表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/1165

第6話 捕食者



 生後一年が経過した。知的生命体であることがバレた俺は、旅の魔法使いルフレオから英才教育を受けていた。ルフレオは産婆と一緒に俺を解体して魔法陣を発見した人だ。


「まるでスポンジのように知識を吸収しよるな」


 いや、スポンジというかパンなんだけどね。ルフレオは白い髭を生やしたいかにも魔法使いですって顔したジィさんだ。そんな人が俺をスポンジというのだから俺はスポンジかもしれない。ならば俺は名前をボブに改名せねばならないだろう。


「だが、魔術適性はからっきしじゃな。その体では剣を持つことができぬゆえ、魔術をと思ったが、それも難しいようじゃ」

「ええ、人生バーガーモードですから」

「なんともうした? バ?」

「いえ、独り言です」


 女神は俺の体を弱く作った、だからそれくらいは覚悟している。だが、なぜか俺の魂には手を出さなかった。あの黄金の肉体を作ったのは他ならぬ俺のこの魂だというのに。貧弱な魂で15年という月日をこもりきれるわけがないだろう。


「魔力を作る細胞がないのかもしれぬ、もとより、その肉体は食物、食物が新たに魔力を作り出すことなど不可能ということじゃな」

「では、俺は自己鍛錬の時間ですので」

「うむ、その姿勢まさに勇者、励みなされ」


 俺は家の周り程度なら這って動き回れるようになった。この一年でハンバーガーの体も実に馴染んできた。さて家を一周して、セニャンに薬草を取り替えてもらおう。動き回ると薬草が萎びるのが早まるのだ。


「あうー」


 え? 何あれ、やだ、赤ちゃん? 隣りの家から現れた赤ちゃんがこちらに向かって歩いてきた。問題は赤ちゃんが1人だということだ、あの家ではまだ1人で行動させていないはずだが。


 となると脱走か。歩くことを覚え、好奇心の化身となったか。どうする、こっちに来るぞ。俺の声では人を呼ぶには心細いが。


「まんまー」

「まんま? 俺はママじゃないよ、ほらお家帰りなさい」


 赤ちゃんは、おぼつかない足取りで、俺の前にたどり着いた。こちらをじっと見つめている。デカい。二足歩行の生物は頭の位置が高いなぁ、見上げるのが疲れる。などと呑気にしていた俺は、この直後、激しく後悔することになる。


「まんまー、あむっ」

「え? ちょっ、持たないで、やだっ! やめて!」


 俺は赤ちゃんに持ち上げられ齧られた。激痛が体を駆け抜ける。あ、ハンバーガーにも痛覚ってあるんだッイテテテッ!!


「だっ誰かーッ!! 男の人呼んでーっ!!」


 ハンバーガーが三分の一ほど赤ちゃんの胃袋に収まったところで俺の意識は途絶えた。




挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