絡まれました
早くランクCになりたいな。
そして旅に出て、色んな所に行きたい。
「おはようアリエル」
「うん、おはようカリーナ」
「もう用意できたの?」
「大丈夫、じゃあギルド行こっか」
「ええ」
私達はギルドに向かうために大通りに歩く。
ドンッ
「あー!痛ぇ、痛ぇよぉぉぉぉ!!」
「あーあ、肩折れてるよこりゃ。どうしてくれんだこれ?こんなに痛がってるよ、とりあえず慰謝料払えや、まぁ体で払ってくれても良いけどな」
なんか柄悪いのが転がってんだけど、もう一人も大袈裟に金払えとか言ってるし。
なにこの茶番、誰が払うかっての、ここは無視だな。
「そうですか、奇遇ですね、私も今の衝突で肩が折れたみたいなんですよ、凄く肩が痛いのです。だから慰謝料貰えます? あ、私達はあなた達の体なんかいらないので、お金でお願いします」
は? なにやってんのこの子。
当たり屋に当たり返してるんだけど。
普通に無視してギルドに入れば終わりだったのに、何で、ややこしくしてんの?
「おい、ふざけんなよ。こっちはこんなに痛がってんだよ、早く治療しないといけねぇんだからさっさと払えや」
まあ、勢いよく転がり回ってるしね、痛い痛い言いながらさ、不自然なくらいに。
それに威勢のいい男、青筋立ってるけど大丈夫?切れちゃうんじゃない?
「ふざけてなんかいません。私だって痛いのです。だから早く慰謝料下さい。あ、肩が痛い、痛いよー」
もうおちょくってるようにしか見えない。
だって肩おさえるだけで、痛がる素振りも見せずに微笑みながらやってんだよ、あれ。
とんだ大根役者だよ。むしろ演技する気があるのかさえ疑問だよ。
「おい! いい加減にしろよ! 早く金払わねぇと殺すぞ!」
「あなたたちこそ早くお金を払ってください、殺しますよ?」
カリーナが魔力で剣を作って恐喝し始めたんだけど、大丈夫なの? 捕まったりしない?
さっきまで威勢の良かった男が怯えてるよ?
いや! そんなこと言ってる場合じゃないよ!
「カリーナ、そろそろ行くよ」
「ふっ、命拾いしましたね、アリエルが呼んでいるので行きますが、次は無いですよ?」
「は、はい! 申し訳ありませんでした!」
綺麗な土下座だね……。
ほんとに…止めるの遅くてごめんね…。
ギルドに着いた、取り敢えず説教するか。
「カリーナ、なんであんなことしたの?」
「あんなこと?」
「分からないわけ無いでしょ、さっきの当たり屋のこと。」
「私は真似しただけよ。」
あんな精度の低い真似で私が納得すると思ってんの?
私は認めない、あれが真似なんて、認めないから。
「あんなの真似じゃない」
「なんでよ」
「精度が低すぎるし、途中で相手をおちょくってたでしょ」
「あれが私の精一杯なの」
嘘つくなよ、あれが本当に精一杯なら相当やばいよ?
才能以前の問題になってくるよ?
「嘘つかないで、あれが精一杯とかありえない」
「嘘じゃない、私は精一杯痛がってたわ」
こいつマジか? だとしたら相手の神経を逆撫でする天才じゃん。
「じゃあ何で所々セリフをカスタムしてたの?『 お金をください。あ、私達はあなた達の体なんかいらないので、お金でお願いします。』とか言ってさ、あんなこと言ったら相手にはバカにされてるようにしか聞こえないよ?」
「だっていらないでしょ?」
「…………いらないけどさ」
「ならいいでしょ」
………いや、よくない。
まず論点がずれてた、何で物真似に対して怒ってんだ私。
絡まれたら絡み返すのをさせないようにしなきゃだよ。
「待って、論点がずれてた。私が言いたいのは、絡まれたら絡み返すのをやめてほしいの」
「私はそんなことしてないわ」
もうダメだ、これは多分また堂々巡りになる。
ここは一旦諦めて、次やったら即止めればいいんだ。
「わかった。でも気を付けてね」
「ええ、私なら大丈夫よ」
別に心配してない、いや、心配してるけど、そっちの心配じゃない。
「とりあえず依頼受けに行くよ」
「わかったわ」
私は疲れた。
カリーナのせいで。




