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婚約破棄の後は自由に生きます  作者: もも
異世界人討伐編
43/67

光の女神との話です

『簡単に説明しましょうか、アリエルは光の女神の娘にして闇の女神の娘、そして精霊女王の娘でもある、世界の娘なの、ようするに世界の鍵なのよ、世界を支配するのには絶対に必要な鍵』


「鍵? どういう事?」


『アリエルの力は物凄く強大よ、右目の精霊眼を使えば精霊が手を貸し環境を自由にできるし、左目の聖痕を使えば女神の力で光と闇も自分の思う通りになる、つまり一人で世界を支配できるし、逆にアリエルが邪魔をすれば支配なんか絶対に無理、だから鍵なのよ』


「確かにの……妾もその通りだと思うのじゃ、現に人間の大陸も衰退しているしの、意図はしてないがアリエルの力でこうなった事は確かじゃ」


 リップちゃんはエンジェライトの言葉に同意する、誰がやったにせよ、行動の中心は全てアリエルだったからだ。


『それと…貴女達にだから話すけど、私達が揃ってアリエルを選んだのにも理由があってね……この子はこの世界を作った創造神様の力の一部と神格を何故か持っているのよ』


「創造神様の力と言うと、どんな物でも作れるとか?」


『いえ、創造(クリエイト)は持っていないわ、この子が持っているのは昇華という物ね、物の格を上げて別の物を作る事が出来るのよ、例えば虹龍の卵ね、あれは錬金術では無く、アリエルの能力で鱗の格を引き上げて遥か格上の虹龍の卵にし、無精卵に無理矢理自分の魂の色を刻み付けて命を作り出したのよ、だからあの虹龍はアリエルの特徴を受け継いで目が桃色になり、卵の時から従魔だったのよ』


「つまりアリエルは条件がそろえば命さえも作れると、そういう事なのか!?」

 

『その通りよ、人形を昇華させれば命を持ったホムンクルスになり、死体を昇華させれば蘇らせることさえ可能よ、まぁ死体に関しては死後10分が限界でしょうけど』


「なるほどな……だとするとアリエルは絶対に守りきらんとならんな……邪な者に渡すわけにはいかんしの、それとさっき言ってた神格とは何なのじゃ」


『簡単に言うと魂の格ね、創造神様の魂の色は桃色なのよ、私達女神と精霊女王は直接作られた存在だから魂だけ同じ桃色だけど、前に居たのよ魂は白なのに何故か桃色の目を持ったやけに能力の高い虹龍がね、確か……初代竜王だったかしらね』


「確かに初代竜王は物凄い実力を持った猛者だと言われておったが……」


『初代竜王と比べてもアリエルは別格よ、この子は創造神様と全く同じ桃色の魂を持ち、その魂の力が目にまで出てしまっただけ、つまり創造神様の子とも言える私達女神と精霊女王の次に位置する程の格なのだから』


「だから始祖精霊でさえアリエルには逆らえなかったのか、魂の格が違いすぎるから本能的に勝てないと悟ったのじゃろうな」


 リップちゃんがそう言い、二人が考え込みこの場が静かになるが、アリエルが何かを思い出したように質問をし始めた。


「そうだ、この前混沌がどうとか言ってたけど、なんなのそれ」


 場が静かになったと思ったら、アリエルが思い出したようにエンジェライトに質問をし始めた。


『それは混沌大陸のことなのよ、貴女達は知らないと思うけど、世界には四つの大陸があるの、今私達が居る光の大陸、リップの城がある闇の大陸、で第三の大陸、光と闇が混ざり合い、常に雲に覆われている、人間しか居ない混沌大陸、最後に精霊女王が統治する、エルフと獣人の楽園である深緑大陸、私が混沌と言ったのはね、近付いて来ているのよ混沌大陸がね』


