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第3話 転生バーガー

一日一話投稿して一日二話書いてます。



 王国から最も離れた位置に存在するタスレ村。

 普段は平凡な村だが、今日に限っては村人たちは賑わいを見せていた。なんと言っても今日は奇跡の日。占いでは本日この村から勇者が誕生すると言われているのだ。


 ちょうど出産予定の夫妻が二組いる。片方はエルフ族なので、もう片方の人族から勇者が産まれると皆、沸き立っているのだ。


「ばぁーがぁーばぁーがぁー」


 分娩室に産声が響き渡る、出産に成功したのだ。産婆が産まれたばかりの赤子を抱き上げて布で包む。そばに立っていた赤子の父親が駆け寄る。


「どうや!?」

「······」

「バァさんどないしたんや! そない梅干しのバケモンみたいな顔しおって!」


 産婆の表情は暗い、父親が布をめくる。赤子を見た父親は口元を手で覆う、だがショックは隠せていない。赤子の母親が二人の様子に気づき声をかけた。


「ど、どないしたん? まさか死んで······」


 否、鳴き声がする。死んでいるわけではないとすぐに気づいたようだ。


「いえ、元気な子です」

「そうか、一安心やな、勇者だから男の子やな?」

「え、うーん、これは」

「なんや、女の子なんか?」


 産婆は困り果てた顔をしている。熟練の産婆が困るほどの事態が起きているのだ。しかし、産婆も覚悟を決めたのか重い口を開いた。


「元気なハンバーガーです」

「なんやて!?」


 村に激震が走った。勇者が産まれる日にハンバーガーが産まれたのだ、そのニュースは瞬く間に村に広がった。


「50gの子で、性別は不明です。最初はふやけていましたが自然乾燥で乾きました。具材は小さな生肉と申し訳程度の葉っぱです。今はそのまま籠に入れてます。はい、生きてます」


 産婆が兵士に説明をしている、王国も勇者の誕生を楽しみにしていたのだ。話を一通り聞いた兵士は、その足で王国まで戻り事の経緯を報告することだろう。


「よぉ見たらお目目あるわ」

「最初は驚いたけど可愛いもんやな」


 若き夫婦は籠を覗き込んで一口サイズのハンバーガーを見つめている。


「どっちに似たんや? まさかハンバーガーと浮気したなんてことあらへんよな?」

「あたしが愛してんのはアンタだけやで」

「ふへへ、ワイもや」


 俺はどうなったんだ、転生させられたのか? なんだこの人たちデケェ、巨人か? いや、転生ということは俺は今赤ちゃんなのか、なるほど俺のほうが小さいわけか。


 むぅ、体が動かない、全身の感覚がおかしい、ホラゲのような操作性の悪さというか。力もまともに入らないぞ。


「お、蠢いてるわ、可愛えなぁ」

「ワイが考えてた名前、この子みたら全部吹っ飛んでもうたわ」

「あたしもや。気取った名前、絶対似合わへんやろなぁ」


 どんだけだよ、産まれたての赤ちゃんは猿みたいな顔してるって言うけどさ。いずれはアンタらみたいな顔になるんだぞ! ってあんたら美形だな、じゃあ俺もイケメンに? 人生イージーモードか!?


「バーガーなんてどうや? 安直やけど、ワイはそれしか思いつかへんわ」

「ええと思うで。ハンバーガーを産める人なんて他を探してもこのあたしし以外おらへんやろ」


 奥さん、今なんて言いました? ハンバーガー?

 俺が自分の姿を確認できたのは数日後であった。



挿絵(By みてみん)


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