リリカ編その2
「まず簡単な方法として一時的にお金を稼ぐのであればスキルを売ることをオススメ致します。今回の中で強奪は人気商品であり、貴重なので高値で買取をさせていただきます。」
それは言われると思っていた。
「強奪単独での値段は500万Eですね。」
1万Eで一人前とするならその500倍。
「そんなに貰えるのですか?」
驚きながらも聞き返すと
「大丈夫ですよ。こちらにも利益が出る計算はしてますから。それよりも貴方の価値がこのスキルが持っていると把握されると奴隷にさせて盗賊の仲間にさせられる可能性が出るので、売却しない場合は、気をつけた方が良いですね。」
先ほど言っていたスキルを教えてないのかを尋ねたのはそのためなのか。
「ちなみに他を売却してくださるのであれば、諸刃の剣は100万E、打たれ強さは200万Eとなります。全部であれば800万Eと☆3以下のスキルをいくつかおつけします。」
800万E。このお金があれば毎月2万の収入であれば1年は10月なので20万。40年はこの収入を得ることが出来るので、その間に他の仕事をするだけで十分な生活をすることが出来る。
「ちなみにドワーフ族 は手先が器用なので☆3までのスキルでは、鍛治☆3 スロット1レベル1、細工☆2スロット1レベル1、火魔法☆1スロット1レベル1、採掘☆1スロット1レベル1はおつけしますよ。あくまで種族の利点を選ぶのであればですが・・・」
これは好待遇では無いだろうか。ドワーフ族として工場に雇って貰えるのはスキルがあればさほど難しくは無い。スキルを開眼するまで通い詰めてからでは無いと仕事にならないからである。スキルを持っていれば、雇ってくれる可能性も高い。
「他にオススメな案はありますか?」
そう尋ねると・・・
「強奪のスキルは手放す前提で話させていただきます。10歳で所持されているには危険が伴い過ぎるので。強奪を売却してくださることでお渡しできるスキルがあります。《分裂》と言うスキルをご存知ですか?」
聞きなれないスキルの名前に首を即座に横に振る。
「《分裂》は☆7、スロット2。能力は自身のステータスを減らす事で自身の分身を作り出すというものです。このスキルが不人気なのは、分身も含めて力が弱るという点です。人が増えれば力が増えるのではなく、力の総量は変わらないのです。そこで諸刃の剣と言うスキルが役立ってきます。分裂はステータスの最大値が変動するのではなく、ステータスの値が減少するのです。つまり、諸刃の剣の範囲になればなるほど力が増大すると言うことです。更に打たれ強さによりダメージを負ってもそれ程影響を受けないと言う利点があります。このプランではあなた自身が成長する事で強くなる事も出来ます。ただし、直ぐに得られる収益はありません。」
すごく魅力的な話に聞こえたが、先ほどの値段を得る権利を放棄する怖さを感じてわからなくなってしまった。
頭を抱えて悩んでいると・・・・
「当店は買取も実施しています。先ほど提示した額は今の値段ですので増減の可能性はありますが、貴重なスキルなので相応な値段で買取をさせていただきます。また、2番目のプランだとこちらの方が少しばかり得をする為、《家政婦》☆3スロット1Level1と《分裂》の活かし方などのアフターケアまでやらさせていただきます。いかがでしょうか。」
少しの沈黙も許さず
「2番目のプランでお願いします。」
直ぐに返事をしてしまったのであった。
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あれから数日後。
「ありがとうございます。」
そう言い残しお辞儀して帰っていったのである。
こうして3年後、他の所よりも素早く仕事を終える《神速の家政婦さん》として有名になり、お母さんよりも稼ぐ事になる事は誰も知らないでいた。
「お母さん、ただいまー。」
「おかえりー。」
「お母さん、ただいまー。」
「おかえりー。」
「お母さん、ただいまー。」
「おかえりー。」
・・・「何度も言わなくても・・・うちの子が3人。」
ズドーン。
「おかーさん大丈夫?」
「疲れているのかしら。幻覚がするみたい」
バタン。
「おかーさーん」