「近付いてくると悪いの?」


『ええ悪いわ、その大陸は異世界人っていうゴミを呼び出してるのよ、しかもそこの馬鹿どもがアリエルを狙ってるの、繁栄の為に必要だとか言ってね』


 エンジェライトは物凄く不機嫌そうにそう言い、アリエルを呼び無理矢理膝だっこしてしまった。


「やめて、私子供じゃないんだよ」


 アリエルは暴れるががっちりホールドされているので抜け出せなかったので諦めてじっとしている。


「ふむ……混沌大陸か…しかも人間という所に嫌な予感がするのう」


『リップは勘が鋭いわね、その大陸の人間はこの大陸の人間より遥かに強欲で自分勝手な者が多いわ、特に貴族ね』


「なら荒事になるのは確定かの、まぁ来ても潰すだけじゃがな」


「リップちゃんかっこいい……」


 リップちゃんの言葉にアリエルはキラキラした目でリップちゃんを見つめている。


『それと異世界人は確実に排除してちょうだい、あれは確か……地球だったかしら? ……まぁとにかく他の世界の力はこの世界の悪影響にしかならないから邪魔なのよ』


「なら私の力も悪影響なのかしら……」

 

 エンジェライトの異世界の力は悪影響だという言葉に、良くわからない力を持っているカリーナは悲しそうにそう言った。


『え? カリーナの力はこの世界の力よ、ただの固有能力だから心配しなくていいわ』

 

「まぁとにかく、エンジェライト様が言いたいのはアリエルを渡さずに混沌大陸の侵略を阻止し、異世界人を完全排除すればいいと言うことでいいのじゃな?」


『その通りよ、出来れば混沌大陸には行かないで、あそこは空気が悪くて悪い病気になりやすいからね、ということで私からの話は終わりよ』


「よし! じゃあ帰ろう!」


 アリエルがエンジェライトの膝からぴょんと飛び降り、とことこ歩いていってしまったので、二人は慌てて挨拶をし、アリエルの後を追った。


 二人が外に出ると、アリエルが手を振って待っていた。


「ちょっとアリエル、一人でずんずん行かないでよ」


「ごめんね、じっとしてて体がうずうずしちゃてさ」


 アリエルはそう言ってぴょんぴょん跳ね始める。


「はぁ…まぁいいわ、行くわよ」


「いや待つのじゃ……また待ち伏せされておる」


 リップちゃんが前の木を睨みながら二人を止めると、前の木から二人の男と一人の女が姿を現す。


「まさかバレるとはな……」


「ぶふっ!」


「あの女急に笑いだしたな」


「三人とも美人ね……憎たらしくて殺したい位に…」


 木の後ろから出てきたのは以前アリエルが右腕を切り飛ばした日本刀野郎と、眼鏡のインテリみたいな奴、ケバい金髪のデブ女だった。


「なんじゃお前達は」


「俺達が用があるのはそこの銀髪の女だ、今すぐ渡せ」


 日本刀野郎がキャラを作ってそう言うと、カリーナは笑うのを止めゴミを見る目をしながら言った。


「はっ、寝言は寝てから言いなさいよ、いじめられっ子の変態野郎」


「もういいわ、皆死ねばいいのよ」


「おい! 待て!」


 カリーナの暴言に、イラついたデブ女がメガネの制止を無視し、アリエル達に向かって火の玉を飛ばしてくる。


「こんなの私が……あ! まずっ……」


 それを見たアリエルは止めてやろうと前に出るが、そこで気付く、異世界人の魔法は精霊を使わないから止められないと……しかし気付いた時にはもう遅く、火の玉はアリエルに直撃し、爆発した。



 ……………………………………………………………………………………………………



 いてー、すっごい痛いわ……。

 くそ! あのデブ…障壁が辛うじて間に合ったから死ななかったものの、馬鹿みたいな威力の魔法撃ちやがって……お蔭で転んで頭をぶつけただろ!

 あれ? さっきから頭触ろうと思ってるんだけど左手しか来ない。

 おかしいなと思って右腕を見ると、あ……右腕が無くなってるじゃん、道理で頭を触ろうとしても動かない訳だ。

 やられた…傷口が焼けて血が出てないのが幸いだけど、ほんと痛いなぁ……。

 ……あぁぁぁぁ! あいつらまじむかつく! これでカリーナとリップちゃんが怪我してたりしたら塵も残さず殺してやるから!

