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底辺種族の逆転  作者: ナオフミ
三章黒鉄聖也暗殺編
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憤怒

 

 聖也が叫ぶと周りは地震が起きたように激しく揺れた。実際に揺れたのは地面ではなく聖也から出ている膨大な力が、空気を震わしているのだ。


「ふふふ、ついに黒鉄君も決意したんですね。さあ()りあいましょう!まあ()るのは私ではなくこの子たちですがねっ!」


 ヴィーネはシャーロット達の後ろに下がって、腕を前に出して先制攻撃を仕掛けた。ヴィーネの指示通りにシャーロットは魔法を唱え始め、サテラは気配を消し、エミリーは大剣を構えて聖也に向かって行った。


「さあ!黒鉄君はどうしますか!?」


 シャーロット達が向かってきている中、聖也は一つの事しか考えていなかった。


『どうやって殺してやろうか』


「っ!」


 ヴィーネは直感的に感じてしまった。感じない方が楽だったのに、自分が目覚めさせてしまった力に、自分を軽く殺すことができるその力にヴィーネの体は反応した。


「一撃で殺せー!」


 ヴィーネは自分の口調がおかしくなっていることにすら気づかず、ただ目の前にいる恐ろしい()()()を早く自分の前から消したかった。

 聖也は攻撃が迫ってきているのにその場から動く気配はない、ただ黙ってずっとヴィーネだけをその黒い瞳に映していた。


「レオベルト流剣術『剛断・獄』っ!」


 自分の間合いに入った瞬間エミリーはその自分より重く大きい大剣を聖也の首めがけて本気で振るった。

 ヴィーネの力によって力はいつもの何倍にも上がっていて、今までのエミリーからは考えられないまさしく今までで最高の一振りだった。

 しかしその一振りは聖也の首に当たる寸前で止められた。


「おい!何してんの!早くその大剣で黒鉄君の首をはねろよ!」

「・・・・・」

「私の命令が聞けないのか!」

「・・・・・」


 ヴィーネは焦っていた、今まで自分のパペット(人形)となったものは命令は絶対に聞いていた。たとえ殺す相手が自分の最愛の人でもヴィーネの命令通り殺した。

 なのに目の前に見える光景は自分の命令に従わない今まで経験したことがないことだった。


「もういい!あいつがやらないのなら他に任せる!殺せ!」

「我シャーロットが命ずる、目の前の敵を灰とかせ、『ヘルフレア』っ!」


 シャーロットが唱えるとさっきとは比べ物にならない大きさの炎の塊がまるで流星のように聖也に迫っていくが、これも聖也に当たる寸前で起動が変わり聖也に当たることはなかった。


「ふっ!」


 そして今度は背後からサテラがナイフで聖也の首を狙うがそれも当たる直前で止められる。


「なんで・・・・なんで私の命令を聞かないの!」


 ヴィーネはシャーロット達以外のパペット(人形)を使おうとするが、シャーロット達よりも酷く動く気配すらなかった。


「こいつらは動かねえよ」

「っ!どういう意味よ・・・・・」


 今まで口を開かなかった聖也が喋った。その声質は冷徹で声だけなのに首元に刃物を突き付けられているような感覚だった。


「こいつらはお前に操られてはいるが生きている、生きているってことは脳も働いている」

「・・・言っている意味が分からない」

「死ぬってわかってて、向かってくる奴はいないってことだよ」

「嘘よ!私の命令は絶対なの!」

「ああ、お前の命令は確かに届いている」

「だったら・・・」

「だが本能があまりにも危険だと判断してこいつらは動かないんだ」

「う、う、嘘だー!」


 ヴィーネは信じたくない現実を言ってくる聖也を口封じするために、腰にぶら下げていたナイフを抜いて聖也を襲った。


「じゃあお前も味わってみろ、こいつらが感じている死線を」


 そう言って聖也はまたその場を動かない。ヴィーネはそんな聖也を見て余計に感情が高ぶり、口封じで殺すつもりはなかったが自分がなめられていると感じ、首にある静脈めがけて最短距離で最速にナイフを振った。


『グシャ!』


「えっ・・・・」


 気づいた時にはヴィーネの腕は滅茶苦茶になっていた。手首だけではない肩まで全部、そして見るからに修復不可能なレベルで壊れていた。


『なんでなんでなんでなんでなんでなんで!』


 そんな言葉がヴィーネの頭の中で流れていた。

 原因は分かっていた、こんなことをするのはさっき自分が殺そうとしていた人物、聖也しかありえない。だがやったのは聖也だと分かっているが、どうやったかは全くヴィーネには分からなかった。

 そしてそう考えてるうちに聖也の拳がいきなり目の前にありそのまま地面に叩きつけられた。


「ゴハァ」


 腕を破壊されてさらに顔までグシャグシャにされ、鼻血は止まる気配はなく呼吸もほぼできない。

 こんな状況でまた聖也が倒れているヴィーネに向けて拳を振り上げていた。そしてヴィーネは理解した。


『死ぬ』


 自分がもしもあと一発でも聖也の拳を受けたら死んでしまうと理解したのだ。すると一気に体温が下がり体中が震えだした。


『死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない』


 恐怖が一気にヴィーネを包みこんだ。だがいくら死にたくないと願ったところで聖也は止められない。聖也の拳がどんどん自分の顔めがけて飛んでくる。


「いやー!」


 聖也の拳が自分の顔に届いたと思った瞬間ヴィーネは夢でも見ていたかのように、気が付けばナイフを聖也の首に当たる寸前で止めて立っていた。

 腕も顔も聖也によって壊されていたのに、綺麗に戻っていた。


「どういう・・・」


 ヴィーネは混乱した、しかし聖也がすぐにその答えを言った。


「それが死線だ、お前も今見たんだろ?俺に手も足も出せずに殺された瞬間を、お前は俺に本能的に恐れているんだ」

「嘘よ!誰があんたみたいなヒューマンなんかを恐れるのよ!」

「だったら今すぐこのナイフを動かしてみろよ」


 そう言って聖也はヴィーネのナイフを自分の首に当てた。少し力を入れて引っ張れば静脈を完璧に切れる。そんなことはヴィーネにだってわかるだが、体が動かない。まるで自分の体じゃないみたいに。そして震えだす。何度止まれと脳から命令しても震えが止まらない、ついにナイフを持つ手に力が入らなくなっていきナイフを落とした。


