禁止
不機嫌である。黒鉄聖也はものすごく不機嫌だ。
「ねっね~セイヤ?いい加減機嫌直してよ」
「・・・・・」
「ああ~黙らないでよ~、そのお詫びにご飯に誘ったんだからさ」
「・・・・・」
「うぅ~、シャーロットも何とか言ってよ。こうなった理由はシャーロットにも一部責任があるんだからね」
「わっわかっるわよ、そんなの!」
ネルとシャーロット、二人は必死で聖也の機嫌を直そうとする。
そもそもの原因を作った犯人ネルと、命の恩人の聖也を吹き飛ばしただけでなく壁の弁償までさせシャーロット。聖也は何もしていないのになぜ校長に説教されなきゃならないのか、コップの中に入っている氷をガリッとかじる。
「許してよセイヤ~」
「ごめんなさい・・・・」
「はぁ~、もういい謝るな」
そんな謝って落ち込んでいる二人を見ていると、もの凄く聖也が悪いように見えてしまい周りがうるさくなってくるので、聖也は二人を今のところは許すことにした。
「ほんとに?もう怒ってない?」
「くどいぞネル、許すと言ったら許す(今のところ)」
「そっそか~」
「それじゃあ、もうこのことは水に流して今は目の前の料理を食べましょう」
「そうだな」
「パパ~、まだ食べないの?」
「もう食べるから、ほら手を合わせて。お前らも全員手を合わせろ」
「わかりました」
「わかったわ」
「主人の命令」
「こうか?」
「俺の後に続けて言えよ。いただきます」
「「「「「いただきま(ー)す」」」」」
ヒューマン独自の食事の前の儀式を終えて、全員は目の前にある料理を食べ始める。
今聖也達がいるのはギルドの中にある居酒屋である。普段あまり周りの人と接触するのを避けたい聖也は基本家で自分で作って食べたいんだが、今回はネルがどうしても聖也にお詫びをしたいからと、そして幸雨が目をキラキラさせて「行ってみたい!」と言い出し聖也は初めて外食をするのだった。
「このお肉とてもジューシーでおいしいです!」
「わぁほんと!いくらでも食べられる!」
「はむはむはむはむ」
「おいし~」
「それはよかった!ねぇセイヤはどうなのさ?」
「あっ?」
四人ともとても幸せそうに食べている中聖也だけはまだ一口も食べていなかった。
「どうしたの?食べないの?」
「食べたいのはやまやまなんだが・・・・・」
「なんだが?」
「・・・・・↓」
「ん?」
ネルは聖也が指を指す方を見てみると、そこには口の周りはベタベタ手も汚れていてテーブルの上も悲惨な状況だった。その犯人は・・・・聖也の愛する娘幸雨。
「・・・・・・」
「幸雨はな、まだ食べ方をよく知らないんだ。だから俺が片付けなきゃいけないんだ。家だったらいくらでも汚してもいいがここは違うからしっかり掃除しなきゃな」
「それだったら私がやるから、セイヤは食べてよ」
「ダメだ」
「なんで?」
「幸雨はお前には触らせない」
「何それ、ひどいっ!」
「抱き着いて死に追いやるような奴には、家の幸雨には触らせない。もし触ったら・・・・・」
鳥肌が立つような寒気がネルの体を伝う。
「わかった!わかったから!そのマジな目はやめて!」
「そんなわけで俺は幸雨が食べ終わるまで食えないんだ」
「はぁじゃあ、セイヤの分も取っといてあげるから後で食べな」
「そんじゃよろしく」
「パパ!おかわり!」
「はいはい」
そうして三十分もすれば幸雨はお腹がいっぱいになり、聖也も仕事から解放され自由になった。お腹がいっぱいになった幸雨は寝てしまった。それはそうだろう幸雨のお皿だけシャーロット達と比べて二倍くらいある、その小さな体のどこに入るんだか。
「お疲れ~」
「ああ、疲れた」
「すいません、あまりにも料理に夢中になりすぎてしまい幸雨ちゃんの事気づいてあげられなくて」
「あんたも少しは私を頼りなさいよ」
「主人の気持ちを察せなかった・・・・・、主人!私にお仕置きを!」
「いいや気にするな、最近幸雨とも触れ合ってなかったからいい機会だった。それとエミリーそんな事幸雨の前では絶対言うなよ」
「・・・了解」
「そ・れ・よ・り~、セイヤも早く食べてみてよここの料理本当においしいから!特にここのギルドの特製ソースのステーキが本当においしいから!」
幸雨に害を与えそうなエミリーにしっかりくぎを刺した聖也は、ネルが聖也の前に持ってきた分厚いなんともボリュームマックス、食べ応えマックス、匂いマックスな肉の塊に意識が向いた。
「これはなんとも」
「ささっ!がぶっと男らしく!」
「あーがぶっ・・・・っ!」
脳が体が今にもとろけそうな感覚だった。口に入れた瞬間、肉の塊からまるで爆弾のように肉汁が口いっぱいに流れ込み、何種類ものスパイスが鼻を通り抜け、一見とてもくどそうに見えたがとてもさっぱりしてて上品な味わい。だが一番はやはりこのソース!肉の破壊力にも負けず、肉が持つポテンシャルを最大限に引き出していた。