 取り敢えず剣を支えに起きて…………くっ…痛い…。

 苦痛に顔を歪めながら私が立ち、前を見ると、私の右腕を吹き飛ばしたデブ女が笑っていた。

あ……あいつ……なに勝ったような顔をしてんだよ……。

 さっきから耳がキーンってなってて、音が何も聞こえ無いけどデブの笑い顔にイライラする。

 見てろよ……魔王城で覚えた魔法で今すぐその顔を絶望に染めてやる。


「ぐっ…うぅ……ふ…ふふ……苦しんで死ね……《我は…望む……絶望に満ちた…死神の呪いを》……ディスペアーカース…」


 どうだ……私も死ぬかもしれないけど、お前らは3日間苦しんだ後確実に死ぬんだ……。


 ざまーみろ。




 ……………………………………………………………………………………………………


  アリエルが敵のデブ女の魔法をもろに受け、吹き飛ばされたカリーナとリップちゃんは焦ってアリエルの所に行こうとするが、土埃が酷くてどこに居るか分からない、そして必死で探すカリーナとリップちゃんが土埃がおさまりクリアになった視界で見たのは、右手を失い、頭から血を流しながらも剣を杖がわりにして立ち上がっているアリエルだった。


「な……アリエル!」


「あの怪我は不味いのじゃ!」


「あはははは! 無様なものね! 美人も片腕が無ければ何も出来ない役立たずだものねぇ!」

 

 デブ女が笑うのを見て、二人が今すぐ殺してやると殺気を発したその時、死に体のアリエルが喋り始めた。


「ぐっ…うぅ……ふ…ふふ……苦しんで死ね……《我は…望む……絶望に満ちた…死神の呪いを》……ディスペアーカース…」


「アリエル!」


 アリエルは何かの魔法を使うと、ばたっと倒れてしまい、カリーナが慌ててアリエルを抱えてリップちゃんのもとに戻ると、リップちゃんは真顔で何故か苦しみながら暴れる異世界人を見ていた。


「あいつらどうしたの?」


「先程のアリエルの魔法じゃろ、あの魔法……古代禁術のディスペアーカースじゃな…効果は3日間苦しませその後死に至らしめるというものじゃよ」


「なら放っておいて、魔王城に戻りましょう、エリクシル原液なら腕ももとに戻せる筈よ!」


「うむ、急ごう」


 二人はそう言うと転移魔法で魔王城に戻り、急いでアリエルを寝室の風呂場に運びエリクシル原液を入れた小型の浴槽に服を脱がせて入れた。


「これで大丈夫じゃ、一日も浸かれば腕も元通りになるじゃろう」


「ふぅ…アリエルがこれ作っていて良かったわね…復活したらまた作らせましょうか」


「ふっ、いい考えじゃ」


 二人はそれからいつも通りに過ごし、寝る前にアリエルの様子を見た後、眠りについた。


 …………………………………………………………………………………………………………


  アルゴス神聖皇国では、先程転移で帰ってきたアリエル確保の任務を任せた三人の異世界人が掛けられた呪いを解呪しようとしていた。


「どうだカレン、呪いは解けたか?」


「これは無理ですね……どんな呪いを掛けたか知りませんが、強すぎて解呪魔法を全く受け付けません」


 神聖騎士団長のジオの言葉に、異世界人のカレンは首を横に振りつつ無理だと答えた。


「ぎっ……こ、これをやったのは……アリエルとかいうアバズレよ! ……あの女…ぐっ…次は絶対……殺してやるんだから」


「アリエルって探してる女の子ですよね? 」


「ああ、精霊の愛し子だな、確か深淵海域の大陸に居るという話だったが……まぁいい、これがどういう呪いかは解ったか?」

 

「ええ、3日間苦しませその後死に至らしめるという悪趣味なものでしたね」


 カレンは苦虫を噛み潰したような顔をしてそう言う。

 すると苦しむ三人は、そんな! とか死にたくない! と騒ぎ出した。


「ふむ……ディスペアーカースだなそれは……古代禁術に指定されている筈だから使える者など居る筈が無いのだが……厄介だな、もしディスペアーカースなら解呪はエリクシル原液でしか出来んぞ」


「エリクシル原液なんて無いですよ、本で読みましたが現存するエリクシルも10倍に希釈されたものが5本だけだと書いてありましたし、それを原液となると単純計算で5本足りませんよ」


「仕方ないか……教皇様には俺から報告しておくからもういいぞ、三人は死ぬまで寝かせておいてやれ」


 そして3日後、日本刀野郎本田太郎、メガネ山崎大介、デブ女松本梅子の三人は絶望した顔で死んでいた。




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