第28話 お金の話
数日後、俺たちは村に到着した。ベツキャ村と言うらしい。兵士が警備する門を潜る。村の内部はタスレ村とさほど変化はない。丸太製の柵に囲まれ、民家が転々としている。畑を耕す農夫が時折目に付く。
ベツキャ村の村長に挨拶に行って民宿を格安で紹介してもらった。
「ミーは村の連中とやることがあるから、3人はゆっくり羽を伸ばしているといいよ」
そう言うとエリノアはリュックを背負ったまま出て行ってしまった。旅においてエリノアは頼りになる、雇われているのもあるが率先して行動してくれる。楽させてもらっている。
エリノアの言葉に甘え、俺たちはくつろぐことにした。もちろんくつろぐだけではない、ジゼルに話を聞くことにした。
「ジゼル、色々聞きたいことがあるんだけど、いいかな、まずはお金のことなんだけど」
ジゼルはジト目で俺を見つめているが頷いてくれた。俺はまず金のことを聞く事にした。金銭感覚をちゃんとせねばならない。実を言うと俺はこの世界の金を見たことがないのだ。
「これがお金」
ジゼルがテーブルに置いた袋から硬貨を取り出して並べる、それを見て俺は驚愕する。
「何これ······」
「だからお金」
「いや、硬貨に掘られてる絵だよ」
「王様を見たことがないの? これは王様の肖像画、描いたのは天才芸術家のオペペ・チロローン」
いや、そういう事じゃない! なんだこの絵は、子どもが描いた絵よりひでぇ、こんなものが国の硬貨なのか!?
しかも地味に硬貨の種類ごとに絵を変えてやがる。なんだこれ金貨が満面の笑み、銀貨が真顔、銅貨が悲しい顔をしている。他にも穴の空いた鉄貨もあるが、穴を鼻の代わりにしている······。
「絵のことはいい、私に芸術のことなんてわからない」
「大体の価値を教えて欲しい」
「この鉄貨が1リリック」
「は?」
「え?」
え? じゃねぇ!
「じゃ、じゃあ、銅貨は?」
「銅貨は10リリック。銀貨は100リリックで、金貨は10000リリック」
あ、ダメだこの子、ラッパー換算しちゃう。
「ジゼル、それじゃバーガー様には伝わりませんよ。ここは私に任せてください」
「アイナ、知ってたのか」
そりゃそうだ、お小遣い貰ってたんだもんな。俺が愚かだったよ、最初からアイナに聞けばよかったんだ。
「いいですかバーガー様、まず鉄貨1枚でリンゴ一つです」
「あっ」
その日の夕方、ホクホク顔で帰ってきたエリノアに俺は尋ねる。
「え、そんにゃことも知らにゃかったのか」
「頼む、教えてくれ」
「はぁ、あの隅でうずくまってる2人はダメだったみたいだにゃ。いいか、鉄貨が1だとしたら、、銅貨は鉄貨10枚分、鉄は100枚分で、金貨だけが10000枚分だにゃ」
リンゴ一つが1鉄貨だから、うーん日本円には換算できないか。にしてもリリック安くないか······。
「王国に近ければ近いほど、物価は上がるから、こればっかりは買い物慣れするしかにゃいにゃ。というか勇者にゃんだから、そんにゃ事は気にしなくてもいい気もするけどにゃ」
「そういうわけにもいかない」
「安心してほしいにゃ。ちょろまかす奴が現れたら、ミーが腕ごと叩き落としてやる」
うん、俺、勉強するよ。今の目、マジだもん。