一度食べるともう止まらない、聖也はどんどん肉を口の中に入れていき胃を体を満たした。そして肉を食べていくごとに体が熱くなり意識がボーっとしてきた。
「そんなに喜んでもらえてよかった!」
「・・・・・」
「セイヤ?」
一皿をぺろりと平らげ、ネルは聖也に感想を聞こうとすると聖也の様子が少しおかしいことに気が付いた。
「どうしたの?」
「いやなんかセイヤの様子が変でさ」
「なに!主人がどうかしたのか!」
「黒鉄君?」
シャーロットもサテラもエミリーもネルの反応を見て寄ってきた。聖也はなぜか下を向いたまま動かない。
「ちょっと何してんのよ聖也っ!」
「「「ああ~!」」」
聖也に触れようとしてシャーロットが手を伸ばすと、いきなり聖也はシャーロットの腕を掴み自分の方へ寄せてキスをした。それもかなりの。
「んっんん・・!ん・・ん・・・」
いきなりキスをされてとっさに抵抗していたシャーロットだったが、途中からは抵抗しなくなりぐったりと体の力を抜いた。
「ぷはぁ・・・」
やっとキスから解放されたシャーロットは足に力が入らずその場に座ってしまう。
「どどどどどどうしたんですか黒鉄君!」
「ここここんな人目がある中できききキスとか何考えてるんだよ!」
「主人私にも!」
「「エミリーは黙ってて(ください)」」
「・・・・はい」
二人に注意されて落ち込むエミリー、そのさまはまるで主人に怒られた時の子犬のようだった。
「・・・・エミリー」
「っはい!主人」
「服を脱げ」
「っ!しゅ主人それはさすがに」
「ああ⁈俺の言うことが聞けないっていうのか!」
「いっいえ、そんなわけでは、主人はエミリーの主人だから・・・・・」
「だったら俺の言うことを聞け!口答えをするな!お前もシャーロットのようにしてやるぞ?」
「っ!シャーロットのように・・・・・・」
その言葉を聞いたエミリーが聖也の命令を実行しようと服に手をかけたその時、ネルとサテラが必死になってエミリーを止めた。
「待ってくださいエミリー、早まんないでください!」
「そうだ早まるな!セイヤもいきなりどうしたんだよ!」
「ああ?」
その時二人が見た聖也の顔は、目が半分しか開いてなく頬が赤くなっていた。そして立ち上がっていた聖也はふらふらしていた。ネルとサテラはこんな聖也に似た人たちを見たことがあった。
「・・・・あんたまさか酔っぱらってるの?」
「俺はじぇんじぇん酔ってにゃいぞ!」
「絶対酔ってますよ、黒鉄君!」
「確定だね、でもどうしていきなり酔っぱらって、セイヤはお肉しか食べていないのに・・・・ん?」
ネルは考えてみて少しだが答えが見えた。
「すいません」
「はい、何でございましょうか」
「このお肉にかかってるソースってお酒って入ってる?」
「はい、味にコクや深みを出すためにうち(ギルド)で作っている特製のワインが少し入っています」
「そうですか・・・・、あのーもしかしてそれで酔っぱらってしまうってことはありますか?」
「いいえ?ないと思いますよ。入れると言っても火にかけてアルコールを飛ばしてしまいますから、酔っぱらうとすればそれはもうお酒に弱いか確か・・・・」
「わかりましたもういいです」
「?わかりました、それでは」
店員に聞いて確信した、聖也は酔っぱらったのだ。この肉にかかっているソースに入っている、ごくわずかなアルコールで!
「あんたどんだけ弱いのよ!」
「これで黒鉄君が急に変になった理由が分かりました、それじゃあ今度は黒鉄君をどうやって止めるか考えましょう」
「おいにゃにやってんだよ!俺のだぞ!手を出すな!」
「きゃっ!」
「うわっ!」
原因が分かり後は聖也を止めるだけだが、それがどれだけ大変なことか・・・・・・
自分の命令を実行していたのを邪魔された聖也は、エミリーを捕まえているネルとサテラになるで瞬間移動でもしたかのようなスピードで近づきエミリーを掴んでいた手を放した。
「いいか!こいつは俺のものだ!俺の許可なく触れるな!触れていいのはこの俺だけだ!」
「しゅっ主人・・・・・きゅう」
聖也にギュッとされながら、そんなことを大声で言われたエミリーは嬉しさや恥ずかしさのあまり気を失ってしまった。
聖也はエミリーを離してネルとサテラの方に歩いてきた。
「俺のものに手を出した罪だ・・・・」
「ちょっセイヤ!サテラはわかるけど私まで!」
「ネルさんっ!今なんて言いましたか!」
「問答無用だー!」
「「あああああぁぁぁぁ!!!」」
この後どうなったかは想像通りだ。
ギルドに迷惑をかけ、物を壊し、それはもうもの凄かった。
聖也はこのことは一切覚えていない、自分はただおいしいお肉を食べただけだとしか覚えていない。だから聖也以外幸雨を除いたメンバーはネルも加えて聖也へのお酒を一生禁止にすることを誓ったのだった。




