに砕け散った。
そして化け物は振り上げた腕を聖也に向かって振るった。
「ぐぁーー」
「聖也!」
聖也は軽く吹き飛んで地面をバウンドして転がった。
化け物はまた腕を振り上げてた。
「やめろ...母さんを..はな.せ」
生きているのが奇跡だった、聖也は必死に母親を助けようとした。
だがその願いは届かなかった。
化け物は母親に向かって腕を振り下ろして一瞬で消した。聖也の周りは母親の肉片で汚れ顔にも血がついた。
「あ...あああ...母さーーーん!!」
聖也は必死に体を起こそうとするがもう力が入らず意識もギリギリでその場を見ることしかできなかった。
化け物は母親を殺し聖也に背中を向けて歩き出した。
「待て!母さんの!母さんの敵を...」
最後の気力を振り絞り叫んだか化け物は歩きを止めない。
「まてっ..て...」
聖也の体も限界が来て意識が薄れていく。
「ころ...してやる、絶対..に..俺はお前をころ...す...」
そしてついに声が出せなくなった、歩いていく姿を見ることしか出来なかった、悔しくて今にも殺したいのに敵がすぐそこにいるのに...
そして最後に聖也が見たものは化け物の肩のドラゴンの入れ墨だった。
「...またあの夢か」
夢を見た聖也はいつもよりも早くにめが覚めた。
右腕の手の甲の紋章が浮かび上がり光出した。
「主よ、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ心配すんなギゼル」
「そうか我はいつでも力を授ける準備をしておくからな」
「わかった、ありがとな」
そう言って手の甲の紋章は消えていった。
いつもよりも早く起きてしまったので、早めに出ることにした聖也は準備を済ませて家を出た。
訓練を始めてから今日が七日目、明日はついにクエストに行く。
サテラもとてものみこみが早く大きく成長した、シャーロットの方も魔力量の増加とさらに今までよりも魔法が威力を増していた。
今日は最終日なので怪我をしない程度で組手をひたすらやるのだ、聖也も手加減をしすぎたら痛い目にあうので気を引き締めるのだった。
早めについた聖也はサテラとシャーロットがくるまで、準備運動を済ませてあとは、ゆっくりと座りながら二人を待つ。
そして遠くに二人の姿を確認した聖也はさっと立ち上がり体を伸ばした。
「おはようございます、黒鉄君」
「おはよう、聖也」
「おはよう、それじゃあ始めるぞ」
そういって、走り出して体が暖まったら座禅をして組手を始めるのだった。
「今日で最後の訓練だから実戦のつもりでやるぞ、怪我をしない程度でな」
「わかりました」
「わかったわ」
最初は聖夜とシャーロットで聖也は少し腰をおろして、攻撃に備えた。
「それじゃあ行くわよ、私シャーロット=ウィンディアが命ずる、相手を惑わすスピードを、神威!」
唱えた瞬間サテラの姿が目の前でぼやけて消えた。
聖也と初めて特訓したときに使った神威とは比べ物にならないくらい精度が上がっていて、あのときの3倍は上がっている。
スピードで聖也の背後にまわって攻撃を仕掛けたシャーロットだか、それを読んで聖也がしゃがんでその攻撃を避けて、そこから体を回転させて拳裏で反撃した。
避けられたて驚いたシャーロットだったが、頭をすぐに切り替えて聖也の反撃を手で受け流し距離を取った。
「さすが入試2位だな、魔法の精度も見事ながら、俺の攻撃に対しての対処技術はさすがだな」
「そうでしょう、これで少しは私のすごさがわかったかしら?」
「だか、まだまだ粗削りだな、今度はこっちから行くぞ」
そう言い正面からシャーロットに向かって突進した、聖也の速さをわかっているシャーロットは避けようとせずに、両手を前で構えて受け流すことを判断した。
聖也は自分の間合いに入るとすぐに攻撃した、次から次へと連続して休む隙を与えなかった。
シャーロットは必死に攻撃を受け流して、最小限の動きでしのいだ。
そして聖也が何発目かわからない攻撃を今のように受け流そうとしたら、腕には何の感覚もなくさっきまでシャーロットに向かっていた一発は別の方向から出されて。
その一瞬の隙で受け流しが間に合わなくなり顔の前で拳が止められた。
「ざっとこんなもんだな、目の前の攻撃だけを見ていたら奇襲には対処できないぞ」
「また負けた~、てか私は魔法使ってるのにあんたは魔法を使わないで私以上に動けるって、やっぱりあんたは化け物かなんかじゃないの?」
「それは、俺が努力してきた証拠だ、サテラやるぞ」
「はい」
時間が限られているので聖也はサテラを呼んですぐに組手に取りかかった。
「全力でこいよサテラ、今まで俺が教えたことを全部使え」