「あっ・・・ああぁぁ・・・」

「お前は人が絶望する顔が好きだったな」

「えっ?」

「よかったな、今のお前の顔はお前の大好きな絶望に染まっている顔だぞ」

「あああああぁぁぁぁぁぁ!」


 ヴィーネは逃げ出した。今すぐこの化け物から逃げなければと本能が訴えて来る、必死に走る後ろを見る暇もなく走る。だがその化け物はヴィーネの目の前にいた。


「なっなんでいんのよ」

「ははは冗談はよせよ、まさかお前この俺が逃がすと思ってんのかっ!」


『ボキッ!』


 ヴィーネの足が曲がらない方向に曲がった。


「まずは足二本だ」

「ぎゃあああぁぁぁ!!!」


 痛みが電気のように体中に巡っていく、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして歯を食いしばり痛みをこらえる。


「お前は俺から大切な者を奪った」


 聖也は足を両方失って動けないヴィーネに近づいていき、左腕を掴んだ。


「だから俺もお前から奪ってやるよ」


『バキッ!』


「あああああぁぁぁぁぁ!」


 掴んだ腕をそのまま握り潰した。ヴィーネはその場で横になり折れた左腕を抑えて叫んだ。


「まだまだ行くぞ」


 聖也の攻撃は終わらなかった、折れた左腕をさらに足で踏み潰した。何度も何度も何度も。

 そしてヴィーネの腕が原型で無くなったところで攻撃はやんだ。


「これで左腕は御終いだ、ん?あーあ気絶しちまったか『分散』っ」


 ヴィーネは何度も来る痛みについに耐えられず、意識を手放した。しかし聖也は『分散』を使いヴィーネの顔の周りの空気をなくして呼吸をできなくした。するとヴィーネはあまりの苦しみに意識が目覚めバタバタと暴れだしその姿を見て聖也も『分散』をやめた。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「よお、俺の攻撃どうだった?」

「ひっ!ばっ化け物!」


 ヴィーネの瞳に映っていたものはまさしくヒューマンを被っている化け物、醜くそして恐ろしいまるで悪魔のよう。


「じゃあ次は右腕だ」

「もうやめてください!お願いします!」

「お前はそう言ってきた人たちに今までどうやって来た」

「あっ・・・・・」


『バキッ!』


「ぎゃあああぁぁぁああ!!!」

「まだ指一本だ、これから徐々に行くからせいぜい覚悟してろ」


 そこからはまさに拷問だった。指を一本一本じっくり徐々に力を入れてへし折っていき、意識を失えばまた『分散』で目を覚まさせて再開、指が終われば次は手のひら手首とどんどん上に上がっていき、折れていない骨がないように聖也はどんどんと折っていった。

 ついに右腕が完全に肩まで粉々になり聖也の拷問は人まず終わった。


「これでお前の手足は奪った」


 ヴィーネは少しほっとした、もうあんな苦痛しかない拷問を受けなくて済んだんだと。


「これでもう・・・・・」

「何安心してるんだ」

「えっ?だっでもう奪うものが・・・」

「あるだろ、大切な物」


 そう言って聖也は地面に横になっているヴィーネを指差した。


「お前の命だよ」

「えっ?」

「大丈夫だ、今度は苦しまなくていい。頭丸ごと消し飛ばすから」

「えっ嘘だよね、命を奪うって。私を殺すってこと?」

「そう言ってんじゃん」

「ッ!あんたそんな事したら人殺しになるよ!」

「大丈夫だ俺はもう人殺しだし、未来にはもう一人殺す」


 そう言って聖也はヴィーネに馬乗りになった。


「そんなことをしたら親御さんが悲しむよ!」

「安心しろ親はとっくの昔に亡くなってる」


 聖也は右腕を上げて拳を作り力を溜める。


「待って!今までのことは謝るし!今後は聖也君の奴隷としてなんでもする!今後の聖也君の面倒、もちろん聖也君の家族の分も経済負担も私が背負うから!だから命は!」

「俺最初に言ったよな」

「?」

「ヒューマンをなめるなよ」

「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!!!」


『ドカァン!!』


 そう言って右腕に溜まった力を一気に解放してヴィーネの顔・・・・・の真横を通りすぎて地面を殴った。その威力はものすごく大きなクレーターができるほどだった。

 ヴィーネは顔を涙や鼻水やらでぐちゃぐちゃにしながら気を失った。

 なぜヴィーネを殺さなかったのかは聖也にもわからなかった、ただシャーロット達のことを考えたら勝手に手が動いたそれだけだった。


「・・・・・まあ、これで一見らく・・・・」


『ドァカン!!!!』


 いきなりもの凄い爆発音が鳴り響き。空気中を震わせる。


「なんだ!」


 慌てて聖也は爆発したところを見ると、アルミド帝国内で一番大きい観覧車が聖也達の方見向かって転がってくるのが聖也の瞳に映った。さっきまで出ていた太陽が雲に隠れ一気に辺りは薄暗くなった。


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