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竜王が出現しました

 虹龍が産まれた次の日、リップちゃんは謁見の間でこれから来るであろう竜王を待っていた。


(うーむ、本当に面倒な事になったものじゃ、昨日アリエルが見せつけてきた龍は間違いなく虹龍、いや正確にはアリエルと同じ桃色の目をしてる変異種じゃった、そういえば三代目の魔王であった初代竜王も確か桃色の目をしておったような……)


 リップちゃんが顎に手を当てて考えていると、謁見の間のドアがギギギと開き、ここ最近の悩みの種の原因であるアリエルが今度はメイド服を着て入ってきた。


「リップちゃん! 今ナナちゃんがお昼寝タイムだからお手伝いしに来たよ! あ、お礼とかはいいよ、最近リップちゃんには迷惑かけちゃってるからね!」


「そ、そうか、じゃが今は特に手伝ってもらうような事は無いのじゃよ」


 リップちゃんはヤバイと思った、つい先日も同じようなコスプレ事案を起こしたばかりだったからだ。

 だが何も知らないアリエルはにこにこしながら回りを見回している。


「そっかぁ…じゃあ謁見の間の前の門番してあげる! じゃあこの槍借りてくね! 」


「あ! 待つのじゃ!」


 アリエルはそう言うと壁に掛かっていた槍、この国の国宝である魔槍フェイルノートを取って外に向かって走り出してしまった、慌ててリップちゃんは制止を呼び掛けるが、もうすでに外に出てしまっていた。


(あー、まぁいいか…外に立っているだけなら特に問題もないじゃろうし)


 この時リップちゃんは忘れていた、この後竜王が来ると言うことを……。


 ……………………


 さーて、日頃お世話になっているリップちゃんの為に門番頑張っちゃうよ!

 私は扉の前に立ち、周りを見るが誰もいない。

 まぁ城で働いてる人はここに用なんか無いもんね居なくて当然か。


 それから二時間、ここに来たのは何かの報告に来た文官が一人だけだった。

 めっちゃ暇だ…私が暇すぎてリップちゃんと話でもしに行こうかと思ってたその時、年は二十代で長身で長い黒髪を後で一つに結んだ見るからにクールなイケメンがこちらに歩いてきた。

 私は扉の前で仁王立ちしてその男を待ち構えていると、男は私の前に立った。


「ここは魔王様の居られる謁見の間です、何か御用ですか?」


「ああ…緊急の話があってな、どうしても今すぐに話をしたい、通して貰えるか」


「ふむ、では魔王様にお伺いするので名前を教えてもらえますか?」


「我の名はアヴィスナーガ、竜王と伝えて貰えれば分かる」


「はい、では少々お待ちください」


 私はそう言って扉を開けて中に入った。


 ………………


(何故メイドが門番をしていたのだ? それにあの槍、フェイルノートは国宝ではなかったか? それを何故メイドが持っていたのか……さらにはあの目…あの桃色の目を見ていると姿見の鏡で見た初代竜王様を思い出す…不思議な娘だった)


