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底辺種族の逆転  作者: ナオフミ
二章生徒会戦編
19/49

嚆矢

 

 開始の合図とともにギルと聖也は距離を取り相手の出方を窺った、まず初めに仕掛けたのはギルだった。


「我ギルが命ずる、地獄の業火で悪しき者を消し炭とかせ、ヘルフレイムランス!」


 ギルの周りには、形状はフレイムランスと同じ形をしているが、その色は全く異なり禍々しいほどの黒だった、それにフレイムランスとは比べ物にならないほどの熱を放ち、離れている聖也にもその熱は伝わった。


「死ね底辺種族が!」


 ギルが右腕を前に突き出すとそれと同時に周りのヘルフレイムランスが聖也に向かって飛んできた。

 そのスピードは一般のフレイムランスの最低十倍以上はあり、目で追うにはかなり無理がある、しかしそれは一般常識なだけであり、この大会はその常識から飛び向けている者たちの戦い、もちろん聖也もそのうちの一人。


 聖也は飛んでくるヘルフレイムランスに向かって、体を前に倒し風の抵抗を最小限にして走り出した、そして飛んでくるヘルフレイムランスを綺麗に次々とかわしていき、どんどんギルに近づいていく。


「底辺種族のくせに、とっととくたばりやがれ!」


 聖也がかわして近づいていることに腹が立ち、ギルは次々とさらにヘルフレイムランスの数を増やし仕留めようとするが、それでも聖也は止まらず距離がどんどん縮まっていく。


 そして聖也はギルの懐までスピードを落とさず入り込みそのままの勢いを利用してギルの腹に向けて一発入れようと右腕を引いた。


「この俺をなめるんじゃねぇ!ヘルフレイムナックル!」


 ギルは聖也に向かって黒い炎で包まれた拳で迎え打とうとしていた、さっき聖也が近づいている間に詠唱をしていたのだった、魔法を使いながらも詠唱するという技術はこの世界でもかなりの実力がなければできないことだ、シャーロットでさえもこの二重詠唱は練習はしているが使うことができない。

 そしてギルが二重詠唱で唱えていた魔法は、フレイムナックルと同じく炎を拳にまとって相手に攻撃するのだが、これもまた禍々しほど黒く、放っている熱が桁違いで、まさしく地獄の業火のようだ。

 そんな炎の拳が近づいていて当たれば即死だというのに聖也の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。


「それはこっちのセリフだ、あまり俺をなめるなよ」


 聖也は引いていた右拳をギルの腹ではなく、向かってくる黒い炎に向かって突き出した。


「馬鹿め!頭が逝かれたか!そのまま消し炭になれ!」


 そのまま二人の拳が衝突してすさまじい衝撃波がドームの中に伝わった、これで普通はギルの拳に触れた瞬間、触れた腕は燃えて最悪なくなってしまうが、観客が、ギルが見たのは不敵な笑みを浮かべながらギルのヘルフレイムナックルを素手の拳で止めている聖也の姿があった。


「なぜだ!なぜ消し炭にならない!」


 ギルは動揺してさらに火力を上げて力を籠めるが、聖也の腕は燃えることもなければピクリとも動かない。


「それは単純なことだ、お前より俺の方が強いってだけだ」

「クソォォォォォ!」

「吹き飛べ!」


 そう言って聖也が腕を振りぬくと、ギルの腕から骨の砕ける音がして、そのまま壁まで吹き飛びクレーターを作った。

 もちろんギルはそのまま壁に埋まりながら意識を失い戦闘不能になった。


「「「・・・・」」」


 観客があまりに衝撃的なことに声も出せないでいた、それは放送席も同じでとっくに決着がついているのに、放送が流れない、しかしそんな静寂な中三人の女の子だけは違った。



「パパー!パパー!」

「黒鉄君おめでとうございます」

「いいぞー聖也」


 幸雨とシャーロットとサテラだけは聖也に向かってしっかりと言葉を送っていた、それにこたえるように聖也も幸雨たちの方は向かないが、右手を上げてガッツポーズをしながらそのまま出ていくのだった。


「はっ!私としたことがあまりの衝撃に実況するのを忘れてました、えーと第八試合の結果はギル選手が気を失い戦闘不能により、勝者は一年ヒューマンの黒鉄聖也選手です!」


 聖也がガッツポーズをしたのを見てようやく、現実に戻ったフィトリアはすぐに勝負の結果を伝えた、それにより観客も次々と現実に戻りドームの中がどんどん驚きと混乱であふれていった。


