勇者の恐怖再びです
あれから電化製品で遊びまくった、久しぶりの掃除機の音は、やっぱりうるさかったけどなんだか懐かしい気持ちになったね。
そして1日経った今日、私達はこの街の観光名所、闘技場に来ている。
この闘技場はよく覚えてないけど、イギリスにあるのに似てる気がする。
それに近々大きな闘技大会があるらしくて、人がたくさんいるし、屋台まで出ててお祭りみたい。そしてとにかく人口密度が高くて暑いような気までしてくる。
それから人混みをかき分けて、少し歩き、トーナメント表が貼ってある看板の前まで来ていた。
どんな人が出るのか、少し気になったからね。
「これ、二つ名まで着いてる、光の騎士ジェイコブとか、どんな人なんだろうね」
「くっ、こ…これでツルピカな人だったら大爆笑間違いなしね」
「…………」
何で顔真っ赤にして笑い堪えながらそんな事言うの?
もし……もしだよ? カリーナのいう通りだったとしたら、これってただの嫌がらせだよね? ジェイコブに対する酷い侮辱だよ?
「どうしたの?」
「……なんでもないよ」
とりあえず続きを見よう。
えーっと、大魔導士エイブル、これは魔法使いだよね。
強そうに聞こえるけどお爺さんな気がする。
「アリエル、これ見て貴公子ゲイリー・トイレット、こんな名前あり得なくない?」
ほんといい加減にしてよ、てか闘技大会でフルネームで登録したの? 有り得ないんだけど。
どうせ上位貴族の息子かなんかだろうけど、わざとフルネームで登録して、名前で圧力掛けて勝とうとしてるんでしょ?まともにやっても勝てないから。
「あり得ないね、しかもこんな卑怯な手で勝ち上がろうなんてさすが名前が下品なだけあるよね、まぁでも他国の選手もいるし、名前を知らない人にすぐズタボロにされるでしょ」
「そうね、今回は大きな大会みたいだし、名前勝ち狙いなんてバカなこと、出来るわけないのに、常識の無い貴族もいたものね」
はぁ、次いこ、次。
戦乙女シェイラ、へぇー、女性も出るんだ、すごいねこんな男だらけの大会に出るなんて、相当自信があると見た。
この人の試合は絶対見よう、期待してるからね。
さーて、……あれ?
……勇者タケシ? 勇者ってあれなのかな? 青い服のスリーの人なのかな?
「カリーナ、ここに勇者ってあるんだけどさ」
「え!? 何でよ! 奴はアクエスにいるはずでしょ!?」
動揺しすぎだよ、こういう時こそ冷静にならないと。
1つの失敗が命取りになりかねないからね。
「落ち着いて、まだ奴が私達を探しているとは限らないし、とりあえず、まずは勇者を迅速かつ確実に回避する方法を考えようよ」
「え…ええ、じゃあアクエスに戻るのは?」
「それはダメ、アクエスに戻るのは、勇者がもっと遠くの国に行くか、死ぬのを待ってからにしよう」
「そうね、今後遭遇する危険を完全に無くすために、出来れば後者であることを心から願うわ」
はぁ……厄介な事になったね…勇者問題再びだよ。
奴はとにかく災害の様なものだ、黙って避難すれば何とかなるかもしれない。
だけど、私達にもやりたいことがある、とりあえず闘技大会を見たい。
いや、待てよ? そもそも奴は私達の事知ってるのか?
間違いなく面識は無いはず、なら服を町娘風にすれば、パッと見ただけでは冒険者だって気づかれないんじゃ?
あ、これいい作戦かも。
「カリーナ、奴は私達が冒険者だって知らないはずよ、だから町娘になりきって、この街に溶け込むのよ、そうすればバレないはず!」
「なるほど、木を隠すなら森の中作戦ね、確かにそれなら見つからないかもしれないわね」
「じゃあ明日からはその作戦でいこう、武器と防具さえ外せばそれっぽく見えるはずだし」
とりあえず回避法はこれでいい。
後は目立ちさえしなければいいんだ。それでうまくいく。
私達はいい作戦を思いつき、喜びながら闘技場の見学を再開した。




