第82話 モノマ村16
5日後、魔物村に到着した。丘を超えればすぐに魔物村だ。
俺たちはそこに前線基地を築いた。前線基地といってもちょっとした塹壕と50張りのテントといった簡素なものだ。そのテントも怪我人を寝かせたり、戦いが長期化しない限りは使われることはほとんど無いだろう。兵糧もテントの中だ。
時刻は昼、前にここに来た時は雨だったが、今はすっかり晴れている。絶好の戦争日和だ。
俺と、俺を持つアイナ、そしてジゼルとキッドが丘の上から、双眼鏡で魔物村を眺める。魔物に見つからないように木の陰に隠れて様子を窺う。
「また人に化けてる」
ジゼルが双眼鏡から目を離し入口付近を指さす。番兵が村の入口前に2人立っている。どう見ても人間だが、この間もいた奴なので魔物確定だ。それを見たキッドが驚きの声をあげる。
「ありゃ人にしか見えませんな」
「戦いになれば動きでわかる。激しい動きをすれば幻影が解ける。騙せないと理解すれば向こうから解いてくる。それより準備はオーケー?」
「もう少しです、みんないいカラーリングになってきましたよ」
俺はアイナの肩に移動してテントの方を見る。村人たちが赤い絵の具を塗っている。顔や腕、服の上から、剣に至るまで、せっせと塗りたくっている。(燃え盛る真っ赤な炎たちはそもそも赤い装備だ)それを見たアイナが感心したように言った。
「色で味方を見分けるわけですね」
「ああ、乱戦になった時や、裏取りをされそうな時、すぐに気づいて対処できるからな」
そう話していると、テントの方から聖騎士が走り寄ってきた。
「隊長、準備が整いました。いつでもいけます」
「はいよ、じゃあ勇者様、命令を」
「みんな行くぞ、皆殺しだ」
晴天の昼下がり、真っ赤に染まった1000に近い人間が、魔物村前に並んだ。門兵もそれに気づき、村の中に入っていった。これだけの兵だ、それに即席でもある。気づかれないように行動などできるわけがない。ならば最初から堂々と兵士たちの士気を下げないように正面から勇ましく攻め入るのだ。
並びは先頭がエリノア。その後ろに馬に乗った燃え盛る真っ赤な炎部隊(エリノア以外の勇者パーティは馬に乗せてもらっている)。その後に村人たちだ。
ちなみに、スーはテントで待機させている。
装備はエリノアがいつもの片手剣と先日買った肩掛けベルトに装着するタイプの投げナイフ。それとジゼルからもらった巻物が6本。
アイナは弓と細剣、兵士や村人たちも矢筒を持っていくので、そう簡単には矢が切れるということはないだろう。そしてジゼルから、とある1本の矢をもらっている。あとの楽しみだ。
ジゼルはいつも通りマイク状の杖のみだ。
燃え盛る真っ赤な炎部隊は馬に乗って攻める時は槍を使い、近接になれば腰に差してある剣を使う。馬に乗っている時のアドバンテージをどれだけ活かせるかがこの戦いの鍵だろう。そしてその通常装備とは別にジゼルから巻物を2巻ずつ渡されている。200巻近いもの巻物を書き上げたジゼルは紛れもない巻物職人だ。
そして気になる巻物の中身は中位治癒だ。魔法使いでもない者が上位治癒を使うと魔力切れを起こす可能性があるため、中位の治癒魔法を量産したとのことだ。村人に渡さないのは、初めての戦いで使う余裕がないだろうという考えと、魔力の少なさからだ。剣で斬る、棒で叩くといった単純な指示の方が向こうも助かるだろう。
村人たちの装備は9割が剣で残りは剣がなかったので、桑や鉈で武装してもらっている。そういう村人は一番安全な最後尾に配置している。
そして俺の今日のメニューは、
鋼鉄陸亀の甲羅の破片。
殺人蜂の毒針。
鏡鳥の鏡羽。
薬草3枚に、パテ。
そして不滅龍の羊羹皮に、マントと短剣だ。
使える魔法は
鋼鉄の体1回。
毒針1回。
鏡の盾1回。
治癒3回。
蘇生、
擬人化、
魂の実体化、
幽霊の吐息、
このどれか1つを1回使える。
それでは出撃しよう。なぁに死んだら女神のところに行くだけさ。