 アヴィスナーガが困惑と懐かしさを抱かせるアリエルの事を考えていると、大きな扉からアリエルが出てくる。


「竜王様、この中で魔王様がお待ちです、どうぞお入り下さい」


 そう言って扉を開けているアリエルの横を通り、アヴィスナーガは謁見の間に入り、リップちゃんの前まで歩く。


「久しいな竜王よ、お主の用件は解っておる、虹龍じゃな?」


「そうだ…やはりここに居るのだな?」


「そうじゃ、昨日産まれたばかりなのでな、今は寝ておる」


「そうか…虹龍様を見つけてくれたこと我が龍族を代表し深く感謝を申し上げる、それでどこで見つけたのかを聞かせて貰えないか? まだ他にも居られるかもしれないからな」


 アヴィスナーガはリップちゃんに深く頭を下げ、どこで見つけたかを聞く。


「それはじゃな…」


 その問いにリップちゃんは困った顔をして、言葉を濁す。


「ふむ、言えぬような場所なのか?」


「いや、そういう訳では無いのじゃ…その…実はのう…虹龍の卵は錬金術で出来たのじゃよ」


「なっ!? そんな馬鹿な! 偉大なる虹龍の卵が錬金術で出来ただと言うのか!?」


 リップちゃんの予想外の言葉にアヴィスナーガは困惑し、声が大きくなる。


「じゃが事実なのじゃよ…それにほれ、作った本人がそこにおるよ」


 リップちゃんが苦笑いしながらアリエルを指差した。


「そこのメイドがだと!? そんなの信じられる訳なかろうが!」


「メイドじゃない、私はメイド門番、間違えないで」


 アヴィスナーガはさらに困惑する、先程までの丁寧な物腰だったメイドがふんぞり返って偉そうにしてるからだ。


(な、なんだこいつは…ただのメイドでは無かったのか? それにメイド門番だと? なんだそれは、いつそんな職業が出来たというのだ)


「そ、そうか、ではメイド門番よ、貴様が虹龍様の卵を錬金術で作ったというのは本当か?」


「うん、ナナちゃんの卵を作ったのは私、つまりあの子は私の娘」


「な、ナナちゃん?」


「あぁ…虹龍の名前じゃよ、確か七色だからナナちゃんじゃったかの」


「なっ! 貴様! 偉大なる虹龍様になんて安直な名を! これは龍族に対する侮辱だぞ!」


 アヴィスナーガは虹龍の名の由来に怒る、それはもう今にもブレスを吐きそうな位の怒りだった、しかしアリエルは全く動じておらず、さらにはニヤっと笑った。


「いいの? そんな態度をとって」


「な、何を!」


 ふてぶてしい態度のアリエルの強気な言葉にアヴィスナーガは何故このいつ殺されてもおかしくない状況でこんな態度がとれる? と思わず困惑する。


「私はナナちゃんの親、つまり私の不況を買うっていうのはナナちゃんに嫌われるって事だけど…本当にいいの?」


「も、申し訳ございませんでしたぁ!」


 アヴィスナーガはアリエルの言葉にヤバいと戦慄した、虹龍様を迎えに来たのに嫌われたとなると非常に不味いことになる、具体的には龍族全員から袋叩きにされて、愛する妻と娘からも捨てられるのが確実だからだ。

 だから即断で土下座を実行した、プライド? そんなもの命と妻と娘の為ならすぐ捨てるわ!


「いいよ、ただし私と勝負をして勝てたらだけどね…」


「な! アリエル! 竜王と勝負なんて馬鹿なことを言うでない! 」


「ふふ、私はそんなバカじゃないよ、勝負はこれでするのさ!」


 アリエルの馬鹿な言葉にリップちゃんが怒鳴りながら止めるが、このお馬鹿はドヤ顔をしながらポケットから何か書いてある大きな紙とサイコロを出した。


「これは、後でみんなと遊ぼうと思って作った手作り人生ゲームだよ!」


 私の言葉に皆は人生ゲームってなんだ?って顔をした。


「それに勝てばいいのか?」


「そう、そしたらナナちゃんに会わせてあげよう」


「分かった…やろう」


「リップちゃんも参加してね、人数が多い方が楽しいから」


「う、うむ」


 そしてアリエルは皆にルールを説明して銀行役を近くの階段を掃除していたメイドのキャロちゃんに頼み、始める準備をした。


「始める前に言っておくよ、今この場で一番の権力者は私たちのライフラインであるお金を牛耳っているキャロちゃんだよ、いい? お金を止められたら私たちの人生はそこでお仕舞い…だからキャロちゃんには敬意を持って接するように!」


「ちょっ!」


「わかったのじゃ、よろしくお願いするキャロ」


「キャロ殿、よろしく頼む」


 キャロはこの状況に狼狽していた。

 それはこの国の頂点である魔王と最強種と呼ばれる龍族の長であるアヴィスナーガが雑用専門である下級メイドのキャロに頭を下げているからだ。

 何故このような事態になったか…それは先程までキャロは今日の担当である階段の掃除をしていたのだが、そこにアリエルが来て、「うむ、可愛い幼女モフメイド発見」とか言ってキャロの手を引っ張り連れ去ったからだ。


