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挨拶をします

「ねぇ私そろそろ街に行きたいなぁって思うんだけど」


 私がウズウズしながらそう言うと、リップちゃんは笑いながら『そうじゃな、始祖精霊にも挨拶に行かなければならないしの』と言った。


 ……違う、違うんだよリップちゃん、私は挨拶じゃなく観光をしたいの、獣人の子供をモフったり、エルフや妖精を見てファンタジーな気分になりたいとは場の空気的に言えなかった。


「それで、どこで挨拶すればいいかしらね?」


「それなら結界の要である結界石のある神殿でいいと思うのじゃ」


「分かったわ、じゃあ案内してもらえる?」


 そうして、私は口を挟む余地すら与えられずに話は進み、街に出ると言っていた筈なのに、城の門すら潜る事も無いまま、城のすぐ横にある神殿に連れてこられた。


「あれー? 街に出るんじゃ無かったの? あれ?私の記憶だと城の門も通ってないんだけどなぁ、もしかして私を騙した? あーあーそういう事するんだー、リップちゃん達は私の純情な心を傷つけたんだ! あーあ、もう、私やる気出ないなぁ、私挨拶なんかしないからね、外で待ってるから終わったら教えて」


 私はふてくされてぷんすかしながら神殿から出ようとすると、リップちゃんとカリーナが焦り出した。


「ちょ、ちょっと待つのじゃ、妾達が悪かったのじゃ、だがアリエルが居ないと妾達は始祖精霊たちを呼ぶことすら出来ないのじゃ」


「そうよ、呼んでおいて放置なんて失礼な真似をしたらどうなるか……」


 カリーナ達が焦りながら私にそう言うが、私は今最高にがっかりしている。

 だから正直何もやる気は起きないけど、二人がかなり必死になって私を説得してくるので、仕方なく挨拶だけしてやることにして、精霊眼でその四人を呼ぶ。


「ふん、じゃあ適当に呼んで適当に挨拶するから……大きいの四人こっちに来て」


「ちょっとアリエル、そんな呼び方……」


『あらぁ、今回の愛し子ちゃんは随分凄い子ねぇ。わたくし達を呼んだみたいだけど、何かあったのかしらぁ?』


 呼んで数秒で姿を現した髪、瞳、全部青い傾国の美女なダイナマイトボディの乙姫みたいな格好をした女が後ろから私に抱きつきながら言った。


「なっ!? 精霊が具現化じゃと!?」


『ふふ、わたくし位になるとそれくらいはできるのよぉ。…そして貴女は今代の魔王ねぇ、面白いわぁ今回は此方側での参加なのねぇ』


 青いのがなんか納得したようにうんうん頷いてるけど、何に納得してるのかよく分からん。

 まぁ取り敢えず挨拶するか、しろって言われてるしね。


「ねぇ青い精霊さん、私はアリエル、これからよろしくね」


「アリエルそんな雑に……」


 カリーナがもっとちゃんとしろ!と私を見ながら注意しようとしたが、その前に青い精霊がわたわたしながら話しかけてきた。


「あら! わたくしとしたことが、先に名乗らせてしまう何て失礼な事を! 申し訳ありませんわ、わたくしは水の始祖精霊、アクエスリーネと申します、貴女様が天に召されるまで、末長くお願い致しますわ」


 あれ、随分腰が低いな、物凄い力をもった精霊だから、もっと上から『命令だから仕方ない、言うことを聞いてやる』みたいに来ると思ったんだけど、ふむ、そういう態度ならと私は機嫌を良くした。


「あの……宜しいのか? 偉大な始祖精霊である貴女に、今のアリエルの雑な態度じゃと、あの……その場で殺されても文句は言えないと思うのじゃが……」


 おい! 物騒なこと言うの止めてよ! そんなこと言って本当に殺されたら毎日リップちゃんの枕元に立って恨み言を言い続けるからね! もう!さっきから私を騙したり、そういう事言ったりして! 今日のリップちゃん点数低いよ!


『まぁ、ただの愛し子であればそうしたわねぇ…でもアリエルちゃんは明らかに過去の愛し子達やわたくし達より格が上だからねぇ、そんな事出来るわけないし、万が一にもしたらわたくしが他の始祖精霊に殺されるか、この子の力で消されてたわね』


「アリエルが…始祖精霊より格上じゃと……?」


『ええ、わたくし達始祖精霊が四人全員でかかっても手も足も出ずに消されるわ、だってアリエルちゃんが精霊眼でわたくし達に死ねと言えば勝負がつくもの、だからはっきり言うわ、わたくし達は過去に無礼を働いた愛し子を殺したことが確かにある、でも彼女は別格、そんな彼女が今回の愛し子って事は世界はかなり荒れるでしょう。だから貴女達は何があっても決してアリエルちゃんを手放さない事ね、この子は自覚していないかもしれないけど、本気で力を使えばこの子は黒を白にも出来るし、その逆も出来る、言いたい事は解った? 』


「……つまり、アリエルを手に入れた者は世界を支配できる……そう言う事なのですね」


 ふふ、私を褒め称えるなんて中々見所のある精霊だね。

 私が居れば世界を支配できるなんてよいしょしてさ。

 ふむ…そんな出来たアクエスリーネには特別に私の専属秘書にでもしてやろう、こんなこと本人に言うとやばそうだし心の中で言うだけだけどね。


『ああん!』


「え!? なに!?」


「どうしたのじゃ!」


「どうしたの!?」


 びっくりしたぁ、急に喘ぎ声をあげるなよ!

 顔真っ赤にして、目はうるうるしてるし、自分の体を抱き締めて体をくねらせてるとかとんだエロ精霊だよ!

 そのエロい美女面とダイナマイトボディのラインが目に毒過ぎるんだよ、この場に居るのが女だけで良かったな、男が居たらどうなっていたことか……。

 そしてはぁはぁエロい息をしながら話しかけてきた。


『アリエルちゃぁん……貴女わたくしに強制契約をしたわねぇ、力が強すぎて逆らう間も無く結ばれちゃったわよ……』


「え? そんな事してないけど」


『したわよぉ、そのせいでもうわたくしは貴女から離れられないもの、でもアリエルちゃんなら此方からお願いしたい位だったしぃ、ふふ、わたくしがアリエルちゃんに求められて契約したと知ったら他の始祖精霊は羨ましがるわねぇ』


アクエスリーネがそう言うと、後ろから声が聞こえてきた。


『その通りだなアクエスリーネ、貴様抜け駆けした挙げ句に契約など…俺達がいない間にどれだけ良い目にあってあるのだ!』


『くぅ…私が一番に来ていればこんなことには……』


『ずるいよぉ、僕たちに黙って愛し子に取り入るなんてさぁ』


 赤いダンディーな男がキレて、緑の美少女がギリッと歯を食い縛りながら悔しそうにしていて、茶色の男の子が不満そうに頬を膨らませている。

 なにこのカオス。

 はぁ、もうめんどくさいよぉ……。

 黙ってこの場から去ってやろうかと思ったけど、アクエスリーネが後ろから抱きついてるし、皆こっちをガン見してるから無理だよねぇ。


 悲しいことにまだまだ街には行けないようだなと、遠くを見ながらそう思った。

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