冒険者になりました、そして依頼を受けます。
「アリエルさーん、カードが出来たので受付まで来てくださーい」
受付のお姉さんが大声で呼んでる。
私は小走りで受付に向かった。
「あ、アリエルさん、カード出来ましたからどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
受付のお姉さんからカードを受けとり、それを見る。
アリエル:ランクE 17歳 女性 職業:魔法剣士
備考:ワール王国立ち入り不可
へー、冒険者カードってこんな感じなんだ。
結構しっかりした素材で出来てる。
あれ? 私いつ魔法剣士になったんだ?
ああ、そうか、戦闘スタイルを見て、ギルドの方で職業を決めてるんだね。
「それで、何か依頼を受けてみませんか? 冒険者の仕事がどういうものかっていうのも、分かると思いますし」
まぁ確かに、その仕事を知るには、実際にやるのが一番だもんね。
やってみようか。
「じゃあお願いします。簡単なのにしてくださいね」
「あはは、もちろんですよ、最初からそんな難しい依頼をやらせたりはしませんって」
「そうですよね、なら良かったです」
「じゃあアリエルさんは戦えるみたいですし、ゴブリン討伐なんてどうでしょう?」
ゴブリン? 見たことないけど、どんなのだろう?
「ゴブリンってどんなのですか?」
「ゴブリンは緑色で、人形の魔物です。でもものすごく弱いですから、群れで襲われない限りは勝てると思いますよ」
うーん、確かに腕試しには丁度良いかも、私はまだ戦闘の経験も無いし、どうせいつかやるなら早い方がいいか。
「分かりました、受けます」
「はい、それでは、ゴブリンを一匹倒してきて下さい。街の外の平原にいますので、それと、カードに記録されるので倒すだけでいいですよ、売れる素材を持つ魔物も居ますが、ゴブリンは何もないので。」
「はい、では行ってきます」
このカード思ったより高性能なんだね。
倒した魔物が記録されるとか、どんな技術を使ったんだろ?
「アリエル、登録は終わったのかい?」
ゴブリンを倒しに行こうとギルドを出る途中でベルさんが話しかけてきた。
「はい、それで今からゴブリンを倒しに行くんです」
「ふーん、まあ初めての依頼にはうってつけだね。私達はこれから森に行かないといけないから着いていけないけど、頑張ってな」
「ありがとうございます。では行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」
ベルさん、いい人だわー。
会ってからずっと気にかけてくれてるし、ほんと感謝だね。
私は大通りを通って、武器屋で剣を買った後、城門を冒険者カードを見せて抜け、平原に辿り着いた。
んー、あれがそうかなぁ?
目線の先には緑色の1m程の人形の魔物。
何か汚くて近づきたくないなぁ。
でも倒さないと依頼失敗になっちゃうしなぁ。
よし! 覚悟を決めて行こう! 女は度胸だ!
私は剣を抜いて、ゴブリンに斬りかかった、そして……ゴブリンは私の袈裟斬りをもろに食らい、崩れるように倒れていった。
……よわー! 何これ? こんな弱いの!? まさかの一撃だよ!
私はもうちょっと何? 攻防戦的なのがあると思ってたわ!
私はまさかの予想外に、しばらくその場に立ち尽くしていた。
……はぁ、もう帰ろっと。
私はとぼとぼ歩いて、ギルドに帰ってきた。
「終わりました」
「あら、アリエルさんどうしました? ちょっと落ち込んでませんか?」
「いえ、ゴブリンが余りにも弱くて…ちょっと」
「だから言ったじゃないですかー、弱いって」
私がカードを渡すと、受付のお姉さんは何かの手続きをし始めた。
「まぁそうなんですけどね、あそこまでとは予想外だったんですよ」
「まぁでも、武器持ってるのはそれなりに厄介なので、同じ魔物だとは思わずに、気をつけて下さいね」
「はい」
ふーん、武器持ちかどうかで強さ変わるんだ。
「あ、そうだ、アリエルさん泊まる所決まってます?」
「いえ、これから探そうかと思ってまして」
「それなら、女性用宿舎が空いているのでどうですか? アリエルさんは、問題行動とか起こさなそうですし、どうでしょう? 代金はタダですよ」
へーそんなんあるんだ。
それなら何で皆、宿舎に泊まらないんだろ?
「タダなのに皆泊まらないんですか?」
「ああ、それはですね、宿舎は冒険者として模範的な人のみが対象でして、問題行動を起こした人や、態度の悪い人、評判の悪い人は対象外なのですよ」
「なるほど、じゃあ私も模範的な冒険者になれるように頑張りますね」
「はい、じゃあ宿舎に登録しときますね。場所はここを出て左の道を少し進んで左の脇道に入った先の《アパート》と言われる建物の302号室です」
はぁ? アパート? また昔来たとかいう奴の仕業か?
まあいいや、使えるものは使わせてもらおう。
「はい、ありがとうございます。じゃあまた明日来ますね」
私はギルドを出て、屋台でサンドイッチを買った後、宿舎に行った。
あーこれはアパートだわ、何処からどう見てもアパートだ。
そう、私の目の前には、元の世界にあった3階建てアパートそのものの、宿舎だった。
私はため息を着くと、部屋に向かい、鍵を開けて中に入った。
……ん? あれ!? なにこの広さ! どうなってんの?
そこは、テレビとかで見たことのある、高級マンションの部屋のようだった。
外から見たのはアパートだったよね? 何で中入るとこんなんなわけ? 理解できない。
私はこの事を明日受付のお姉さんに聞くことに決め、備え付けのお風呂に入り、サンドイッチを食べて、ベッドに入った。
そして、私はこのベッドの寝心地の良さに負け、眠りに落ちていった。
そして、私の自由都市アクエスでの最初の1日が終わった。