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魔界祭の準備をします

昨日はPSO2で小林幸子さんのライブを見ました。

何故かやたらと世界観とマッチしてたので面白かったです。

 あれから三日後、魔王国では魔界祭の為の大型会場が作られ始めた。

 その事に会場が用意されてないのを知らなかったアリエルと水月が、リップちゃんに後三日しか無いのに今から作って間に合うわけ無いとか、何でもっと早く作り始めなかったんだと食ってかかったが、リップちゃんはどこ吹く風な態度で大丈夫の一点張りだったので、腹を立てた二人は、間に合わなかったら大変だから少しでも手伝おうと建設現場に行き、その光景に驚いた。


 そこには背の低いずんぐりむっくりな髭モジャ、ドワーフが物凄い手際の良さでドームっぽいのを作っており、このペースなら間に合うんじゃないの? と思わせる感じだった。


「これじゃあ私達が手伝いに入っても邪魔になりそうね」


「そうだねぇ、でもせっかく来たのに何もせずに帰るのも癪だし、水月ちゃんの緊急野外ライブでもやる?」


「何でそうなるのよ」


「モチベーションを上げる為だよ! アイドルのライブを見れば野郎共のテンションは上がり、今後の作業が捗ること間違いなし! ほら、良い事尽くしだよ」


「うーん…まぁそれで間違いなく間に合うならやるけど…」


 この時水月は、アリエルの変な説得に飲まれていて、流されるままにアリエルに音の入ったスマホを奪われた後、既に出来ていた闘技大会用の舞台の上に立たされて、アリエルに集められた結構な数のドワーフをステージの上から見ていた。

 

「ではこれから人気アイドル、水月ちゃんのライブを開催します」


 アリエルがそう言うと、ノリのいいドワーフは歓声を上げ、曲を流し始めると、水月の緊急ライブが始まった。


 それから三時間後、アリエルの段取りの悪さのせいで余計な時間がかかったライブも大盛況で無事終了し、突然の娯楽に大喜びのドワーフ達はテンション高めで作業を再開し始めた。

 アリエル達も、最後まで手伝うと言い、看板作りなどの邪魔にならないような細かい作業を手伝い続け、ご飯は配られる弁当を食べ、寝るときは用意してくれた二人部屋に泊まり、会場が出来上がるまで必死で作業を手伝い続けた。


 そして祭一日前にようやく会場が完成した。

 二人はその出来上がった努力と汗の結晶を、タオルのバンダナを着け、汚れだらけの作業着姿で見上げながら、感動で涙目になっていた。

 ドワーフ達はそんな二人に「頑張ったな!」とか「人間の女にしておくのは勿体ねぇ、うちの従業員になりたかったら何時でも来い!」などと声をかけ、一人、また一人と家に帰っていった。


 しばらく見上げた後、二人は顔を見合わせて笑い合い、借りた部屋で荷物をまとめ、魔王城に帰っていった。

 そして帰り道、やりきった顔の水月がふとその辺の壁を見ると……なんとそこには二人の捜索願いの貼り紙が貼ってあり、これはヤバいと焦った二人は、疲れた体に鞭を打って必死に走り出した。


 それから少しして、二人は他の五人の前で座らされていた。

 この二人は城に戻りエントランスを見回すと、あまり騒ぎになってないみたいだから先にお風呂に入ってから顔を出そうと考え、大浴場に向かうが、途中でカリーナと星歌にばったりとエンカウントし、その二人に鬼の形相で捕まえられて寝室に連行され、今まで何をしてたかを吐かされたのだった。


「…まさか二日も連絡無しで建設現場で作業しておったとはな……」


 リップちゃんは二人の話を聞き、額に手を当ててため息をついた。


「貴女達のその根性は認めるけど、私達に一言入れてから出来なかったのかしら?」


「私もそう思います…」


「ボクも手伝いたかったなぁ」


「二人共…バカとしか…言いようが無い」


 二人は申し訳なさそうに縮こまりながら五人の呆れた声を聞いていた。


「まぁ…無事なら良かったのじゃ、妾は行方不明の捜索の取り消しを申請しないといけないから、これで行くのじゃ」


「あ…心配かけてごめんね、リップちゃん」


「ごめんなさい」


 リップちゃんは捨てられた子犬のようになっている二人を見て苦笑すると、手を振って、気にするなと言って部屋を出ていった。

 その後アリエルと水月は四人から汚いから風呂に行けと言われ、着替えを持ってとぼとぼと大浴場に向かった。


 そして大浴場に着くと、アリエルはシャッと服を脱ぎ、ガラッとドアを開けて中に入る、するとそこでいつものメイドさんを発見し、ラッキーと思いながら洗い場の椅子に座った。


「あら、今日は随分と汚れていますのね」

 

 珍しくメイドが話しかけてきたのに驚いたアリエルはピクッと反応した後、頭を洗われながら説明することにした。


「うん、さっきまで魔界祭の会場作りを手伝ってたんだよ、凄く良いドームになったから良かったら後で見てみてよ」


「そう…頑張ったのですね、なら是非お風呂から出たら見てみますわね」


 メイドはアリエルの頭をシャカシャカしながら透き通るような声で言い、アリエルはその声の良さにぽけーっとしていた。


「あ! またころちゃんは人に頭洗わせたりして! すみませんお姉さん、この子がこんな事させてしまって……」


「良いのよ、娘を洗ってあげてるみたいで楽しいもの」


「そうですか? ならいいんですけど、迷惑だったら言ってくださいね」


 水月はそう言って自分の体を洗い始めた。

 一方アリエルの方は既に洗い終え、メイドと湯船に入っていた。


「そういえば、私メイドさんの名前知らないや、ちなみに私はアリエルだよ」

 

