死神
合図が鳴った瞬間に、聖也はレイドに突進していった。
「くたばり、やがれ!」
聖也がレイドの懐に入ったのは、あまりに一瞬のことで、観客席から聖也の動きは見えなかった。
しかしその動きに、不気味に笑う死神はついてきていた。
突進の勢いのままボディーを狙ったが、レイドは聖也の拳が当たった瞬間、聖也の拳と同じ速度で、自分の体を衝撃の方向へ曲げて、後ろに飛んでダメージをゼロにしたのだ。
観客席から見ている生徒や報道陣は、レイドが聖也のボディーをまともにくらって、吹き飛びダメージを受けたと思っていた、たとえ避けたとしても、ゼロにはできないと思った。
だがこれは聖也が一番わかっている、攻撃が当たった瞬間に同じスピード同じタイミングで流されたと、聖也は甘く見ていた、まさか自分の攻撃がダメージゼロになるとは、予想がつかなかった。
吹き飛ばされたレイドはむくっと起きて、こちらを見て笑っている、聖也でさえ、背中に寒気を感じる。
聖也はポーカーフェイスで顔には出してはいないが、内心ではかなり驚いていた、レイドの試合を見たときにかなりの反射速度だと思っていたが、そのレベルはせいぜいシャーロットと同じか少し上くらいだと思っていた、だが実際に目の前で見てみると、反射速度だけで言えば聖也と同等かまたはそれ以上か・・・・
「おいおい、どうした底辺種族、怖気づいたか?」
「はぁ?誰が怖気づくかよ、今のはほんの小手調べだ、今までの奴とは違うな、これで少しは本気でやれそうだ、壊れるんじゃねえぞ」
「強がりだね~、お前は俺には勝てねーし、手も足も出せなくなるよ」
「やれるものなら、やってみやがれ!」
聖也はもう一度レイドに突進していた、しかし今度はさっきよりも足に力を込めて間合いをつぶした、そしてそこはもう聖也の間合い、聖也は拳を頭の真横、顎、みぞおちの順で出したが、それをレイドは手のひらで聖也の拳を受け流した。
「このっ!」
聖也にとって初めての感覚だった、攻撃が全く当たらない、ギアを上げてもレイドはすべて受け流す、フェイントをかけても聖也が行動する前にレイドは行動を開始している。
「クソがっ!」
このままレイドに主導権を握られたままじゃ、どんどん不利になっていく一方だと判断して、聖也はいったん後ろへ飛んで距離を取った。
「あれあれ?どうしたのかな?本気を出すとか言って、俺に一発も与えられないとか、さすが底辺種族だよ、プププッ」
「てめぇ!今すぐぶっ潰してやる!」
「まあまあ、落ち着けよ。俺だってずっと待ってるわけにはいかないんだ、次は俺の番だ」
レイドは右腕を前に出し、上がっている頬がさらに上がる。
その行動に、聖也の中の本能が危険だと訴えたのが分かった。聖也は考えるよりも先にレイドに再び攻撃を仕掛けて、レイドがやろうとしていることを阻止しようとしたが、遅かった。
「ドカーン」
『パチンッ』
『ドカーン‼』
レイドが指を鳴らすと、いきなり聖也の左腕が爆発した。
「ッ!」
まるで左腕が消し飛んだように思え、すぐに確認し消し飛んではいないことを確認した。
しかしそれは、消し飛んではいないということで、聖也の左腕は血が大量に流れ、骨までやられた感覚が聖也にはわかった。
「ハハハ!さすが底辺種族、俺の爆発で腕が吹き飛ばないとわ、運がいい奴め」
「痛いじゃねえか、おかげで左腕がほぼ使い物にならなくなったじゃねーかよ」
「それはそれは、良かったなあ(笑)」
「だが、お前のこの魔法は大体は予想がついたぞ」
「ほお・・・」
「お前の魔法は、自分専用の魔法で、おそらく爆破だ、そうだろう?」
「まあ、これくらいのことは今までのを見ていればわかるな」
「そしてこの爆破の魔法を、お前は他の人や物に触れることによって、触った部分を爆破できる、だからお前はわざわざ俺の拳を手の平なんかで避けたんだろ?お前のその反射速度ならかわすことができるはずだからな」
