学校の見学どころじゃなくなりました
やって来ました魔族の学校!
でも何か様子がおかしい、闇の精霊の数が不自然なくらい多いんだけど…。
「ねぇ何かおかしいよ、闇の精霊が多すぎる」
「どういうこと?」
「光と闇の精霊ってね、普通はこういう人が集まるところにはあまり居ない筈なんだよ…故意に呼び寄せたりしない限りでは、それに見た感じ何かしようとしてるし」
「つまり何か起こるということ?」
「いや…あ、今起きたっぽい、校舎の方だね…闇の属性がどんどん強くなってるから、ちょっと急いだ方がいいかも…シルフィードちゃん、風でスカート捲れないようにしといて」
そう言って普段は私の中に居るシルフィードちゃんに頼み、校舎の方に走って行く。
面倒な事が起きてるっぽいなぁ、呼んだのが闇の精霊ってとこがもう最悪、だって呪術系か召喚系で確定だもんね。
そして私が校舎前の噴水広場に辿り着くと、そこでは大規模な悪魔召喚が行われていて、周りに数十個の黒い召喚陣が展開しており、ズモモモと次々と蜘蛛のような悪魔が出てきている。
「な! これは悪魔を召喚しとるのか!?」
「もう結構な数の悪魔が召喚されているわね…」
「そんな…悪魔召喚なんて…誰がこんな事を…」
「お姉ちゃん怖いよぉ…」
うわぁ…よりにもよって悪魔召喚なの?
最悪じゃん、確か…悪魔はパッシブで恐怖の精神攻撃してるんだよねぇ。
これは早めに対処しないと不味いね…一匹でも外に出たら街の人が発狂して暴れたりして阿鼻叫喚の地獄になるからね。
「とりあえず召喚を止める!……皆、もう召喚は終わりだよ、それを閉じなさい」
私は精霊眼を発動し、闇の精霊に命令する。
するとガラスが割れるような音と共に、全ての召喚陣が壊れ、跡形もなく消えた。
「よし! 召喚陣は壊したよ! 後は悪魔を倒すだけだから頑張ろう!」
私は剣を抜き、元気良く皆に言う。
こういう時、深刻そうに言うと不安になるし、精神攻撃が効きやすくなっちゃうからね。
そして私は皆の返事も聞かずに剣に風の属性を付け、悪魔に突撃する。
「たぁ!」
かけ声と共に私は自慢のミスリルソードで渾身の縦斬りを放ち、スパッと悪魔を真っ二つにした。
その後またつまらぬものを斬ってしまったって感じで、ドヤ顔で周りを見るが、カリーナは魔法で悪魔を弾けさせていて、リップちゃんは魔力を纏わせた拳と足で次々と悪魔を消し飛ばしている。
ちなみに武器の無いミリアちゃんとミリィちゃんはカリーナの後ろに隠れ、二人の戦いを見ていた。
つまり何が言いたいかと言うと…私の勇姿は誰も見てなかったのです。
おかしい、何で活躍してる時に限って誰も見ていないのか……失敗したり恥ずかしい場面の時はいつも皆に見られているのに……もう一度言うがおかしい、私はこの理不尽に怒った、誰も見てくれないならこんな戦いさっさと終わらせてやる! 見てろよ、始祖精霊四体と契約して覚えた魔法で速攻で終わらせてやるから!
「大技行くよー!《我は求む、敵を溶かし尽くす原初の炎を》」
私は剣を上に掲げ炎の絶対敵を殺す魔法の詠唱を始める、すると前にいたリップちゃんと、横にいたカリーナが焦りだした。
「皆下がるのじゃ! アリエルが詠唱を始めた! 何が起こるか解らぬ!」
「ええ! 了解よ!」
二人はミリアちゃんとミリィちゃんを連れ急いで私の後ろに下がった、何か失礼な言い方だなぁ…そんな心配しなくても、これは周りに被害が出ない魔法だから!
