魔物の大群です
アリエル達は、魔物が侵攻して来ている三日月平原に居た。
エディタの冒険者と獣人国の兵と王は既に交戦中だった。
「少し遅かったようじゃな、皆急ぐのじゃ」
「りょうかー……あ、待って」
リップちゃんの言葉にアリエルはにこにこしながら手を挙げるが、直ぐに首を傾げて、皆を制止した。
「どうしたのよ」
「うーん、索敵させてた風精霊がエディタの向こう側に何か居るって言っててさ……よし、私が見てくるから皆は先行っててよ!」
「ふむ……確かに今あんな所に居るなんておかしいの…わかったアリエルはそちらを頼むのじゃ」
それで話が終わるとアリエルはエディタの方に走っていき、四人は魔物が来ている所に走っていった。
そして、リップちゃん達は戦場に着くと、直ぐに手当たり次第魔物を倒しながら、主であるキングビーストを探していると、サクラがだるそうに喋り始めた。
「ふぅ…弱いけど数がすごいね、しかも何か連携してるっぽいし、ボクは知らなかったけど、こういう事って有るものなの?」
「いいえ、種類が違う魔物が連携するなんて聞いたことがありません」
「妾も聞いたことが無いのう……ふむ…これはもしかしたら操ってる者が居るかも知れんのう」
リップちゃんの言葉に、カリーナが眉を寄せていた。
「それ居るとしたら、アリエルの方に居るんじゃないの? 私行ってもいいかしら?」
「それは困るのじゃ、それにカリーナもアリエルがやられるとは思ってないじゃろう? いつもはふざけているが明確な敵には油断も容赦もせんよあやつは」
「いや、私が心配してるのは、アリエルがイラついたとかで敵を皆殺しにしないかをよ、情報を吸い出すから一人は残しておかないといけないでしょう?」
カリーナはやれやれと首を振り、リップちゃんにそう言うと、リップちゃんはオークを倒しながらなるほどと頷き、他の二人はえぇーという顔をしていた。
「アリエルさんの身の危険を心配したボクって間違ってるのかな?」
「いいえ、サクラは間違っていませんよ、間違っているのは変な心配をしているあの二人です」
そんなことをゴブリンやオークを倒しながら話していると、前に見える森から、5m以上はある巨大なライオンの魔物が姿を現した。
「あれがキングビースト?」
「そうじゃな…不味いの、冒険者と兵士が吹き飛ばされておる」
森から出てきたキングビーストは近くに居た大勢の冒険者と兵士を巨大な前足の一振りで吹き飛ばしてしまい、カリーナ達の方に走ってきた。
「うわ! 来たよ!」
「障壁を張ります! 《我は望む、全てを守る光の聖域》サンクチュアリ!」
ローズが全員に障壁を張ると、カリーナがキングビーストの右足に地面から大きなトゲを出して足を貫き転倒させた。
「良くやったのじゃカリーナ! てやぁぁぁぁ!」
横倒しに転倒したキングビーストにリップちゃんが物凄い速度で近付くと、右手に物凄い闇の魔力を凝縮させ、キングビーストの下顎をぶん殴ると、キングビーストの体は、その場で独楽のようにぐるぐる回った。
さらにサクラが高速で移動し、回転しているキングビーストの頭を回転に合わせて思い切り蹴り飛ばすと、キングビーストはごろごろ転がった後ふらふらと立とうとする。
「よし止めじゃ!」
「ええ」
「オッケー!」
「はい! 《我は望む、全てを貫く光の槍》シャイニングランス!」
ふらふらのキングビーストに、リップちゃんの闇のビームと、カリーナの無数の黒槍、サクラの渾身の右腕、ローズのシャイニングランスの全てを食らいその場に倒れ息絶えた。
「よし、後は他に任せてアリエルの所に行くのじゃ」
「そうね、急ぎましょう、アリエルが敵を皆殺しにしてしまう前に」
そう言って四人は勝利の余韻に浸ることも無く、エディタに向かって走り出した。
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エディタ大高原では、アリエルが闇に紛れて怪しい男達の後ろに隠れていた。
(ふーん、あの男が魔物使いね……よしあいつは生かして捕まえよう、そうしたらリップちゃん達も褒めてくれるだろうからね、ウシシ)
アリエルがそう考えていると、男達が動き出したので少し遊んでやろうと話し掛ける事にした。
「あれ? こんな所で何をしてるのかな?」
アリエルが後ろからそう言うと、男達は驚いて振り返りながら武器を構えた後、此方が女一人だからか構えを解き一人の男が前に出てきた。
その時、男が後ろに何かサインを出したのをアリエルは見逃さなかった。
(あいつ今なんかサイン出したよね、まぁいいや、最初から後ろの奴等は退場して貰う予定だったから)
そう考え、アリエルは早速男の後ろに居る奴等を闇の鎖でピクリとも動けなくすると同時に闇を固めて口と鼻を塞ぎ窒息させ始めた。
「あぁ、もしかしたらこっちにも魔物が来るかも知れないからな、念の為に巡回をしていたんだ」