「よーし、じゃあ始めようか、じゃあナーガ君からね」


「な、ナーガ君?」


「あ、あのアリエル様、それはあまりにも不敬なのでは…」


「いや、いいのだ…キャロ殿、お気遣い痛み入る」


「い、いえ…」


 こうしてゲームが始まった。

 アヴィスナーガは5を出し、医者になり、続くリップちゃんは6を出しアイドルになった。


「次は私ね、えい……え!? 一回休み!? 」


 アリエルは2を出して一回休みだった。


「流石アリエルじゃのう、だてに運がFな訳じゃないということじゃな」


「運がF? 我は運の最低ランクはEだと思っていたが……門番メイドは神にでも嫌われてるのではないか?」


 そう言うとリップちゃんはケラケラ笑っていて、アヴィスナーガはクックッと笑っている、キャロはそんな二人をみてあわあわしており、キャロだけがアリエルの救いだった。


「ぐっ……バカにして居られるのも今のうちだからね…」


「ふふ、運の悪いアリエルにこのゲームで負けるなどあり得ぬのじゃ」


「そうだな、運のゲームだから心配していたがこれなら負けは無いだろう、感謝するぞ門番メイドよ」


 二人は笑いながらアリエルをバカにする。

 そして次のターン、二人は給料日でお金を貰い、アリエルは6を出し、職業マスを通りすぎフリーターのまま給料日マスに止まった。

 絶望した顔をしているアリエルをキャロが大丈夫、これからですよ!とフォローし、ゲームが再開された。


 それからリップちゃんはUFOを見つけたマスで50000、アヴィスナーガは鉱山を見つけたマスで200000貰い絶好調、アリエルは事故、詐欺などのマスに止まり、早くも借金地獄に突入した。


