第7話 3Dメガネ
「なんじゃー、ビックリしたのぉ」
「······女神!?」
気がつけば俺は白い空間にいた。
女神は社長椅子に座って、ポップコーンバケットを片手にマ〇リックスを観ていた。3Dメガネをかけて。
「それは3D対応してないぞ」
「え、マジか、ホントじゃ! なんじゃこれ! 新種の神器というから付けとったが、とんだ粗悪品じゃ!」
女神が指を鳴らすと3Dメガネが消えた、そしてリモコンを操作してビデオを止めようとするも苦戦している。
「貸してみろ」
「ありがとう、最近のはボタンが多くてのぉ」
俺は一時停止ボタンを押してやった。って、俺の肉体が戻っている! いや霊体だったか、でも感覚はある、紛れもない俺の肉体だ。久しいなぁ、我が筋肉たちよ!
「そのむさ苦しいサイドチェストをやめるのじゃ」
「むさく······あ、ああ。そうだ、なんで俺はここに来たんだ? まさか元の世界に戻してくれるのか?」
「阿呆か、余が易々と戻すわけがないじゃろう」
「じゃあなんでだ?」
「そう急くな、ちょっと待っておれ、いま録画確認するから」
「見てなかったのかよ!」
「マ〇リックスを勧められての、なんじゃその顔は、ちょっとだけ目を離していただけじゃぞ!」
たしかに面白いけどさ、俺は君の道楽で道化······、否、ハンバーガーやってるんだけど······。できれば俺も元の肉体で銃弾を海老反りでかわしたいんだけど。
女神視聴中。
「ははーん、なるほどのぉ、男の人来なかったのぉ、ぷぷぷ」
「お前も同じ状況になったら絶対男の人呼ぶからね」
「あー、まぁ、死んだな、こりゃあ」
「え、死んだの? ていうかハンバーガーって死ぬのかよ」
「死ぬぞ。バンズに魔法陣が刻まれておったのは貴様も知っているじゃろう? あれで貴様の魂を縛り付けておるわけじゃ。魔法陣が全て消えれば貴様は死ぬ」
異世界転生1年目で、赤ちゃんに食われて終わりかよ。
「残念じゃったな。まぁ、1年近くジジイと話しとるだけじゃったし、つまらなかったということで。打ち切りとしては丁度いいタイミングじゃろうて」
「待てよ、俺、消えるのか?」
「うん、そうじゃよ」
そうじゃよ、って何しれっとした顔でとんでもないこと言ってるんだ! くそぅ、神ってのはこうも無慈悲なのか。
「んん? 待つのじゃ、諦めるのはまだ早いみたいじゃぞ」
「どういう事だ」
「貴様はまだ生きておる」
「何!」
俺は光に包まれて消えた。