男がそう言うのを聞き、アリエルは心の中で、下らない嘘をつくなよと嘲笑しつつも顔には微笑みを浮かべていた。
「へぇ、そうなんだ、私はこんなとこでコソコソしてるから街に攻めこもうとしてるのかと思ったよ、ねぇ? …魔物使いさん?」
アリエルはダガーを構える男を見て思った、こいつ戦闘慣れしてない素人だなと、足は小さく震えてるし、目線を安定していない、多分魔物に戦わせるだけで自身で戦った事はほぼ無いんだろうなと結論付けて、アリエルは余裕を出し微笑み続けていた。
「何だ貴様は……おい! この女を今すぐ捕らえて周りを偵察しに行け! 仲間が居るかもしれん!」
男が安定しない目線でアリエルを睨みながら後ろで死んでいる男達に命令する、しかし反応が無いのに苛立ったのか後ろを向くと仲間が死んでることに驚いたらしく目を剥いていた。
「なっ!」
「お仲間はお前がボケッとしてる間に全員殺したよ、後はお前で終わり」
アリエルは先程抜いた剣を肩に担いで歩き出すと、男が明らかに逃げようと格好つけて後ろに飛び始めたので、アリエルはムカついて足に闇を巻き付けて転ばせてやった。
アリエルは男が無様に走り去ればいいのに、何か此方を見逃すかの様に後ろに飛ぶのが許せなかったのだ。
そして一旦ムカつくと、男のあらゆるものがムカついてくる、体がもやしみたいにひょろひょろなのもムカつくし、顔がニキビだらけなのもムカつく、そのくせ髪型に拘ってるのも、物凄くムカつく。
もうこの時には、絶対に酷い目にあわせてやると決意を固めていた。
「自分だけ逃げようなんて卑怯な奴だねお前は、それと…安心していいよ、殺しはしないから……今はね、《我は望む、全てが叶う楽園の夢を》エデンドリーム」
アリエルが魔法を掛けると、男は眠りについた。
この魔法は、夢の中では願望でも何でも叶い、なんでも思う通りになる幸せの安眠魔法だ。
何故この魔法を掛けたか、それは夢の中で幸せな気分にさせて、起きたら地獄っていうのをやりたかったからだ。
そして足を引き摺って街に帰り、リップちゃん達と合流した後、ギルドの拷問室の壁にくっ付けたのだった。
「これね、今幸せな夢を見てるんだよ、だから起きた時凄い混乱すると思うよ」
「そうなの、でもどうでもいいわそんなの、気になるのは何でこんな事をしたかよね」
「そうじゃな、こやつは異世界人じゃろう、しかしサクラは見たことが無いと言っておる……だとするなら以前光の女神から聞いた混沌大陸、これが怪しいのじゃ…しかし狙いが分からん」
リップちゃんは顎に手を当てて考えながらそう言った。
その顔はとてもめんどくさそうだった。
そして男が目を覚ますと、アリエルが馬鹿にしたようにこれから拷問だからと言うと、男は何を言ってるのか分からないと言うような顔をしたのを見て、アリエル達はは満足したのか、部屋を出ていき、拷問が始まった。
それから三日間、街で開かれた祭りと観光をアリエル達は楽しんでいた。
アリエルとリップちゃんは買い食いや観光名所回りをして、カリーナは宝石や装飾品の店を廻り、ローズとサクラは姉妹のようにカフェでケーキを食べたり、お揃いの物を買ったりして楽しく過ごしていた。
それから三日後、男が吐いた情報について話し合うことにした。
「まず、男は混沌大陸から海の魔物に乗って一週間程でここに来たらしいのじゃ、前の船といいサクラといい今回といい、どうやら異世界人には結界が作用せんようじゃな、どうしたものか……」
「こっちから攻めるか、来た奴を片っ端から倒すかだよね、私は待ちがいいな、海沿いの街とかに警戒だけ強くして貰ってさ」
「そうね、敵地に行くよりは安全よ、後の事は混沌大陸が見える位まで近づいてから考えましょう」
「うむ、後は男はクラス転移? とかいうので奴を除いても後30人程と共にこの世界に来たとかで、他にもかなりの人数が居るらしいのじゃ、それと目的じゃが、常闇大陸への侵攻して支配する気らしいのじゃ」
リップちゃんはつまらなさそうにそう言うと、眠そうにあくびをした。
アリエルはそのラブリーなあくびに釘付けだった。
「リップちゃん眠いの? ほら一緒にベッド行こ」
まだ話し合いの最中だと言うのに、アリエルは眠そうなリップちゃんを連れてベッドに入って寝てしまった。
それを見てカリーナは呆れたようにため息をつく。
「まぁいいわ、やる事は変わらないし 」
「異世界人の完全排除でしたね」
「そうよ、向こうから来るなら全員消せばいいだけ、簡単でしょ?」
カリーナがそう言うと、サクラは苦笑し始めた。
「確かに言葉だけ聞くなら簡単だね、まぁボクも頑張るよ」
「私も頑張ります」
「ありがとう二人とも、それじゃ私達も寝ましょうか」
そう言って三人も各自のベッドに入って眠りについた。
こうして迷宮都市での騒動は幕を閉じた。