「ぐ…ぐぅ、まだ始まったばっかりなのに……なんでよ!」


「知らんのじゃ、妾はお金持ちじゃからな」


「うむ、我も鉱山フィーバーしたので金だけは大量だ」


 二人のこの言葉にアリエルは悔しそうにし、あろうことかふざけた行動を始めた。


「キャロちゃーん、お金あげるから借金帳消しにしてくれたりしないかなぁ」


「なっ! キャロよ、妾は後でお主を魔王の専属にすると約束しよう、だからアリエルの言うことは無視するのじゃ!」


「そうだ! 我はキャロ殿を我の騎手に任命しよう! だからメイド門番は無視するのだ!」


「アヴィスナーガよ……そんなことをしたらキャロが竜騎士になってしまうのじゃが、キャロはメイドじゃよ?」


「それがどうした、メイド門番がいるくらいなのだからメイドの竜騎士がいてもおかしくないだろう!」


「いや、アリエルはメイドでは無いし、門番でも無いのじゃ!」


「ふっ、そんなことを言っても無駄だ、我はこの勝負を勝つためなら我は手段を問わない…妻と娘以外なら全てを犠牲にしてでも勝ってみせる!」


「え? ナーガ君って結婚してるんだ?」


「ああ、最愛の妻に今年3歳になる世界一可愛い娘がいる」


「ふむ…ではキャロは龍族関係の全ての代表にしよう、それでどうじゃ?」


「いいだろう」


 そしてこの異様な程エキサイトし、本来の目的を忘れた無益な話し合いは終わった、キャロという被害者を残して……。


 このあと再開されたゲームは、アヴィスナーガが一位、リップちゃんが二位、アリエルは最後の賭けに負けゲームオーバーという結果に終わった。


「ま、負けた……」


「当然じゃ」


「約束通り、虹龍様に会わせてもらうぞ」


「わかったよ…今連れてくるから…」


「あ、ご苦労じゃったなキャロ、持ち場に戻って良いぞ」


「は、はい!」


「世話になったなキャロ殿」


「い、いえ、滅相もございません! では失礼します!」


「ああ、また会議の時に」


「うむ、また後での」


 キャロは気づかなかった、冗談だと思っていた先程の話し合いで決まった事を二人が本気でやろうとしているという事に……。


 それから少しして、アリエルが虹龍を抱えて戻ってきた。


「おぉ…間違いなく虹龍様だ……」


「キュキュー」


「これが私の娘のナナちゃん、可愛いでしょ」


 アヴィスナーガはナナちゃんを見て感動しているが、何故かナナちゃんは短い可愛い爪を向けている。


「なぁメイド門番よ、何故虹龍様をは我に爪を向けているのだ?」


「ん? 名前呼ばないから怒ってるんじゃない?」


 アリエルは適当に答える。

 しかし本人は忘れているが、この爪を向ける行為はアリエルがこうすると可愛いとかほざいて教えたものだった。


「そ、そうか、ではナナ様、貴女様には竜王として龍の里に来て欲しいのですが」


「え!? ナナちゃんを連れてく気なの? ダメ! この子は私が育てるんだから!」


 来てほしいというアヴィスナーガの言葉にアリエルは物凄い拒絶を始める。

 アリエルは既にナナちゃんを本当の娘の様に思っており、手放すことなんて出来なかった。


「いや、そう言われても…こちらもナナ様にはどうしても竜王になってもらわなくてはならないのだ」


「うーむ、アヴィスナーガよ、実はナナちゃんはアリエルと従魔契約をしておっての、無理に離すのは無理だと思うのじゃ、だから成龍になるまで待ってもらえぬかの?」


「ぐっ…従魔契約か…それなら無理強いは出来んか…やったら虹龍様がお怒りになるしな……仕方ないか…だが成龍になったら絶対に竜王になってもらう、それでいいか?」


「うん、大人になったら一人立ちさせないとダメだからね、いいよ!」


「わかった、では今日の所はこれで帰ろう、だが時々様子を見に来させてもらうぞ、あ、それと帰る前にキャロ殿に挨拶をして行きたいのだが」


「あぁ…今の時間なら食堂かの」


「そうか、では失礼する」


 そう言ってアヴィスナーガは謁見の間を出ていった。

 リップちゃんはアリエルがナナちゃんを高い高いして遊んでいるのを見てイラっとした。


 ………………


 その頃、キャロは城の大食堂で先輩で上級メイドであるマリに怒られていた。


「全く、階段の掃除にあんなに時間をかけるなんてなに考えてるの? ったくこれだから下級は仕事が遅くて困るのよ」


「すみません……」


 キャロは街の端にある貧民区出身で、金の髪と金の目の狐族の獣人で、10歳でありながら先月メイドになったのだ。

 その為、他のメイド、特に貴族令嬢のメイドに目の敵にされていて、きつい仕事や汚い仕事ばかりやらされていた。

 そして少しでもミスをするとここぞとばかりにネチネチ責められたり、叩かれたりするのだ。


「で? そんなことをしてご飯食べるの?」


「いえ……」


「おお、キャロ殿探したぞ、ん? どうして泣いているのだ?」


 キャロは今日はご飯なしかぁ…と泣きながら食堂から去ろうとすると、さっきまで一緒だったアヴィスナーガが声をかけてきた。


「あ…竜王様……」


「あら竜王様、こちらで食事をされるのですか? それなら良かったら私とご一緒しませんか? 良いレストランを知っていますので、あ、わたくし、グーレル伯爵家次女のマリと申します」


「なんだ貴様は、我はキャロ殿に用があるのだ、下がっていろ、すまないなキャロ殿、魔王様からここに居ると聞いたのでな、もう食事はとってしまったか?」


「あ…はい…まだです」


「そうか! それなら我と行かないか? これからは頻繁に会うことになるからな、友好関係は大切だろう」


「え? え?」


「竜王様、そんなみずほらしい貧民出の子よりわたくしとの方がよろしいと思いますわ、グーレル家は龍族との国交を担当している家ですし」

 

「な!、キャロ殿は一時とはいえ我の生命線を支配していた方だぞ、バカにするとは不敬だぞ!」


(え? あれってゲームの話じゃ……)


