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第15話 勇者初陣



 結果からいえば青猪ブルーボアの群れを全滅させることには成功した。

 しかし被害は甚大だ。幸い死者は出ていないものの、村の主力たちが軒並み怪我をしてしまったのだ。


「薬草だけじゃ足りない······」


 アイナが頭を悩ませている。備蓄してある薬草だけでは、この人数を捌ききれないのだ。


「ウィル、しっかりしぃ!」

「セニャン······ワイはもうダメみたいや······イテッ! 怪我人を殴るなやー」


 ウィルもふざけているが傷を負っている。またいつ魔物が襲ってくるかわからない以上、こうしてはいられない。でもどうすれば?


「私、上薬草を取ってきます」


 村人たちがざわめく、上薬草は南の森の奥にある。しかしそこに行くには単独では危険すぎる。装備を整えて集団で行くところなのだ。


 現在動ける戦力はというと、アイナしかいない、彼女だけが抜きん出た弓さばきで射る敵全てを一撃で仕留めたからだ。


「アイナ、ダメよ、危険すぎるわ。隣の村から薬草を分けてもらってそれで」

「隣村の方が南の森より遠いです。その間に怪我が悪化したり、魔物が現れたりしたら、私だけでは皆を守りきれない」


 アイナは母カレーナの言葉を珍しく否定した。

 アイナの視線の先には父イシルウェが横になって眠っている。彼の傷が特に酷い、魔物が襲来した時、南の森を監視する見張り台にいたのはイシルウェだったのだ。一番長く戦った彼は青猪ブルーボアの突進をまともに受けてしまった。


 村人たちの顔が暗いものとなる。怪我人のうめき声と僅かに励ます声が事の重大さを物語る。

 やれやれ、とうとう来てしまったか、ここは俺の出番だな。勇者として、否、困っているヒロインのために俺はやらねばなるまい。


「俺もついていきます」

「あんた何言ってるの、ダメに決まっとるやろ」

「女の子を一人で行かせるなんて、それはもう勇者でもなんでもないと思うんです」

「でもなぁ」

「セニャン、バーガーの好きにさせたれや」

「あんた······」

「バーガー、ワイがあの時、おろしたのはなんでだと思う?」


 おろした? 俺は少し考えてピンときた。1歳の頃だ、アイナの家に言って、俺はウィルにおろしてくださいと言った。同じ部屋に俺を食べた相手がいるにも関わらず、ウィルは渋ることなく俺を床におろしてくれた。


「なんでですか?」

「信じとるからや、息子のお前をな。現におろして正解やったろ?」


 俺とウィルのやり取りを聞いてセニャンも根負けしたのか俺をおろしてれた。俺の信じる息子を信じろ理論は強い。


「ええか、ヤバくなったらすぐ逃げるんやで、ええな?」

「はい」

「アイナちゃん、息子を頼んだで」

「はい! 私の命に変えてもお守りします!」


 俺とアイナは、村で一番速い馬を借り、母からもらったマントと父からもらった短剣を携えて、南の森に向かって出発した。


挿絵(By みてみん)

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