「わかりました、いきます!我、サテラが命ずる、夜鳥の魂を我に、フクロウソウル!」
サテラの姿が目の前から見えなくなり気配も感じられなくなった。
1日目のよりも精度が格段に上がって、聖也は少し焦った。
「これは予想以上だ、こっちも集中するか」
そう言うと聖也の視界から色が消えて音も聞こえなくなり、全神経を尖らせて攻撃に備えた。
そして構えているといきなり後ろから攻撃が仕掛けられてそれもしっかりと急所に向かってだ。
聖也がギリギリで攻撃を手元の木のナイフでガードして反撃をしようとした時にはまた気配を消して離れていた。
「教えた俺が言うのもなんだか面倒だな、あの手を使うか」
そういって聖也は腰を落としていたのを普通の体勢に戻った。
だけど聖也から伝わってくる圧力がだんだん大きくなってきた、いや圧力と言うより殺気だった。
空気が揺れるのを感じその揺れをソナーがわりにして、サテラの場所を暴いてその場所に一瞬で近づき、サテラの手首を掴んでそのまま後ろにまわした。
「痛いです黒鉄君ギブギブ」
そういってサテラとの組手を終了した。
「気配を消して攻撃するのはよかったが、お前の姿は絶対ばれない訳じゃない、戦いの最中は最悪の場合を想定して行動しろ」
「いたたた、黒鉄君にはまだまだか」
その後もシャーロットとサテラと組手をしていい時間になったので学園に行った。
クラスのなかでは誰も聖也に話しかけないし近づこうともしない、サテラも同じようなものだ、シャーロットはクラスではだいぶ上の地位のようでいつもたくさんの人と話している。
実力はあってもヒューマンということには変わりはない、最初からわかっていたが聖也は心が締め付けられた。
学園が終わって俺は人があまりいないところに移動するとシャーロットとサテラがやって来た。
「明日はいよいよ出発だ、だから夕方の訓練はなしにしてしっかりと体を休めるようにする」
「いよいよですね、みんな待っててねもう少しだから」
「明日はギルドに朝7時に集合だ、解散」
そういって解散して聖也は家に帰り、晩御飯を済ませてお風呂に入り明日の準備をしていると。
「主よ調子はどうだ?」
「ばっちりだ、お前の力を借りるまででもないな」
「そうか...」
「どうしたギゼル?」
ギゼルの様子がおかしいと聖也は思った。
「主よ昨夜から何か不吉な感じがするのだ」
「不吉な感じ?」
「そうだ、だから明日のクエストはあまりなめてかからないほうがいい」
ここまでギゼルが言うのは初めてだった、聖也は明日のクエストを警戒することにした。
―――― 翌朝 ―――――
太陽の明かりが窓を越して聖也の顔に刺さる、鳥の鳴き声も聞こえてとてもいい朝だった。
昨日ギゼルが言っていた不吉とは真逆だった。
6時30分聖也は早めにギルドについてシャーロットとサテラを待とうと思ったが、
「おはようございます黒鉄君」
「おはよう聖也」
2人はもうすでにギルドの前で待っていた、少し驚きつつも聖也は挨拶を返した。
「おはよう、早いな2人とも」
「あんたが遅いのよ、レディーを待たせるなんてダメなやつね」
「俺は30分前にしっかりと来たんだぞ」
「お気になさらないで下さい、私たちもさっきついたばかりですから」
2人と会話を少しして、出発することにした。
前から用意していた馬車に3人とものりクエストで討伐するディザストレックスの住みかとしている森に向かった。
「ねぇねぇ聖也」
主発してから目的地まであと半分のところでシャーロットが質問をしてきた
「前から思ってたんだけどさ、私たちの中であんただけ実力がどのくらいなのかわからないじゃない?だからさ教えてよ」
「俺のか?」
「それ私も気になります、教えて下さい黒鉄君」
シャーロットの質問にサテラもくわわってきた。
「知る必要はないだろ?俺の実力を教えたところで何も変わらないぞ」
「あんたがは私の魔法を消したり、エラルドをたったの2発で倒したり、ヒューマンとは思えないほどの身体能力を持ってたりして気にならないほうが難しいわよ」
シャーロットの言う通り聖也はこの世界の常識どうりのヒューマンでわない、竜人をたったの2発で仕留めるなんてかなりの腕の立つ者しかできないことだ。
「だから早く教えなさい!」
こうなりだしたシャーロットはとてもしつこいのを聖也は知っているので、ここはギゼルのことだけ隠して教えることにした。
「はぁ~俺は小さい頃からいろんな訓練をやってきたんだよ、ただそれだけだ」
「それなら私だって、小さい頃からいろいろやられたわよ」
「じゃあ聞くが今までおまえは訓練を一度も休まずやったか?」
聖也のあまりにも真剣な顔にシャーロットとサテラは背筋に寒気がした。