「メルトダウン!」
剣の切っ先を悪魔の方向に向け、魔法を発動する。
すると上空に学校の敷地と同じ大きさの赤い魔法陣が展開され、その瞬間全ての悪魔の体がピタリと止まり、突然凄まじい熱が悪魔の体の中心から発生し、徐々に体の色が赤くなり溶岩の様に溶け始める。
そして三分後には学校に存在する全ての悪魔が溶けて消え去った。
「終わったのかの?」
「うん、悪魔は居なくなったよ、でもこの学校の中に召喚した人がまだ居るだろうから探した方がいいね」
「何故逃げなかったのかしら」
「恐らく、計画が完成する前に召喚陣が壊されたから逃げるに逃げられなくなったのじゃろう」
「奥の手があると言うことはないかしら?」
「あ、それなら大丈夫だよ、さっきのメルトダウンで一時的にこの学校は精霊が全くいない状態になってるから、少なくとも今は誰も魔法は使えないよ、あ、カリーナ以外ね」
仕方ないよね、あの魔法は小さい精霊がいると駄目だから、始祖精霊以外の精霊を魔法陣の外に弾き出して発動するものだし。
「そう、それなら今が絶好のチャンスでしょうから学校の責任者にここにいる全員を一ヵ所に集めてもらいましょう」
「そうじゃな、そこで犯人を見つければよいな」
「あの…私達はどうしたら」
「ミリア達は避難した方がよいの、犯人探しにどれくらいかかるか解らんのでの」
「わかりました、それでは私達はここで失礼します」
そう言うとミリアちゃん達は外に向かって行った。
私達は責任者、この学校の校長に会うために校長室に向かっている。
「アリエルは精霊から犯人の事を聞いておらぬか?」
「うん、一応聞いたけど、魔法陣近くに居なかったみたいだからわかんなかった、でも校内に居るのは間違いないよ、召喚中、術者は召喚陣から長い距離は離れられないから」
「そうか……。」
「それにしても何が目的で悪魔なんか召喚したのかしらね」
「多分かなり大規模な事だと思うな、あのままだと街にも溢れだしてただろうし、そしたら間違いなく大惨事だったよ…もしかしたら街を制圧して魔王になるつもりだったのかも」
私が冗談めかしてそう言うと、リップちゃんが深刻そうな顔をし始めて考え込んだ。
「それは有り得るのじゃ、魔王を狙ってる者は結構おるのでの」
「ならその中の誰かの差し金じゃないの?」
「解らぬ…が、とにかく犯人を見つけぬ事にはなんとも言えんの……。」
私達は話し合いをしつつ移動し、校長室についた。
リップちゃんはノックもせずに開けて、校長にいきなり事情を説明し出した。
「この度の悪魔の騒動を起こした者がまだこの学校に居る可能性が高いのじゃ、すぐに全員一ヵ所に集め、学校の出入口を開かないようにしてもらいたい」
「は…はっ! 了解致しました」
そう言うと校長は何処かに連絡をして、講堂に全員を集めるからそこで待機していてくれと言ってきた。
「わかった、行こうぞ二人とも」
私達は今大型の講堂へ移動し、講堂の舞台袖で待機している。
「アリエルは、怪しい人物の特定を出来たりしないかの?」
「うーん、多分なんだけど、召喚って失敗すると反動を受けるのね、だからさっきの召喚は私が無理矢理破壊したから失敗扱いで術者に反動いってると思うんだよね」
「確かに召喚魔法にはそういう制約があるって教わったけど、反動ってどんなものなのかしら?」
「私が消した魔法陣の数に比例するから、反動はかなりのものな筈だよ、肉体の欠損が起こっててもおかしくないし、強力な呪いにかかってるかもしれない」
「それなら見つけるのは簡単なんじゃが…反動で死んでいるということはないのか?」
「それは無い、他の召喚なら有り得るけどね、悪魔は生物が苦しませたり絶望させるのが大好きだから、どんなに酷くても呪いか、利き腕や足を奪うとか、魔法を使えないように魔力を永久に奪い続けるみたいな、日常にかなり悪い影響を及ぼすものだと思うよ」
「なるほどね、明らかに解りやすい反動が起きていてくれると探すのに苦労しなくて助かるわね」
私達はしばらく犯人をいかに見つけるかを話し合っていた。
今回の悪魔召喚はかなり悪質なもので、下手すると街ごと悪魔に飲み込まれとてつもない数の人が犠牲になるところだった、そんなことをした奴をここで逃がしたら次は何をするか解らない…だからここで絶対に犯人を捕まえると、私達三人は決意する。
そしてこの講堂に、校内にいる者が全員集まり、犯人探しが始まる。