「はぁぁー!なんだよさっきの、インチキじゃねーのか!?」

「そうよそうよこんなことが、起こっていいはずがないわ!」

「ギルが負けるわけがねー!きっと底辺種族が何かしたに決まって」


 幸雨たち三人以外の観客は、目の前で起きた出来事をすべて嘘や、底辺種族の仕業とか、八百長など誰一人として、現実をそのまま受け止める者はいなかった、放送席でも予想外のことが起こり少しパニックになっている。


「ええっと、第八試合に関してはなんと言いますか、大変すばらしい試合なのか何なのか、いろいろな感想が頭の中で回っていて言えませんが、一つ言えることは驚きです、なにせ目の前ではあのヒューマンが勝ちあがるということが起こり、異例なことなので観客の皆さんも混乱しています、特別ゲストのフェニックスさんはどう思いますか?」

「そうですね僕も今まで学園にいてヒューマンがこの大会に出ているのも驚きですが、まさか勝ってしまうとは、それほど彼の実力があるってことの証明です、彼の実力はまだまだ底が見えていませんので、僕は今後もこのヒューマンを少しだけ期待をしたいと思います」

「ありがとうございます、それでは気を取り直して第九試合に移りましょう」


 退場して観客の目がなくなったのを確認して聖也はさっきギルの拳を受けた右拳を見た。


「初めてやってみたが意外と使いやすいな、拳も痛めずに済んだし、それにしてもあの野郎本気で俺を殺そうとしやがって、右腕だけでありがたく思えよあいつ」


 聖也はあの黒い炎の拳を受けるのに使ったのは、圧縮を使って自分の手の周りにグローブみたいに作って守るというものだった、盾として圧縮で壁を作ることは簡単だがそれでは守りだけになってしまうので、攻撃も防御も両方こなすことはできないかと考えた結果がこれだ、今回の試合はメテオストライクを打てばすぐに決着がついたが、ちょうどいい実験としてさっきの試合に挑んだのだ。


「さてと早く戻ってやらないと、聖雨に約束したからな、それに二回戦からはあいつらも出てくるからな、しっかりと見ておかねえとな」


 幸雨たちのところに戻った聖也は、すぐに幸雨が飛びついてきたので、しっかりと受け止めて頭を撫でて、席に座って試合を見ていると、なぜか周りからものすごい視線を感じるので、周りを見渡してみた、するとこちらを見ている生徒たちはみんなとても怖い顔でこちらを見ていた、聖也はその原因が何となく予想がつくが一応隣にいるシャーロットに聞いてみた。


「おいシャーロット、なんなんだよこいつらは」

「多分、あんたがさっきの試合で勝ったことが信じられなくて、不正とかをしたんじゃないかって疑ってる連中だと思う」

「やっぱりそうか・・・、あんまり気にするなこんなのはいつものことだ」

「わかってるけど私、すごく悔しいよ・・・、せっかく聖也が自分の実力で勝ったのにみんな疑って認めてくれないなんて・・・」

「私もそう思います」


 サテラも入ってくる。


「黒鉄君はものすごい力の持ち主です、この大会にだって優勝できる力をもっているのに・・・・、黒鉄君は悔しくはないのですか?」

「・・・・」

「そうだよ聖也、もっと周りの人たちに認めてもらおうとは思わないの?」

「そうだな、ほんの少し前の俺だったらそう思ってたかもしれな、むしろ殺してやろうと思ってたな」

「今はどうなんですか?」

「そうだよ、今はどうなのよ?」

「・・・俺も変わったな」

「早く言いなさいよ」

「はいはい、今は幸雨やお前らが認めてくれるからいいんだよ、だからもう周りのことは気にするな」

「「っ!」」

「この話はおしまいだ、俺は試合を見る」


 聖也の思いもよらない一言にシャーロットとサテラは顔を赤くしながら下を向いていた、入学式の頃の聖也からは考えられないことだった、だがこれが聖也の今の本性なのだ、今まで誰一人として認めてくれなかったが幸雨とシャーロットとサテラはしかっりと聖也のことを見てくれている、今まで一人だけだった、しかし今は三人も増えて聖也は顔や言葉には出さないがとてもうれしかったのだ。



 それから数分後一回戦の試合がすべて終わった。


「一回戦第十四試合が終わり次からは二回戦に移ります、そしていよいよ次からはあの二人も試合に参戦します、第一試合から目が離せませんよ!それでは二回戦第一試合はついに第一シードのエグゼ・アイズベルト選手の登場です!」


 聖也は放送を聞いて、今までよりも集中して試合を見るのであった


「やっと来やがったか、さてと第一シードの実力しっかりと見せてもらうぞ」


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