襲撃
「すぅ~はぁ~」
黒鉄聖也は深呼吸をする、青空の中照り付ける太陽の下目の前で起こることへの心の準備として。
目の前は崖、止まりたいのだが止まれないこれには聖也の意志は関係ない、そしてついにその時が来た・・・
「おおおおおおぉぉぉぉぉ!」
今まで出したことない大声を腹の底から出した。体は浮遊感に襲われてなんとも気持ち悪い・・・・だが少しずつ体中に浴びる空気が気持ちよく感じて来る。聖也が今まで知らなかった感覚が今この瞬間知ることができたのだった。
「あ~楽しかった!ねえねえもう一回乗ろうよ!」
「それはいい考えですね!私も賛成!」
「幸雨も幸雨も!」
「主人がいいというのなら・・・・・」
「それなら速く並びに行こう!セイヤ、何やってんの速く行くよ!」
アルミド遊園地三大マシーンジェットコースター、最高時速は二百キロまで達して長さはこの世にあるジェットコースターの中では一番。
こんなものに人生で一度も乗ったことがなく遊んだこともないような人がこれに乗ったらどうなるか。
正解は・・・・・
「セイヤー、セイヤってば!おっかしいな?どこに行った・・・、ってええ!もう並んでるし!」
そうめっちゃ楽しくなるのだ。今まで訓練しか頭になかった聖也の頭が一瞬で真っ白になり代わりに他のアトラクションのことを考えるようになったのだ。
「何をやっているお前ら、乗らないんだったら俺だけでも乗るからな」
「・・・なんだろう聖也の目がめっちゃキラキラしてるように見えるんだけど」
「・・・・かわいいです」
「主人楽しそう・・・・・」
「最初は行くの嫌がってたくせに、なんであたしたちより楽しんでんの・・・・・」
「・・・そこをツッコむと後で面倒なことになるから、今は忘れて私たちも並びましょう」
「・・・・・そうする」
もう一度ジェットコースターに乗った後、聖也は低学年の小学生並みのハイテンションでいろいろなアトラクションで遊んだ、コーヒーカップにメリーゴーランド、ゴーカートに鏡の迷路それはもうありとあらゆるアトラクションを遊んだのだった。
そして時刻はお昼を少し過ぎた、聖也達は遊園地内にある休憩所で休んでいた。主に聖也と幸雨以外のメンバーが。
「情けないなお前ら、今までの訓練は何だったんだ?」
「ぱぱ、ぱぱ!次、はやくいこう!」
「待ちなさい!私たちはもう疲れたのよ!誰かさんの今まで見たことのないテンションに振り回されて!」
「そうか!別に幸雨はいつも通りだったが・・・・」
「あんたのことを言ってんのよ!」
「・・・・俺が?」
聖也に一切の自覚なし、シャーロットは肩を思いっきり落としため息を吐く。
「聖也・・・まさか自覚ないの?」
「なんのだ?」
「だから!あんたが遊園地をものすっごく楽しんでいると言うことを!」
「馬鹿な俺がこんなところを楽しんでいるわけがないだろ」
「嘘つけー‼」
「・・・・シャーロット結局ツッコんでるじゃん」
「そこはどうだっていいのよ!問題は聖也が何も自覚してないってことよ!」
聖也から見ればシャーロットがなぜこんなに大声で叫んでいるのかはわからなかった、ただわかるのは相も変わらず周りに人が集まるということだけだ。
「なんでお前がそんな大声を出しているかはわからんが休憩が済んだならさっさとくぞ」
「楽しんでないのなら別に速く行かなくたっていいでしょ!」
「幸雨が早く遊びたいと言ってるんだ、つべこべ言わず行くぞ」
「あっ、ちょっと!」
これ以上幸雨を待たせることはできないと聖也は幸雨の手を握って移動を始めた。
「ぱぱ、ままたちはいいの?」
「ああ後で来るから今はパパと一緒に遊ぼうな」
「うん!それじゃあね次はね」