「私はクラリス…クラリス・フラワーガーデンよ、いつも娘がお世話になってるわね」


 クラリスがそう言ってアリエルにウインクすると、アリエルは口を開けて固まった。


「……え? メイドさんじゃ無かったの? ……あ、あのぉ…今まで洗わせたりしてすみませんでした……」


「ふふ、良いのよ、私も楽しんでいたから気にしないで」


「そう言って貰えると…助かります…」


 アリエルはあまりの緊張に、大して浸かっていないのにお風呂を上がり、寝室に戻った。


「おお、今日は早かったの」


「あ! リップちゃん! 何で城にお母さんが居るのを教えてくれなかったのさ!」


 リップちゃんはアリエルの言葉にちょっと驚いた。

 何で母が居ることを知ってるんだろ? と。


「ふむ、誰から聞いたのか知らんが、母は後宮の部屋に引きこもって出てこんからの、アリエル達は会うことも無いし言う必要は無いと思ったのじゃよ」


「嘘つかないでよ! 私リップちゃんのお母さんと知らずにメイドさんだと思ってて結構な回数体洗って貰ったりしてたんだから!」


「はぁ!? そんな馬鹿な! 母は後宮からは出ておらん筈じゃ! 見かければ妾に報告が来るじゃろうし」


 予想外の発言にリップちゃんは目を見開いて驚いた、あり得ない、引きこもりの母が大浴場に来るなんて…と。


「ほんとだもん! 名前もクラリス・フラワーガーデンって名乗ってたし、いつもかごにメイド服が入ってたから気付かなかったけど、よく見たらリップちゃんに似てたし!」


「な…なぁ! メイド服じゃと!? ぐっ…アリエル! 今から母に会いに行くから一緒に来るのじゃ!」


 リップちゃんはアリエルの手を引っ張り、城の裏にある後宮に入り、二階の部屋のドアをノックした。


「母上、入っていいかの?」


「ええ、いいわよリップ、入りなさいな」


 先程聞いたばかりの透き通るような声の返答を聞き、二人は部屋に入った。

 そこにはやはり、アリエルがお風呂で体を洗わせてたクラリス・フラワーガーデンがソファーに優雅に座っていた。


「母上、妾は先程、母上がメイド服を着て城内を彷徨いていたと聞いたのですが」


「事実よ、でもリップ…私が家の中をどのような格好で歩こうと私の自由ではなくて?」


「ぅぐ…まぁそれはそうじゃが…」


 クラリスの正論と口答えは許さないと言わんばかりの態度ににリップちゃんは直ぐにたじたじになる。


「まぁ…リップが私を心配してくれてるのは分かってるわ、だからこうしましょう、私が城に出る時はリップかアリエルちゃんと一緒にいるわ、これでどうかしら?」


「むぅ…アリエル…母上を守ってくれるか?」


「私はいいよ? 誰かが襲ってきたら殺すか捕まえればいいんでしょ?」


 アリエルが笑顔で物騒な事を言うものだから、この子まさかヤバい子かとクラリスは冷や汗を流し始めた。


「よかったの母上、これで誰かが襲ってきても安心じゃ」


 リップちゃんはにこにこ笑ってそう言う。

 しかしクラリスには不安が募る、リップちゃんの様子が昔と優しい感じと全然違うからだ。


「うん、この前のゴミギルド位なら何とでもなるから大船に乗った気持ちでいていいよ!」


「ゴミギルドって何!? ちょっと待って! やっぱりしばらく大人しくしていることにするわ! だからほら、護衛はしなくていいわよ!」


「そうか…心配しなくていいのじゃがな、アリエルは闇ギルドの部隊を一人で壊滅させたし、実力には問題ないのじゃが」


 闇ギルドと言う言葉にクラリスの笑顔が固まる、それもその筈、闇ギルドというのは凄腕の犯罪者集団で、その筋のプロも多く在籍している、世間一般では恐怖の象徴となっている危険なギルドなのだ、クラリスは現魔王の母ではあるが、それほど強くはない為、万が一闇ギルドなんかに襲われたら死を覚悟しなければならない。

 なのにここに居るアリエルは闇ギルドをゴミギルドと馬鹿にして部隊を一人で壊滅させたらしいし、自分の娘は闇ギルドなんか大したこと無いと言わんばかりの余裕な態度なのだ。


「そ…そう、でもいいわ、しばらくここに居るからたまに遊びに来てくれる位でいいわ」


「まぁ…それもそうじゃな、よく考えればアリエルは闇ギルドに恨まれてそうじゃし」


「あははは! あんなゴミがいくら来たって何の問題も無いよぉ、所詮は世界のルールも守れない塵以下の集団だもん」


 アリエルとリップちゃんはケラケラ笑いながらそう言ってるが、クラリスは笑えなかった、やはり闇ギルドは恐ろしい、例えば業界最大手のアジ・ダハーカは、三人のボスの名が世間に知れ渡っている。

 それは獅子の獣人の、凶獣ガルムズ、魔族の、凶人ベータ、吸血鬼の、凶鬼グランハルトの三人で、こいつらは尋常じゃない戦闘力を持ち、戦って生き延びた者は居ないとまで言われている。

 リップちゃんも知らない訳が無いのだが、クラリスは娘がとても心配になった。


「とにかく、闇ギルド関係なら貴女達はもっと気を付けなさい、相手は目的の為なら何でもやるような連中なのだから」


「わかった、気を付けるね」


「うむ、母上忠告感謝するのじゃ」


 アリエルとリップちゃんはそう言うと部屋を出ていき、寝室に戻ると、アリエルは料理に混ぜられるかもしれない毒に注意しようと、前に作った鑑定機を用意し、これで大丈夫と眠りについた。



 そして翌日、魔界祭が開催された。








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