第75話 モノマ村9
ジンニン村に着いてから一週間が経過した。4つの村にそれぞれ伝令を送ったので、援軍を連れて戻ってくるまでには、まだ時間がかかる事だろう。
俺はジゼルと宿屋の一室にいる。
各自戦闘への準備を続けている中、俺は具材を挟むだけで準備が終わるので皆の様子を見て回ったり、伝言を伝えたりと雑用係をこなしている。勇者ってのは雑用係のようなものだな。
ジゼルは村についた翌日には回復しており、部屋にこもり巻物を量産している。自前の紙はすぐに底をつき、今は村からもらった紙に魔法陣を書き綴っている。
「紙は専用のものでなくていいのか?」
「いい。前にも砦の屋上や、宿屋の床にも書いた、問題は紙でなく筆の方」
筆ね、筆とはいっても、床に書く時は青いチョークのようなもので書いていたな。今はそのチョークを砕いて水に溶かして墨汁のように使っている。あの青いチョークが重要なのだろう。
「その青いのは何なんだ?」
「魔鉱石を砕いて再度固めたもの、魔鉱石は魔力の伝導率が高く、魔鉱石自体も魔力を宿している。魔法陣を書くには必須のアイテム」
「魔鉱石ってどこでも手に入るのか?」
「魔法陣に使えるような良質な魔鉱石は魔力濃度が異常に高い場所でしか取れない。相場はまちまち、高価なのはどこも同じ」
誰でも魔法陣がほいほい書けないのはそこに原因があるのかな。金銭面的なことがまずあがるのか、それでも金のある奴ならやるだろう。
「魔導師しか書けないのはなんでだ? 写せばいいんじゃないのか?」
「写すそうとすると魔法陣が消える魔法が仕掛けてある」
「模写もダメなのか?」
「ダメ。呪いを得意とするダークエルフの王国魔導師が開発した呪い。驚くことに概念にまで作用しているといわれている。模写しようとしても、思って実行した段階で呪いの魔法陣が発動する」
ダークエルフか、呪いが得意な排他的な種族だったな。
「ダークエルフは排他的な種族で人間の文化なんか嫌いなんだろ? その魔導師は、なぜ王国魔道士なんかをやってるんだ?」
「奴は変わり者。人間社会に上手く順応している」
社交的な変わり者なんて面白い話だな。俺は生前、ダークエルフだったのかもしれない。まぁ、ネット文化にどっぷりだったわけだが。呪いみたいなもんだろ、あれは。
そういや、エリノアはそんな大事な魔法陣をグッドプライスで売ってましたよねぇ······。
「なあ、エリノアって魔法陣売りさばいてたよな」
「魔導師が作って売るのは自由、私が許可したから大丈夫」
よかった、勇者パーティに犯罪者はいませんでした!
と、話し込んでしまったな。
「んじゃ、俺は他の連中の様子を見てくる。なんか伝言あるか?」
「ある。エリノアを呼んで、そろそろ抱きたいって」
「だ、抱くッ?!」
おいおいおい、死んだわ俺。ここにキマシタワーをおっ立てようぜ兄弟。
「違う、抱き枕にちょうどいい」
え、それで否定してるつもりかな? むしろ堂々としてて男らしい。わかったよ、おじさん黙って伝言役を買いますよ。伝言だから黙れないけどな!
「任せておけ、勇者であるこの俺がエリノアを包装してお届けするぜ」
「そうだ、バーガー」
「なんだ?」
「また魔法陣を見せて欲しい、まだ5分の1も写せてない」
「行ってきマース」
「あ、待て」




