やっと観光できました
私は今、やっと街に来ています。
凄い感動したね、改めて自分がファンタジーな世界に転生したんだなぁと実感できたし。
でもね…街はファンタジーなんだけど、住んでいる人がね? いや正確には男の人がなんだけど…人の足をさ、じろじろ見てくるんだよね。
何でそんなことになったかは解ってる、街に出る前に新しいミスリルの剣と、リップちゃんに今着ている服のセンスが微妙とか言われて服を貰ったから着替えたんだよ。
それがチェックのミニスカとピンクのシャツにカーディガンでさ凄い可愛い服だって喜んでたの…その時は。
でも街に出たらこれだよ…私の太ももが男の邪な視線を一人占め状態……。
しかもよく考えたらこの格好で剣振る所か走っただけで下着見えちゃうんだよ…あぁ風にも注意しないとか…その辺は後でシルフィードちゃんに頼んでおこう。
「あぁ…イライラするわね、アリエルの胸と足を見てる男…全員殺そうかしら」
カリーナめっちゃ険しい顔してんだけど、頼むからそのくらいで人を殺すのは止めてほしい、あと胸は関係ない。
てかなんでカリーナのスカートは短くないの?
カリーナの方が背高いしスタイルいいんだから似合うと思うんだけど。
「頼むからやめるのじゃ、アリエルの男受けする顔とスタイルの事を失念していた妾のミスなのじゃ」
「そういう言い方止めてよ、何か私の顔と体がエロいみたいに聞こえるから」
「事実その通りなんだから仕方ないじゃない、貴女のようなのが世間でなんて言われてるか知ってる?」
「知らない」
なんなのさっきから、人の体をなんだと思ってるんだよ。
別に男受けなんかしないでしょ? 私背がちょっと低めだしさ。
「じゃあ教えてあげる、ロリ巨乳って言うのよ」
「はぁ!?」
「貴女は体のバランスが凄いのよ、背は低いのに胸は大きいし、肌が白くて足も細くて美脚だし、顔も癒し系のロリ顔、私が事前に止めたから、アリエルは知らないかもしれないけど、学生時代に婚約者が居るって解ってても、貴女を狙ってた人や薬とか非合法なやり方で物にしようとしていた男、凄い沢山いるのよ? 」
「それは解る、妾も男だったらアリエルに一度は交際を申し込むと思うのじゃ」
そんなこと言われてもねぇ、てかあそこで焼いてるお肉美味しそうだなぁ。
「まぁもう服はいいや、走らなきゃ良いんだしね、それよりあそこのお肉美味しいそうだから買って食べようよ!」
私は肉をジュージュー美味しそうに焼いている店を指差す。
「アリエルはマイペースじゃな、ほう…雷牛の肉か」
「高級品食材じゃないの」
「ここではそうでもないのじゃ、結構色んな所にいるのでの」
「ほらほら、早く買いにいこうよぉ」
私が店に向かって歩いていると、急に目の前に男が現れて通せんぼされた、しかも私が避けようとしてもこの男も動いて邪魔してくる。
ムカつくな、何がしたいんだよこいつは!
「ちょっと、邪魔しないでくれる?」
「あぁごめん、ちょっと考え事してたもんでさ」
男はニヤニヤ気持ち悪い笑みを浮かべながら言ってくる。
かなりうざいし、何かこいつは生理的に受け付けない。
「そう、じゃあ退いてもらえるかしら、私達はこの先に行きたいから」
カリーナが私の肩に手を回して、男に文句を言った。
でも男は反応しないし動かない、私達3人はイライラして、店に行くのを止めてその場を立ち去った。
「なあ…あれ!? さっきの子居なくなってる……」
……………………
「あームカつく、なんなのさっきの奴!」
「確かにおかしな奴じゃったな、ああいうのには関わらないのが吉じゃ」
「まぁこんな大きな街だもの、変な人の一人や二人は居るわよ、それより観光を楽しみましょう」
「そうだね、私、色々お店見てみたいんだけど、リップちゃんおすすめは?」
「うむ……なら冒険者用の道具屋なんてどうじゃ? 二人は冒険者なんじゃろう? 珍しいものもあるかもじゃし、どうかの?」
おぉ、珍しいものかぁ。
私そういうの大好きなんだよね、限定品とか要らないものでもつい買っちゃうし。
「そこにしようよ、ほらリップちゃん、連れてって」
私はリップちゃんの手をぐいぐい引っ張る。
「解ったのじゃ、ほら着いてくるのじゃ」
仕方ないなぁ…といった感じでリップちゃんは苦笑しながら私の手を引いて歩き出す。
『すいません、ちょっといいですか?』
私達が歩いていると、シルフィードちゃんが申し訳なさそうに手をあげながら話しかけてきた。
どうしたんだろ? 私は歩きながら聞いてみる
「どうしたの?」
『あの…さっき邪魔してきた男がアリエル様達を探しているようでして』
「ふーん、無視でいいよ、こっちには魔王リップちゃんがいるし…来たら追い払ってね?」
「うむ、妾も人の邪魔をしてニヤニヤするような男は好かんのでな、任せるのじゃ」
リップちゃんは腕を組み、任せるのじゃと胸を張る。
可愛すぎてめっちゃラブリーなんだけど。
「どうせまたストーカーとかでしょう、アリエルならあり得るわよ…………ぷふっ、今のちょっと面白くない?」
どこが? アリエルならあり得るって、ただの駄洒落じゃん。
全然面白くないよ? リップちゃん見てみなよ、表情が全く変わってない真顔だよ?
