親子
聖也はいつも時間に起きた、いつもなら着替えて訓練をしに行くのだが人生で初めて聖也は訓練をしなかった。
聖也はいつもは自分のベットで寝ていたが今日は床で寝ていた。
床に手をついて体を起こしベットで寝ている女の子を見る。
聖也が女の子を見ていると、女の子の目が少し動いた。
「んっ、ん~」
「よう、起きたか、体の調子はどうだ?」
「ひっ!、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
女の子は聖也を見てすぐに布団の中に体を隠して謝りだした。
「落ち着け俺は何もしない」
「・・・・本当?」
「ああ本当だ、俺はお前を助けたんだ」
「たす・・けた?」
「ああ、お前が逃げていた奴らを追っ払って俺の家まで連れてきた」
女の子の顔は驚きが半分疑いが半分といった顔をしていた。
「まあ、信じられないのはわかる、ひとまず飯でも食え、お腹空いてるんだろ?」
「空いてない・・・」
女の子はすぐに反論したが体の方は正直なもので「ぐぅ~」とかわいらしい音を立てた。
「ごめんなさい、本当に空いてないから、痛くしないでお願いします」
「だから何もしないって、ちょっと待ってろすぐに持ってくるから」
そう言って聖也はキッチンに向かい朝食の準備を始めた。
女の子は布団に隠れておびえながらも、布団の外からの匂いに口の中の涎が止まらなかった。
「ほらできたぞ」
そうして聖也が持ってきたのは、簡単なスープだった、女の子は匂いにつられて布団から頭を出してスープの入った皿を見ながら涎を垂らしていた。
「ほら我慢すんな、食べろ」
「・・・いいの?」
「なんだいらないのか?それじゃあ俺がいただきま...」
「ダメ!」
そういって聖也がスープを食べるふりをしたら女の子はものすごい勢いで布団から飛び出した。
「わかったよほら」
聖也はスープとスプーンを女の子に渡した。
「・・・!おいしい・・・おいしいおいしいおいしい」
女の子は一口スープを食べ始めるとこれまたものすごい勢いで食べ続けた。
女の子の瞳に光が戻ったの見て聖也は安心した。
「それでお前名前は?」
「名前?」
女の子は口を汚して食べ続けていた手を止めてきょとんとしていた。
「ああそうだ、名前あるだろ?パパとママからもらった大切な名前が」
「パパとママ?名前?」
「・・・・・」
聖也は女の子の話を聞いてすべてわかった、この女の子は捨て子なのだとそしてその捨て子を拾ったのが運悪く奴隷商人だったのだろう・・・、まだこんなに小さいのこんなに苦しい思いをして今までどんな思いで生きてきたのか、聖也はきつく握り閉めた手から血が出ていることに気づき力を抜いた。
「お前は今日から俺のものだ、俺がお前に名前を付けてやるそして今日からお前の家族は俺だ」
「家族?」
「そうだ一緒に暮らしてご飯食べて寝て笑って悲しんで支えあっていく、俺らは家族だ、そして親である俺には子であるお前に名前を付ける権利がある」
「名前・・・」
「そうだなお前と出会ったのが雨だったから・・・、幸雨ってのはどうだ?」
「幸雨・・・幸雨幸雨!すごくいい幸雨」
女の子改め幸雨は子供らしい無邪気な笑顔、聖也と会って初めて見せた笑顔だった。
「そうかそれはよかった、そしてお前の親になる俺の名前は黒鉄聖也だ、よろしくな幸雨」
「うん!パパ」
「・・・気のせいかパパと聞こえたんだが」
「うん今日から幸雨のパパはパパなの」
「・・・パパってやめないか、せめてお兄ちゃんにしてくれ」
「いや~、パパなの・・・もしかしてパパはパパが嫌なの?」
そんな幸雨が涙でウルウルとした目で見上てしまったら、この世の誰もが何も言えなくなるくらいものすごい破壊力だった、聖也は子供の恐ろしさをその身で体験するのだった。
「ピーンポーン」
家の呼び鈴が鳴って聖也はこんな朝に誰だと思い、ドアを開けた。
「ちょっと聖也訓練休んでどうかしたの!?」
「黒鉄君大丈夫ですか!」
ドアの前にいたのはシャーロットとサテラはだった、二人ともものすごい心配そうな顔をして聖也を見た。
「ああ大丈夫だから心配するな」
「心配するわよ、訓練を一度も休んだことがないって言ってたあんたがいきなり休んだのよ」
「俺だって休んだのは初めてだ、だけどどうしても外せない用事があったんだ」
「あの~黒鉄君もしかしてその用事って、子供って関係します?」
「...なんでそう思った?」
「だって黒鉄君の足に小さな女の子がいるんですもの」
「えっ・・・」
聖也が自分の足元を見ると幸雨が聖也のズボンをぎゅっと抱きしめていた。
「ねえねえパパ、この人たち誰?」