『パチパチパチ』
聖也の推測を聞いたレイドは、聖也に向かって拍手を送っていた。
「おめでとう、その通り全部底辺種族の言う通りだよ、触れたところを自分の好きなタイミングで爆破できる、これが俺の魔法、『クロックボム』だ。しかしこれが分かったからって、どうにもならないだろう?現にお前の左腕はもう使い物にならない、それに俺はお前に何回触れたと思ってるんだ?」
そう、いくら種が分かったところで、対処するこすることはまず不可能だろう。
しかしそんな不利な状況だというのに、聖也は頬が上がるのをこらえることができなかった。
「そうだな、俺はお前に何回も触れられた」
「ハハハ!そうだよお前はもう爆弾だ、俺が指を鳴らせばすぐに爆発する、だから俺もさすがに鬼ではない、今お前がこの場で降参して、学園をやめると誓うなら、みのがッ!」
レイドが気持ちよさそうに話している中、聖也はいきなりその腹の立つ顔に殴りかかった。
あまりにも唐突すぎて思わずくらってしまった、レイドは聖也に殺意のこもった視線を送った。
「この底辺種族が!せっかく俺様が情けをかけてやっているのにどういうッ!」
何かしゃべっていたようだが聞き流し、再び殴りかかった、だがさすがに警戒されて手の平で流された。
「お前はバカか!?これでまたお前の腕に爆弾がついたんだぞ!」
「それがどうした!」
受け流された体をすぐにレイドに向けて、怒涛のラッシュをかける。
「お前、この距離からだと爆破できないんだろ?」
「!?」
些細な反応だったが、聖也は見逃さなかった。
「当たりのようだな、ならひたすらお前にくっついて、殴ればいいって話だな!」
聖也はギアをさらに三つ上げた。
さっきまでとは、段違いの速さ、レイドの受けが間に合わず少しずつ押されていく。
「ッ!あれが限界じゃなかったのかよ!底辺種族が、調子に乗るなあぁぁぁ!」
ここで初めてレイドは攻撃をした、ついに受けているだけでは不利になるだけだと判断したのだ、だがその攻撃を聖也は待っていた。
「お前の攻撃を待ってたんだよ!」
「ごふっ!」
レイドの顔から不気味な笑顔は消えて代わりに苦痛の顔になった。カウンター一閃、レイドが強引に聖也に攻撃したのを聖也は紙一重で避けて、相手の向かってくる力を利用して、この試合初の聖也の渾身のボディーが決まった。
「ガハッ!」
レイドはたまらずその場に膝をついた。
「なっ、んで、なんで俺が、くっ!倒れなくちゃいけねーんだよ!」
「なんでって、簡単なことじゃねーか、お前は守りこそ凄いが、攻撃手段はさっきみたいな、爆破のみ。今までもそうやって戦ってきたんだろ?確かにお前はものすごい反射速度をもっていて、相手よりも一つ早く攻撃できて、なおかつかなりのスピードだ。だが逆に言えばそれだけだ、ただ速いだけ、狙いも、形も力の入れ具合も、体の使い方も、全くできていない素人だ。そんな素人の攻撃なんていくらやっても俺には聞かねーよ」
「クソがあああぁぁ!」
図星を突かれて、やけくそに聖也に殴りかかった。
「無駄だって、言ってんだろ!」
「ッ!」
今度はレイドの顎をとらえて、レイドは血を口から吐き出しながら、宙に舞った。
「ボフッ!はぁはぁ・・・・」
聖也は宙に舞ったレイドの首を右腕でつかんでぶら下げた。
「これでおしまいだ、最後はお前に壊されたこの左腕で決めてやる、楽に死にやがれ!」
そうやって、思いっきりためを作って、左腕を振りぬこうとしたとき、レイドのさっきまで苦痛で歪んでいた顔が、またも不気味に笑っていた。そしてぽつりと呟いた。
「お前の娘がどうなってもいいのか?」
その言葉に聖也は左腕をレイドの顔ギリギリで止めた。
「・・・・どういう意味だ」
「そのまんまの意味だよ」
死神は再び笑った、そして聖也の首には死神の鎌がかけられるのだった。




