急ですが、街を離れることにしました
昨日は最悪だった。
見てはいけないものを見た気分だ。
出来ることならもう、2度と見ないで済むことを祈ろう。
そう思いながらギルドに行った。
私達がギルドの前に着くと、中から物凄い声が聞こえてきたので中を覗いてみた。
「だから、俺はお前達の為に魔王討伐の旅に出るんだ! それなのに何故協力しないんだ!」
「ですから、魔王なんて居ないんですよ、だからあなたに協力する必要なんてないでしょう? そもそも、強い女の冒険者を連れてこいなんて、下心しか感じません」
あー変態かー。
何でここに居るのさ、しかも女の冒険者をよこせとか、私達の身の危険度が跳ね上がったよ。
カリーナを見てみろ! 顔が真っ青だよ!
「し、下心だと! 勇者である俺が、そんな理由で仲間を選ぶわけないだろう! 馬鹿にするな!」
「なら、男性の冒険者でも構いませんよね、男性の方が強い人多いですし、強い人限定でパーティーメンバーの募集かけましょうか? 沢山来てくれますよ、男性冒険者の皆さんが」
すげーな、カティアさんあの勇者に言い返してるよ。
私なら何も喋れないな、逃げるので精一杯だ。
「ふざけるな! 仲間は女じゃないと駄目なんだ! ここはギルドだろう! パーティーメンバーの募集に条件をつけて何が悪いんだ!」
「悪いとは言いませんが、誰も来ないですよ? 元々女性冒険者は少ないですし、現在街にいるのは二人だけです。断言しますが、その二人が仲間になる可能性は0です」
まあそうだね、その二人である私達は間違いなく入らない。
だって嫌だもん、あんなのと旅するなんて、確実に襲われるじゃん、精霊が暴走するよ?
「ならその二人に会わせろ! 俺が直接仲間になるように言えばいいんだろう!」
「無理です。あなたに会わせたら私が嫌われますから、諦めてください」
なんて自分勝手な理由だ。まあ助かるけど。
とりあえず、しばらく街を離れようかな、勇者が私達に気づく前に。
「そんな訳ないだろう! 俺と旅ができるんだ! その二人もお前に感謝する筈だ!」
「いい加減にしてください、もう帰って貰えますか? 営業妨害で衛兵呼びますよ?」
やべ! こっち来る! 逃げなきゃ!
私とカリーナは家の前まで走った。
「カリーナ……私達ヤバくない?」
「ええ、早急に対策をしないとまずいわね」
現在の状況はかなりまずい。
もう一刻を争うほどに。
なんとかこの窮地を乗りきらないと、私達に未来はない。
「私に…1つ考えがあるんだけど……しばらく街を離れるのはどうかな?」
「まあ、今の状況ならかなり良い手ね。勇者が街から居なくなるまで雲隠れするのね」
そう、とりあえず街から撤退するのがベストだろう。
ここに居なければ身の安全は確保できる。
出来れば今日にでも離れたい。
「ならそれで決まりね、確か闘技王国なら、ここから歩いて3日よ、馬車なんか探してる暇も買う暇もないから、急ぐなら食料と水だけ確保して、さっさと行こう」
「ええ、手分けして急いで準備しましょう」
私達はそう決めると、食料を4日分買い、大きなタンクを買い、その中に水を入れた。そしてそれを全部アイテム袋に入れて、勇者が居ないことを確認し、カティアさんにしばらくこの街を離れることを報告し、城門に向かった。
「この街ともしばらくお別れだね」
「そうね、良い街だったからまた戻ってきましょうね 」
こうして、私達はお世話になった街に一言別れを言い、ガルディア王国、通称闘技王国に向かうために、街道を歩き始めた。
まだランクCになってないのに、この街を離れることになるなんてと思いながら。
そして、勇者が居なくなったらまた戻ってくることを心に決めて。




