勇気
食堂へ行き昼食を食べ終えた後、聖也たちは教室に行き午後の授業を受けた。
教室では誰も聖也について喋らず目も合わせようとしなかった、そのまま今日の授業は終わった。
「やっと終わったか、幸雨帰るぞ」
帰りの支度を教室の中で誰よりも早く終わらせて聖也は娘の幸雨を連れて教室を出た。
「待ってください、黒鉄君」
そう言って聖也達の方に近づいてきたのは、その美しく整った顔は女性を集めて、そして出るところは出ている体は男性を集めて、一年生の中で最近ファンクラブができたサテラだ。もちろん本人は知らない。
「どうしたサテラ?」
「いえ、何も大したことではないんですがえっと・・・・」
「丁度いい、サテラ買い物に付き合ってくれないか?」
「へ?えええっと、そそそれは、ででででっ」
「んっ?幸雨の洋服とか色々と買いに行きたいから手伝ってほしいんだが」
「あっ、そそそそそうですよね、はい、いいですよ」
サテラは顔を真っ赤にして返事をした。
「ありがとな、ならさっさと行くとしよう、邪魔な奴が来る前に」
「邪魔な奴?」
聖也はサテラがいいと言ってくれたので速く学園を出ようとしたが、何やら遠くから叫んでこちらに近づいてくる小学生の姿があった。
「聖也ー!」
「はぁ~一歩遅かったか」
聖也は肩をガクリと落としてため息をついた、サテラはその近づいてくる小学生を発見すると手を振っていた、幸雨はさっきから聖也に抱っこされたままじっと黙っていた。
「何よあんたその残念そうな顔は、あたしが来たことがそんなに残念だっていうの?」
「誰もそんなこといってねぇ~よ、わーいうれしい(棒)」
「何なのよその感情のこもってない言い方わ!」
「何だせっかく人が喜んであげたのに、素直に受け取ってろ」
「そんな言葉受け取るもんですか!もっとしっかり感情を込めて言いなさい!」
「はいはい」
「あんた絶対にわかってないでしょ!」
身長だけ見れば小学生、しかしその身長からは想像できないほど発達した体、サテラにも負けないほどに整った顔、それらを持つシャーロットもまた最近ファンクラブができている、そしてシャーロットとサテラこそが一年生を代表する美女である。
そんな一年生を代表する二人が近くにいたら嫌でも人が集まってくる、これを聖也は避けたくて速く学園を出ようとしたのに、その願いはかなわなかった。
「説教はいいから、俺に何の用だ?」
「そうだったは、あんた今日ちょっと私に付き合いなさい」
「悪いな今日は用事があるからまた今度な」
そう言って話を切って去ろうとしたときサテラから爆弾が落とされた。
「シャーロットちゃん、今日黒鉄君と一緒に幸雨ちゃんの洋服とかを買いに行くんですけど、もしよかったら一緒に言いますか」
「こらサテラ余計なことは」
「へー二人っきりでね、聖也?どういうことかな、私なんかよりサテラとのデートを優先するの?」
聖也はシャーロットの後ろに見えるはずがない般若が見えた、この時初めて女子は怒らすと怖いということが分かった。
「落ち着けシャーロット」
「うるさい!これからあんたは幼女が大好きなロリコンだって学園中に広めるから!」
「それだけはやめろ!さすがに今まで数々の罵倒を浴びてきた俺だがそれは耐えられない、どうしたら許してくれるんだ?」
「・・・・私も」
「なんだって?」
「私も連れて行きなさいって!」
「わかった、わかったからそんなに大きな声を上げるな」
シャーロットが声を響かせたおかげで周りはものすごい人数のギャラリーとなっていた。
ようやくひと段落が付き移動できると思ったその時、今まで黙っていた幸雨が言葉を発した。
「ねぇねぇパパ?」
「何だ幸雨?」
「どっちがママ?」
幸雨が発した言葉は原子力爆弾だった、周りは一瞬でざわついた。
「ええ!まさかあの二人のどちらかが生んだ子供!」
「そんなまさか、やっぱり孕ませて生ませたって話は本当だったんだ」
「底辺種族のくせにシャーロット様になんてことをしたんだ!」
「愛しのサテラ様があんな底辺種族に!許さない許さないぞ底辺種族!」
聖也もいつかは「ママは?」と聞かれる時が来ると予想していたがまさかこんなところで言われてしまうとは思わなかった。
さっきまで噂だったことが一気に信憑性を増してどんどん広まっていく、ママと言われた二人は顔を赤くして一生懸命否定をしていた。
「違う違う!誰がこんな奴の子供なんて作るもんですか!今のは子供の間違えだから!」