「一度もってそりゃあ一度くらいはあるわよ」
「そうですよ黒鉄君一度も休まないっていうのは、さすがに無理がありますよ」
シャーロットとサテラはあり得ないことだと決めつけた。
「その無理なことをやって俺はここまで上がってきた」
「「!!」」
「ちょっとあんたそれは無理があるって」
「そうですよ、いくら黒鉄君でもそんな事無理ですよ」
聖也の驚き発言に二人は困惑しながらもそれぞれの意見を言った。
「そうだな、普通ならな」
「なによその言い方、まるで自分が特別だと言うような言い方は?」
聖也の発言に少し頭にきたシャーロットは少し強めに言った。
「そういうわけじゃない、俺には果たさなきゃならないことがあるだけだ」
「黒鉄君その果たさなきゃならないことって何かな?」
疑問に思った二人を代表してサテラは聖也に質問をした。
「・・・俺の住んでいた所を滅茶苦茶にして、母親を殺した奴に復讐することだ」
二人が考えていたことよりもの凄く深った、周の空気が重くなったことを二人は感じた。
「そのためには強さ、実力が必要だった。だけど俺はそこらの奴と一緒のことをやっても意味がないんだ」
「それってどおいうことよ?」
たまらずシャーロットが聖也に質問をした。
「俺は特殊・・・イレギュラーなんだよ」
「イレギュラー・・・それって何よ?もしかしてあの、魔法を分散するってやつのこと?」
「そうだだが、その他に俺は属性魔法を使えないんだ、その代わりに魔力の圧縮と分散という魔法を使える」
「それって強すぎじゃない?それを使えばどんな魔法も分散してなくせるじゃない?」
こんな魔法を手に入れたら多くの者がシャーロットのように考えるだろう。
だが聖也はあまりこの魔法が強いとは思えなかった。
「強すぎ・・・か、はぁ俺の苦労も知らずによく言うな」
「何よ、あんたの苦しみって」
「例えば分散の魔法でも相手が使ってきた魔法の魔力と同じかそれ以上の魔力を使わなくちゃいけない、圧縮も大気の魔力を集めるのに閉じ込めるものを俺の魔力で作らなきゃいけない」
「ふん、何かといえばそれくらいだったら、私にかかればらくしょうよ」
シャーロットは呆れた顔で聖也を見たが聖也も逆にシャーロットを呆れた顔で見ていた。
「何よあんたその顔は、馬鹿にしてるの!」
「お前は何もわかっちゃいない、いいか分散は消えるんじゃなくて1個を半分にして2個するんだ、この意味が分かるか?」
シャーロットの顔は何もわかっていない顔で聖也は呆れた。
「はぁー、それじゃあシャーロット光魔法のライトをだしてみろ」
「なんでそんなことしなくちゃならないのよ」
「いいからやれ、実際に見たほうが速い」
「わかったわよ、シャーロットが命ずる、ライト」
魔法は特訓によって詠唱は短くでき、シャーロットはほぼ無詠唱でライトを唱えたことに聖也は感心した。
シャーロットの手のひらには光っている球体が浮いていた。
「よく見てろよ、分散」
聖也が唱えると球体が大きさが半分になり二つに分かれた。
「これが分散一回使っただけだと何も意味がない、目に見えないほど分子レベルまで小さくしなきゃいけないんだ」
「それのどこが苦しいのよ」
そうシャーロットがいうとガンッ!と音を立てて聖也がシャーロットの前に座禅で使う蝋燭を置いた。
「なによ!うるさいわね」
「実際にお前が体験してみろ、これは俺が分散するときに使う魔力を流せば燃える仕組みになってる」
「やってやるわよ、消してしまっても文句を言わないでね!」
そう言って蝋燭にシャーロットの魔力を流しは始めた。
だが蝋燭は燃える気配がない、すっかりなめていたシャーロットは漠然とした。
「どうした、消すんじゃなかったのか?」
「うるさい、黙ってなさい」
シャーロットはさらに集中力を上げ弱小だが火が付いた。
「これはまだ一回分だぞ、後十回以上はやんないと意味がない」
「はぁはぁはぁあんたはこれが普通に使えるの」
「ああ使える、この魔法を使えるようになるには休んでいる暇はないんだ、だから俺は訓練を休まず続けている、これが俺の実力だ」
シャーロットは実際に体験して今まで感じてこなかった聖也のオーラがよく感じ鳥肌が立った。
サテラは聖也とシャーロットのやり取りを見て言葉を失った。
「おい二人ともボーっとするな目的地につくぞ気を引き締めろ」
「はっはい」
「わかってるわよ」
聖也の言葉で我に返った二人は改めて気を引き締めて荷物を確認した。
そして聖也だけがその森から伝わる不快なオーラに気づいていた。
どうもナオフミです。まず読んでくれた読者の皆様ありがとうございます。
是非とも感想とレビューの方をよろしくお願いします。




