開始
開会式が終わり聖也はそのまま控室に戻らず観客席の方に足を進めた、そして観客席の通路を歩いていると聖也を呼ぶ声が聞こえた。
「パパ~、こっちこっち」
聖也を呼ぶのは大事な家族で娘である幸雨の声だった、聖也は少し足を速めて幸雨の所に向かった。
「パパ!」
聖也が来ると幸雨は飛びついてきた。
聖也はしっかりと受け止めて頭を撫でると幸雨は幸せそうに笑った。
そしていったん幸雨から目を離し、隣にいた幸雨を任せていた人たちに目を向けた。
「すまないな、幸雨を見てくれて」
「そんないいんですよ、黒鉄君には家族を助けてくれた恩がありますから」
「それにさ、聖也には日ごろの訓練の礼もあるから、そんなこと言わなくてもいいって」
今日と明日は聖也は生徒会戦があり幸雨の面倒が見れないので、今聖也が一番に信用しているシャーロットとサテラに面倒を見てもらうことにしたのだ。
「そうか、改めてよろしく頼む」
「はい、任せてください」
「了解、しっかり勝ってきなさいよ、負けたら・・・」
「はあ~」
シャーロットの言葉に聖也は重い息を吐いた。
「何なのよ!人がせっかく心配してるのに!」
「・・・・」
「しかもその哀れな人を見るような目で見るな!」
「おいシャーロット、お前は俺が負けるとでも思ってるのか?」
「そうじゃないけど、もしもって話だよ」
「もしもね、ありえないな、俺は復讐を果たすまでは一人として負けることはない、そして今回の生徒会戦は俺だけじゃない幸雨の今後もかかってるんだ、俺が負けるなんてことは万に一つもありえないない」
「・・・・ごめん、そうだよね、負けるはずがないものね」
「おう、だから幸雨のことよろしく頼むぞ」
「わかった」
「よし、今日はまだ準々決勝までしかやらないから、俺も途中まではここにいて偵察をする」
話もひと段落ついて、聖也は空いていた席に座った、すると幸雨が膝の上に座ってきたのでそのまますきにさせるのだった。
座って数分後、放送が再開された。
「お待たせしました、いよいよ生徒会戦第一試合を開始いたします!それでは入場とともに各選手の紹介もしていきます!まず右側から出てくるのは・・・・」
そんな感じでいよいよ初戦が始まり、聖也もどんな選手がいるのかワクワクして観戦した。
結果は右側から入場してきた生徒が勝利した、見た感想はあまり注目しなくてもよいという結論だった、先輩だから少しは強敵だと思ったが結果は空振り、その後の第二試合もあまり変わらなかった。
「ねえねえ聖也」
第二試合が終わり聖也は第三試合が始まるまで暇にしていた時、隣にいるシャーロットが声をかけて、何か聞きたそうな顔をしていた。
「何だ?」
「そういえば、あんたがいつ出るって聞いてなかったと思って」
「はぁ?そんなもんトーナメント表見れば一発だろ?たしか入場するとき配られてただろ」
「そうなんだけど、実は今回の生徒会戦は過去最高の入場者で私たちが入る時にはもうなくなってて・・・」
「それでも掲示板に貼ってあっただろう」
「席を取るために急いできたから見てない」
「・・・・はぁ、じゃあ教えてやる、俺は今回内シードだ」
「・・・?」
「つまり、今回エグゼとエミリーがそれぞれ外側に入っていて、決勝の前にエグゼに当たる組とエミリーに当たる組の二つに分かれて、今回俺は二つのうちのエミリーの方に入ってしかもエミリーとは準決勝で当たるところだ」
「へー、それで聖也は何試合目に出るの?」
「俺は第八試合に出る、だから第六試合が終わったら移動する」
「わかった、ありがとう」
「おう、これで貸し一だからな、お前には何でも一つ言うことを聞いてもらうからな」
「はぁー!何言ってんのよ!」
「そろそろ第三試合が始まるから静かにしろ」
「話を逸らすなー!」
第三試合も始まって、同じく観戦を続けたが、結果は変わらず聖也にとって強敵と思える奴がおらず、そのまま第六試合まで進んだ。
第六試合が終わると同時に聖也は立ち上がった。
「パパ、どこに行くの?」
「ん?これからパパも大会に出てくるから、少しの間待っててくれ、すぐに戻ってくるから」
「うん!じゃあ幸雨パパのおうえんがんばる!」
「そうか、それじゃあパパがいないときは隣にいるお姉ちゃん達の言うことをしっかり聞くんだぞ」
「わかった!」