「パパですって!?・・・聖也あんたって人は」
「黒鉄君そんな性癖を持っていたんですね・・・」
「幸雨少し口を閉じろ、そしてそこの二人そんな目で俺を見るな!」
聖也は何があったかを二人に伝えて誤解を解いた。
「な~んだせっかく聖也の弱みを握れたと思ったのに」
「お前に弱みを握られるほど俺はバカじゃないからな」
「幸雨ちゃんって名前いいですね」
「そうだろ、俺もかなり自信があるんだ」
「ところで聖也、今日の学園どうするのよその子、まさか家に留守番させる気じゃないんでしょうね?」
「まさか、万が一また奴隷商人が来たら困るから学園に連れて行く」
「「えー!」」
シャーロットとサテラの声はよく通っていた。
「お前らうるさいぞ、近所迷惑だ」
「ごめんなさい黒鉄君、でも学園に幸雨ちゃんを連れて行くのはだめだと思います!」
「大丈夫だ、俺からしっかりと校長に事情を説明する」
「それでも通じなかったらどうするのよ?」
「その時は無理やりにでも幸雨を学園に連れてくる」
「「・・・・」」
シャーロットとサテラは言葉が出なかった、まさか子供を学園に連れてきてしかも校長に直々にお願いして、それでもだめだったら無視して連れてくる、そんなことは普通は考えないのだが聖也の顔はものすごく真剣で嘘ではないことがわかる。
なのでシャーロットとサテラはこれ以上聖也を説得しても考えを改めさせることはできないと思いこれ以上言うのはやめた。
「それじゃあそろそろ行くか、おいで幸雨」
聖也が腕を広げるとそこに聖雨は飛びついた。
「よしよし、行くぞお前ら」
「ちょっ待ちなさいよ」
「黒鉄君待ってく下さい」
時間がちょうどいい頃になったので聖也は登校して、その途中では美女である二人を連れてしかも子供も抱きかかえていてかなりの人が聖也を見ていた、聖也は何も憶することもなく堂々と登校するのだった。
いつもより距離が長く感じたが無事学園についた。
「ふ~なんとかついたな」
聖也は学園の中でもものすごい視線を向けられたが、それも無視して校長室にまっすぐ向かった。
学園の中で一番大きく重たいドアを「コンコン」っとノックをして片手で軽々と開けた。
「失礼するぞ」
「これはこれは黒鉄聖也ではありませんか、どうしたんですか?」
聖也は敬語を使うそぶりを見せず、堂々と入った。
「校長、折り入ってお願いがあるんだが」
「ストップそれ以上は何も言わないでください、その子供を抱えているから察するにその子供を学園に置きたいと、そういうことでしょうか?」
言おうとしたことを当てられて、どうして当てられてたのだろうと疑問に思ったが、ひとまずさきまわしにした。
「そうだ話が早くて助かる、頼む」
「パパ何お願いしてるの?」
聖也は少しだけ頭を下げて校長にお願いをして腕の中にいる幸雨は疑問な顔で聖也を見た。
「無理です」
「・・・なんでだよ」
「校則にないからです」
「そんなのあんたの権限で作れよ」
「無理ですたとえ私が校長で会っても長くから伝わる校則を変えることはできません」
「そうか、ならいい失礼したな」
そう言って聖也がドアに手をかけた瞬間。
「待ちなさい、まだ話は終わっていません」
「・・・これ以上何言うんだ?」
「あなたは私が言ってもその子を連れて来るつもりでしょう?」
「そのつもりだ」
「そうなればあなたは校則違反となって退学にしなければなりません、それはあなたにとっても私にとっても良くありません」
「ならどうする?」
「あなたが変えればいい」
「はぁ?」
聖也は校長が言ってることがわからず首を傾げた、そして聖也が首をかしげると幸雨も真似をして首をかしげる。
「おっと私としたことが説明不足でしたね、正確にはあなたが叶えるのほうが正しいですね、この戦いに優勝して」
校長はそう言って聖也に生徒会戦のポスターを見せてきた。
「なるほどなこれに優勝をすれば願いを一つ叶えられる、幸雨を学園に連れて来ることができるな」
「それにプラスして大会が終わるまでその子を学園に連れて来ることを許します」
「おいさっきは校則がとか言ってただろ」
「はいしかし今回は違います、もしもあなたが生徒会戦で優勝できなかったら・・・あなたは私の学園で永遠に奴隷として働いてもらいます、もちろんその子供も一緒です。」
「・・・それはそれはいい条件で、・・・いいぜ優勝してやる」
その時見せた聖也の笑みは獲物を狩る時の肉食動物のような顔をしていた。
「それじゃあな、今度こそ失礼したな」
「いいんですよ、おかげで今年の生徒会戦は面白くなりそうです」
入る時よりも勢いよくドアを開けて校長室を出るのだった。