こうやって幸雨と手を繋ぎながら会話をする、シャーロットたちと些細な事で言い合ったりする、子供のころの聖也が母親と一緒に暮らしていた時と同じ、胸のあたりが温かく感じる。
『この温かさがずっと続けばいいのに』
そんな聖也の小さな願い。
だが聖也の人生はそれを許さない。
「きゃっ!」
「おっと」
聖也達が歩いているといきなり目の前で女性が前に倒れてきた。いつもの聖也なら無視するところだが転んだ先には幸雨がいるため聖也は倒れてきた女性を支えた。
「ありがとうございます」
「・・・・次から気をつけろ」
「はい、ですがその前に助けてくれたお礼をさせていただきます」
「礼はいいからさっさと行け」
「いえいえ、どうかお礼をさせてください・・・」
「っ!」
「貴方の絶望で」
その女性はいきなりどこから出したかわからない、ナイフを幸雨に向けて振るった。一瞬だった、聖也は腕に『圧縮』で空気をまとってナイフを腕で止めた。
「どういうつもりだ!」
聖也は膨大な殺気と怒気を女性にぶつけながら聞いた。
「言ったでしょう?貴方に絶望というお礼を挙げるんですよ」
その時笑った女性の笑みは、聖也がよく知る笑みだった。相手の死を絶望を心の底から楽しんでいるクズ、『笑う死神』レイド・カストレイドと同じ笑み。
聖也は女性が二度目の攻撃を仕掛ける前に幸雨を連れて逃げた。幸雨がいる中での戦闘は圧倒的に聖也が不利、ここはいったん引いててシャーロットたちと合流することが今聖也が取るべき手段だった。
「あらあら、逃がしませんよ!『マインド・オブ・パレード』っ!」
女性が何か魔法を使ったらしいが聖也は気にせずにシャーロット達のところに向かった、しかし目の前に人が大勢聖也の壁として立ちはだかった。
「おい!そこをどけ!・・・くそっ!」
聖也は呼びかけてみたが目の前にいる人たちの目を見て呼びかけるのをやめた、目の前の人たちはみんな目がうつろになっていたからだ。
目の前の人たちを飛び越えようと考えるがすぐにその案は消した。もしも飛んだ先にトラップなどが仕掛けて合った時に空中でしかも幸雨を支えては回避も難しいだから聖也は進行方向を変えた、シャーロット達と合流するためではなく全力で相手から逃げるために。
相手は聖也に絶望を挙げると言った、ならば聖也の身近にあるものに危害を加えるはず、幸雨を攻撃したのも聖也を絶望に落とすため。この場合シャーロット達も危険な目に合っているかもしれないが、今の聖也には信じてシャーロット達の無事を願う事しかできなかった。
「私のパペットたちからは逃げられませんよ」
女性の言う通り聖也はもう逃げることができなくなっていた、なぜならこの遊園地にいる者は全てこの女性の人形となったのだから。
聖也は進路を変えて逃げたがすぐにまた目の前に他の人が立ちはだかる、また進路を変えて逃げる。
そういうことを繰り返していくうちに聖也はどんどんと女性の檻の中に入っていく。そしてついに。
「聖也君つーかまーえた、あはっ!」
周りには目がうつろな人たちで埋め尽くされた、逃げられるスペースはない。
聖也はこの状況の中極めて冷静に頭の中で整理して、一つの答えにたどり着いた。
「ぱぱ?」
聖也は幸雨を床に下した。そして心配そうに見て来る幸雨の頭を力強く撫でた。
「安心しろ俺はお前を見捨てない、だから俺のそばを離れるなよ」
「うん!」
「あらあらもう鬼ごっこはおしまい?」
「そうだなもう逃げるのはおしまいだ、次はお前を叩き潰す!」
「ふふふふ底辺種族のくせに生意気ね、パペットたちやってしまいなさい!」
女性の命令で今まで立っていただけの人たちが一斉に聖也達に向かってきた。
聖也は幸雨の前に立って戦闘態勢を取って、大声で言った。
「ヒューマンをなめるなよ!」