「わわわ私なんかが黒鉄君の子供なんか無理ですから、どうか間違ったことだけは言わないでください!」
この場で聖也がいくら反論しようと逆に油をまいてしまうので、聖也は幸雨を連れてその場から逃げるのであった。
学園から抜け出した聖也は、ひとまず今日の予定を変更して、そのまま家に帰ることにした。
いつもより速足で家に帰ってきた聖也は幸雨を床に下して自分も床に座った。
「パパ疲れたの?」
下からそんな心配そうな顔で見られたら疲れてるとも言えず、聖也は右手を幸雨の頭の上にのせて力強くなでた。
「俺がそうそう疲れたりなんてするもんか、それより幸雨、今日はよく頑張ったな約束どおり何かプレゼントをしてやる、何か欲しいものはあるか?」
「ん~とね~・・・・」
幸雨はかわいらしく顎を右手にのせて、右手の肘を左手にのせて悩んだ。そのまま二十秒ほどで幸雨はポンッと思いついて聖也に言った。
「ママが欲しい!」
「なっ・・・・」
まさかのここでもこの話題が出るとは考えておらず、珍しく動揺していると、幸雨が聖也の顔を見て目をキラキラさせていた。
「わかった、パパに任せておけ!」
「やったー!ありがとうパパ大好き!」
幸雨はぴょんぴょんと跳ねながら幸雨に抱き着いた、あんなにキラキラした目を向けられたら断るのは不可能だろう、もしも無理なんて言って幸雨が傷ついたらそれこそ聖也は絶対に嫌だ。
幸雨はもう十分すぎる痛み悲しみを体験した、だから聖也はもう幸雨には痛い思いも悲しい思いも絶対にさせないと心の中で誓った。
「ただし、少し時間がかかるから少し待っててくれるか?」
「うん!幸雨いい子にしてる!」
幸雨はいい返事をしてお腹からも返事が聞こえたので聖也は台所に行き料理を作り、作った料理を幸雨が一瞬で食べて、お腹がいっぱいなったのか幸雨がうとうとしだしたので寝室まで運びベットに寝かせた。
そして幸雨を寝かせた後聖也は今日特訓できなかった分を取り返すために幸雨を起こさないように筋トレを始めた。
いつもよりも回数を三倍に増やして、自分を追い込んだ、そして一通り終わったので冷蔵庫から飲み物を出して、タオルで汗を拭いて休憩していると、久しぶりに右手の甲の部分が光って紋章が浮かびあがった。
「これまた随分と久しぶりだなギゼル」
「ふむ、そうであるな主よ」
ギゼルはディザストレックスを倒した後
「それにしても一体何だったんだ?」
「見た限りでは何も言えないが、少し調べてみるか?」
「そんなことできるのか?」
「主が調べてほしいと言えば我は調べるが?」
「そうか、なら調べてくれ」
「わかった、我はこれから調べるから少しの間我は来れないからな」
「了解、それじゃあよろしくな」
これがギゼルと話した最後の会話だ。
「それで何かわかったのか?」
「すまない主、大した情報をつかむことができなかった」
「そうか・・・なら、お前が入手できた情報を聞かせてくれ」
「わかった、我が調べて入手した情報は二つだ、一つ目はやはりあのモンスターは何者かによって悪魔の力を与えられていた、二つ目はそうやって悪魔の力を与えることができる者は悪魔の中でも上位に入る強さを持ったものと、主のように悪魔と契約を結んだものだ」
「・・・・」
ギゼルが言ったことを一つ一つ冷静に整理して、整えた。
「なるほどな、お前の話を聞くと俺もできるみたいだが?」
「できるにはできるが、相手に力を与えるということはそれなりの儀式をし、儀式に必要な魔力も自分が負担して、何より悪魔と契約を結んだものは、お互いの気持ちが一緒でなければいけない」
「・・・そうか、ありがとなギゼル」
「いえ、こちらこそ情報が少なくてすまない、ところで主よ我がいない間にいろいろと変化があったようだが」
そうギゼルが話を変えると、聖也は今までのことをギゼルに話した、聖雨との出会い、生徒会戦に出ること、今日の聖雨の有志・・・。
聖也が気づくと時計の針がかなり進んでいた。
「・・・いつの間にかこんな時間に」
「はっはっは!主よ、そんなに楽しそうに話す主は初めてみたぞ」
「そんなに楽しそうだったか・・・、まあいい、俺は生徒会戦に優勝しなくちゃいけないから、大会の時はよろしくなギゼル」
「わかった、それでは主、何かあったら呼んでくれ」
そう言って紋章が消えて光がなくなった。
そして時計はもう十二時を回っていて、そろそろ寝ないと明日の学園に支障が出るので寝室に行き幸雨の隣に横になり眠りについた。