「それじゃあ二人とも幸雨よろしく、すぐに戻る」
「はいはいわかったから、早く行きなさい」
「それでは黒鉄君、しっかりと幸雨ちゃんを見ながら応援していますから、初戦頑張ってください」
「おう」
三人と別れて、聖也は入場口についた、まだ第七試合は続いている。
聖也は両手を握ったり開いたりして自分のコンディションを調べ、目をつぶり周りの無駄な情報を遮断して集中力を上げる、周りの音が聞こえなくなってくるそして自分が理想としている動きをしている妄想をしてイメージも整える。
そして準備が百パーセントになり目を開けると、ちょうど第七試合が終わっていた。
「第七試合も素晴らし試合でした、今年は一回戦からレベルが高いですね、ゲストのフェニックスさん、今までの試合を見てどう思いますか」
「そうですね確かに今年の生徒会戦は一回戦からレベルが高いと思いますが、校長が言っていた『今までで一番の戦い』までは届いてません、なのでこれから戦う生徒たちにはもっと白熱した試合を期待してます」
「それではそんな白熱した試合を見るためにどんどん進めていきましょう!続いて第八試合を始めたいと思います!それでは第八試合で戦う選手の紹介をします、まず右側から出てくるのは、三年のギル・テスタ選手です」
「「オオオォォォ-ー!」」
「えーと、ギル選手、種族は竜人、今までの成績は上位に入る強者!火属性の攻撃を得意としていて、今までに戦った相手はみんな酷い火傷の後を残して入院しています、それでついた異名が『デスフレイム』直訳すると炎の死神、今回の優勝候補の上位者でです!」
「いけー!デスフレイムまた病院送りにして一回戦を余裕で突破だ」
「そうだそうだやれやれ!」
周りの観客がギルに向かって数々の声援を送る、それに答えるようにギルも周りに手を振っている。
「続いて左側から入場してくるギル選手ことデスフレイムの対戦相手は・・・・えっ?」
「?どうした」
「何々?」
急にさっきまで元気よく紹介していた放送がいきなり驚いた声とともに途切れて、観客席にいる生徒たちはみんなどうかしたのかとざわつき始めた、すると放送も観客のざわざわとする声が聞こえたのか正気に戻った。
「皆さん大変失礼しました、えーとギル選手の対戦相手ですが・・・・、名前は黒鉄聖也、種族は・・・・ヒューマンです」
放送がそう言った瞬間会場がいきなり開会式のように静寂で包まれた、その中を聖也は悠々と入場して、やっと観客は理解して今度は大きな笑いの渦になった。
「あははは!マジかよヒューマンのくせにこの大会に出たのかよ!」
「あーおかしい、お腹痛い!」
「どうせ、すぐに瞬殺されて終わりだって、病院行きたくなかったらさっさと棄権しろって」
どんなに優しくても、金持ちでも、かっこよくても、可愛くても、ヒューマンと言ってしまえばどこでもこんな反応だ、他の種族と比べて魔力や基本能力が低いことは確かだ、だが決してその差は一生埋まらないものではない、日々努力を重ねれば必ず追いつきぬくことができる。
ただ今までのヒューマンの中でそんな奴が出てこなかっただけで、やればできるのだ、しかし今の世の中の人たちははそんな可能性を投げ捨てて全くないと勝手に結論をつけている、そんなことをしている人たちが聖也は大っ嫌いだ。
聖也の対戦相手であるギルもヒューマンが相手だと知ってからずっと腹を抱えて笑っている、それを見て聖也はきつく両拳を握りじっとギルを見ていた。
聖也の視線に気づきやっと笑うのをやめたギルが、右手の人差し指を動かして挑発をしてくる、なので聖也は肩をすくめニヤリと笑いながらギルと同じことをして挑発をやり返した、すると顔を真っ赤にしてギルは怒り出した。
「こらてめぇ!ヒューマンの分際でこの俺をバカにすんじゃねぇ!俺はな、お前みたいな弱いやつが一番大っ嫌いなんだよ!」
「そうかそれは奇遇だな、俺もお前みたいなゴミは一番大っ嫌いだ」
「なんだと!」
聖也とギルの間は、お互いが相手を倒して次に行くという空気ではなく、お互いが殺そうというピリピリとした空気が漂っていた。
そしてついにその時が来た。
「それでは両選手中央にそろったので、第八試合、三年竜人のギル・テスタ選手と一年ヒューマン黒鉄聖也選手の試合を始めます、それでは・・・・始め!」




