第91話 モノマ村24
「······ぅうっ、ここは」
俺が目を覚ますと聖騎士にテイクアウトされていた。全速力で走っている。周りを見るとジゼルやスー、そして俺と同じく聖騎士に担がれたアイナもいる。
虚脱感や、空腹感は無い。俺は現在の具材を確認する。殺人蜂の毒針に、不滅龍の羊羹皮か、ちゃんと回収してくれたようだ。
体の傷は······治っているな。羊羹皮の厚みが僅かに薄くなっている。薬草でなくとも魔力を吸収して修復してくれるのか? それとも羊羹皮だからか? まぁいいさ。そう思っていると隣を走るジゼルが俺に近寄る。
「バーガー起きた?」
「ああ、今の状態は?」
「最悪には程遠いい。透明龍から逃走中、エリノアがあの場に残って抑えている」
「そうか、早く戻らないとな、アイナは?」
「治癒魔法を掛けた。命に別状はない」
「よかった、モーちゃんは?」
「見つかってない」
「······そうか」
モーちゃんは透明龍に吹き飛ばされて瓦礫の下敷きになっているのか、それとも逃げてしまったのだろうか。
エリノアは強い、小龍を単騎で屠れる人物を俺はエリノア以外知らない。だが透明龍の方が同じSランクとはいっても格上らしい。一刻も早くあの場に戻らなければならないな。
「聖騎士さん。下ろしてくれ」
「はっ! よろしいのですか?」
「構わん、俺は戻ってエリノアを援護する」
「それは愚策。敵は透明龍だけじゃない」
眼前に現れたのは魔物の群れ。巨大蝙蝠が、巨大蛇を掴んで空を飛んでいる。魔物同士で協力プレイだと。けしからん。
「『毒針』」
バンズの隙間から細剣ほどの太い針が突き出る。危うく俺を抱えている聖騎士に当たりかけた、あぶねぇ。ん? 俺は直感的にこの魔法を理解する。この針は出し入れできるのか。俺は針を収納する。この体に収まる長さでは無いのだが、何故か収まる。出す瞬間に魔力生成しているのだろう。
さらには長さや太さも思いのままだ。最大で大根程度の太さになるし、長さも2mほど伸びる。Aクラスの魔物の素材は優秀なものばかりだな。
「おい、俺を投げろ!」
「は、はい、どちらに?」
「敵に向かってだ!」
「ええ······」
「早くしろ!」
「は、はっ!」
さすが聖騎士、なかなかの剛腕だ。俺は空を飛ぶ敵の群れの中心部まで飛ぶと、ランダムに回転しながら毒針を素早く出し入れする。魔力を込め最大の太さと長さでだ。
巨大蝙蝠と巨大蛇のペアを6組を串刺しにしてから自由落下する。聖騎士が走って俺をキャッチする。
少し間を置いて、刺された魔物たちに毒が周り血を吐いて落下する。針の先から毒液が滴っているのだ。
「さすがは勇者様だ、魔物の群れを一蹴なさるとは」
「ふん、こんなもので勇者を止められるものか」
「バーガー、調子に乗らない。次が来る」
次は泥人間の群れだ。物理に強いんだよな。
「私がやる。ヘイ! メーン」
ジゼルが泥人間たちを指さすと、どういうわけか、泥人間たちの視線がジゼルに集まる。
「俺が放つ魔法の氷花、ドブ川の泥の体で評価」
ジゼルの歌詞魔法を受けて泥人間の動きが油をさしていないブリキの人形のように鈍くなる。
泥人間の体のあちこちから氷の花が咲く。すると泥の体が凍りついて最後は動かなくなった。
「相手の水分を奪って咲く氷花を全体魔法にした」
「さ、さすが勇者パーティです!」
俺たちは疾走した。