「……行くのじゃ」
「ほらカリーナ、置いてくよ」
「え? ちょっと待って……」
私とリップちゃんは手をつないで、笑ってるカリーナを放置して歩き出した。
その後カリーナは慌てて走って追いかけてきた。
「ここが冒険者用の道具屋じゃ」
「結構大きいねぇ」
冒険者用の道具屋は普通の道具屋より二倍くらい大きかった、それに壁の一部がガラスで中の様子が見えるのも、この店は隠すような事は何も無い! って感じでいいと思う。
「ほら入りましょう、中にアリエルの大好きなドライフルーツもあるみたいよ」
それを聞いて私は直ぐに中に入った。
おぉ、綺麗な雑貨屋だ。
ん? 鞄もある、ちょっと見てみようかな。
……あ! この犬の肩掛けポーチいいかも、アイテム袋の魔道具みたいだし、デフォルメされたトイプードル見たいな犬の絵が凄い可愛い。
「カリーナ、これどうかな?」
私は旅の相棒であるカリーナにずいっと犬のポーチを見せつけた。
するとカリーナと…何故かリップちゃんの目が凄く優しい目になって、二人ともうんうん頷いている。
「可愛くていいと思うわ、アリエルにとても似合いそうね」
「うむ、妾もとてもいいと思うのじゃ」
「そう? じゃあこれも買おっと」
その後特に欲しいものも無かったので、色んな種類のドライフルーツと、柔らかい干し肉っていうのを買った。
私はそれをポーチに入れて、冒険者ギルドに連れてって貰うことにした。
「こっちにもギルドってあるんだね」
「うむ、でも人間の大陸のとは別物なのじゃ、運営も国と冒険者協会でやっておるし、人間のように不正などは絶対にないのじゃ」
「そういえば、前に騙されたことあったなぁ…貴族と受付が私を奴隷にする為とかで…あの時は怖かったなぁ、小さい蛇って聞いてたのに行ってみたら30m以上の蛇だもんね」
私はあの時のことをしみじみと思い出した、そういえば騙した貴族と受付ってどうなったのかな? カティアさんはしかるべき報いを受けさせるとか言ってたけど……。
「さすがアリエル、そういうゲスのイベントは外さないわね、それと、そのポーチ、パイスラしてて良く似合ってるわね、巨乳がよく映えて素晴らしいわ」
「ちょっと! そういう事言わないでよ! 」
「まぁカリーナの言うことも解るがの、今日のカリーナはエロオヤジみたいじゃ」
全く…カリーナは…変なことを言わないでよ、おかげで周りの視線が痛いんだから…。
私は恥ずかしくて下を向きながら歩くことにした。
そして冒険者ギルドに着いた……しかしまた奴が私の前に立ち塞がった。
私は無視しようと左右に避けるが奴も動いてくる、ほんとなんなの? 気持ち悪い顔してさ、さっさとどけよ!
「あぁ、また会ったゲヒャ!」
男がニヤニヤしながら喋ったその時…リップちゃんの幼女ぱんちが奴の横っ面に直撃し、切りもみ回転しながら横に吹っ飛んでごみ捨て場に突っ込み白目を向いて泡を吹いて気絶していた。
あまりの事にカリーナはお腹を抱えて笑っている。
「よし、邪魔者は消えたのじゃ」
「いや…今の大丈夫なの? 後で捕まったりしない?」
「大丈夫じゃ、奴の態度は魔族として最悪じゃったしの、魔王の怒りに触れたとか言えば何の問題もないのじゃ」
「ぷ…くく…ねぇあれ…ごみに埋もれて泡吹いてるわよ…みっともなくて笑いが…っく、止まらない…はぁはぁ」
「そんなに面白い?」
相変わらずカリーナの笑いのつぼが分からない。
そんなに面白いか? 私はあれを見て無様以外の感想を持てない。
「まぁ、あれくらいじゃ死なんじゃろうし、中に入るのじゃ」
「そうだね、どんな依頼があるか気になるし、行こう」
「ええ…っぷ、そうね…」
いつまで笑ってんのさ。
そろそろリカバリーして欲しいんだけど。
私は呆れながらギルドに入った。