「アヴィスナーガ、まだこんな所に居ったのか…挨拶と言っておったからもう帰ったものじゃと思ったが」


「やっほーキャロちゃん、さっきは突然連れてっちゃってごめんねぇ、怒られなかった?」


 アヴィスナーガが顔を歪め烈火の如く怒り出すと、後ろからリップちゃんとアリエルが歩いて来ていた。


「ま、魔王様にアリエル様……」


「おい、ここのメイドはどういう教育をしているのだ」


「ん? 何かあったのか?」


「この女がキャロ殿を侮辱しおったのだ! とても許せる事ではない! このような性根の濁った者の家が担当している国交などすぐにでも破談にしてやるわ!」


「そうすると、これからキャロが担当する時に困ってしまうのう、良いのか?」


「良くないな、キャロ殿に迷惑をかけるのは我も本意では無い……」


 キャロは二人が何を話しているか解らなかった、いや覚えはある、確かゲームの最中に冗談でそのような話をしていたなと。


「あ、あのぉ、私が担当とかよくわからないのですが…」


「そうじゃ! 先にキャロに話しておかねばな、キャロは今日一杯でメイドは解任、龍族関係の魔王国代表に任命し、侯爵位を授け、家名をドラゴニアとするのじゃ」


「うむ、龍族に異論は無い」


「凄いねぇキャロちゃん、あ、ドラゴニア侯爵って呼んだ方がいい?」


「え、えーー!? ま、待ってください、私が侯爵とか龍族担当って冗談では無かったのですか!?」


 キャロはリップちゃんとアヴィスナーガを交互に見ながら、あれはゲーム中の冗談じゃないの? と必死に訴える。


「いや、冗談でそんな話はせんよ」


「我も本気でそうしようと思って言っていた」


 二人の何言ってるの? と言わんばかりの態度と言葉にキャロは呆然とする。


「まぁいいじゃん、ほら侯爵になればお金沢山貰えるし」


(あ…そっか沢山お金が貰えればお母さんやお姉ちゃんと妹も食べ物に困ったりしなくていいんだ……)


「そうじゃ、無論仕事をして貰うが給金はアイドル並みじゃぞ! それにもう屋敷も手配してしまったから住んで貰わなくては困るのじゃ」


「ほう、アイドル並みか…それは良い額だな」


(あの……アイドルってゲームの中の職業ですよね? なんで当然のようにそれを比較に出すのですか? 解りませんよ普通の人は)


 結局キャロはこの話を引き受けざるを得なかった、というより喜んで引き受けた。

 おかげで家族が楽になるし、三人には感謝しか無かった、キャロを謁見の間に連れさったアリエル……偶然でも彼女が私を見つけてくれなかったらこんな話は無く、キャロは貧民出の下級メイドとしてこれからもいじめられ、家族もずっと苦しい生活を続けなくてはならなかっただろう。

 そして魔王と竜王がこの人達で無かったなら……この話は冗談で終わっていた筈、なのにこの二人は言ったことは実行する有言実行を地で行く人達だった。

 キャロは今日という日を感謝して、これからはこの三人の為に頑張ろうと心に誓った。


「それでアヴィスナーガは帰らんのか?」


「いやキャロ殿を食事に誘おうと思ったのだが、この女に邪魔をされたのだ」


「そっか、じゃあ貴女もう行っていいよ、それとこれからは言葉に気を付けてね、キャロちゃんはもう貴女より位が上なんだからさ」


「うっ…失礼しますわ!」


 アリエルが冷たい声でマリに忠告すると、マリは悔しそうに顔を歪め、立ち去って行った。


「妾達もご一緒するかの、アリエル、カリーナを呼んで来てくれぬか」


「わかった! 行ってくるから入り口集合ね!」


「キャロ殿、よければ貴女の家族も呼んではどうだろう? 事情はさっきの女がペラペラ喋っていたからなちゃんとしたものを食べさせてあげるといい」


「い、良いのですか? 私の家族は貧民で……」


「構わぬよ、気になるならほれ、給金の前貸しじゃ、これで身支度を整えて来ると良い、城の入り口で待っておるからの」


「ありがとうございます! すぐ行ってきます!」


 そう言ってキャロは走り出す、これからの希望に満ち溢れた生活と家族の喜ぶ顔を想像しながら。











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