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圧倒的な力です

「そういえば…さっき人を殴って爆発させてましたけど…どうやってたのですか?」


「あーあれは殴った時に魔力をたくさん流し込んで暴走させたんだよ、そうすると体が多すぎる魔力に耐えられなくなって爆発するの」


アリエルとローズはグランドスラムの前に立ってのんきに話をしている…しかしそんな2人の前には200人程の武装した男達が殺気を振りまきながら戦闘準備をしているのだ。


「てめぇらか! 街で暴れ回ってる馬鹿どもはよ!」


「馬鹿? 失礼な奴らだなぁ…てかここにベータって人いる?」


アリエルが周りを見回しながらそう言うと、壁のように並んでいる人の中から見るからに野蛮そうな男が前に出てきた。


「なんだぁ、死ぬ前に俺の顔でも拝みてぇのか?」


「違う違う、お前が死ぬ前に妹がまだ元気だって教えてあげようと思ったんだよ」


ベータは一瞬目を見開き、その後こめかみに青筋を浮かべてアリエルを睨みつけた。


「てめぇか…妹を誘拐したのは」


「そうだよ、まさかお前の妹が精霊の愛し子だとは思わなかったよ」


「っ!?」


「何故わかったみたいな顔してるね? ふふっ…ちなみに分かってるのはそれだけじゃないよ? お前ら精霊の愛し子の力を使って魔王を脅そうとしてんでしょ?」


驚愕の表情を浮かべるロムルスとベータをよそに、アリエルはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、左手に持つ剣をくるくる回している。


「でもねぇ…それって無駄なんだよ、だって精霊の愛し子としての格は私の方が上だからね、精霊は言う事なんか聞かないよ、だからあなた達の計画なんかぜーんぶ無駄…だからもう死んでいいよ?」


その瞬間、アジダハーカの軍勢のど真ん中に、何の前触れも無く突如サイクロンが発生し、半数以上の構成員が逃げる間も無く巨大な風の渦に飲み込まれて空高く巻き上げられた後、そのまま超高度から地面に叩きつけられて絶命した。

それはまるで見る人の正気を奪う、人の雨が降っている異常な光景だった。

そしてそれを無表情で見ているアリエルの目は桃色に妖しく光っていた。


「おいおい、マジかよ…俺らは全員揃って悪夢でも見てんのか?」


「悪夢だろうとこれが夢ならどんなに良かったか…」


幹部2人は戦意を失った。

この化け物には勝てない、何をしたって勝てっこないと、本能が悟ってしまったのだ。

ベータの妹ソフィーも精霊の愛し子だったので精霊の力の恐ろしさは身にしみて分かっている。

しかしこの女はそういうレベルのヤバさではない。

精霊の力とかではなく、ただイカれている、自分が分析した限りでも2つの異常性が垣間見える。


自分の見える世界だけが平和なら、他にどんな絶望が降りかかってもかまわないという、異常な程の自己中心的な考え。


自分達の敵に対しては一切の容赦をせず、まるで息をするかのように人の命を奪える凶悪な暴力性。


こんなの普通じゃない。

ベータは凶人と呼ばれているが、この女の方がよっぽど凶人だと思った。


「あれ? 現実逃避し始めちゃった? まぁ…もう終わりにするから良いけどね」


そう言ってアリエルが剣を掲げると、風の壁がアジダハーカを囲み、悲鳴や命乞いなどの一切を無視してそのまま全員をすり潰し跡形もなく消し去った。


「はい任務完了! 帰ろ帰ろ!」


「あぁ! アリエルさん、引っ張らないでくださいよー」


この日を境にゴールドフォールは魔王国の完全監視下に入り、犯罪組織の類は、必要悪としてクロード率いる国公認のマフィアが存在するだけとなった。


そしてこの大規模な犯罪組織粛清は、ピンポイントに犯罪者だけを消していった事から、後にゴールドフォールの神罰と呼ばれる事になる。


「はぁ…やりすぎじゃよ」


「えーでも治安良くなったし、リップちゃんも嬉しいでしょ?」


「うーん、まぁそうなんじゃけどなぁ」


「じゃあ良いじゃん」


あれから直ぐに魔王城に戻った2人は、リップちゃんを呼び出して報告をしたのだが、報告が進むにつれリップちゃんの顔が苦々しくなっていったのだ。


「はぁ…まぁ良いのじゃ、とりあえずなのじゃが、アリエルは休んだ後カリーナ達の後を追ってほしいのじゃ」


「うん」


「ローズは妾の補助を頼むのじゃ、ゴールドフォールの後始末が大変そうなのでな」


「はい、わかりました」


「それでは各々よろしく頼むのじゃ」


リップちゃんとローズはそう言って部屋から出て行った。

アリエルは風呂に入った後、ベッドに入って休み、次の日の朝早くに出発し…それから6時間程で未開の島に辿り着いたのだった。





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