私はやっと、ワール王国から解放されました
私は気絶した兵士を引きずり、ギルドに持ってきた。
「カティアさーん、さっきこの男に襲われかけたので、返り討ちにして持ってきたのですが、どうすればいいですか?」
「あら、この男ってこの前アリエルさんに絡んでたワール王国の兵士じゃない。取り敢えず、起きたら尋問するから地下の牢屋に入れておきましょう。誰か!この男を牢に容れておいてもらえる?」
カティアさんがそう言うと、職員の男性二人が兵士の脇と足を持って、運んでいった。
まぁあいつが私の精霊眼の事を喋った所で、私が否定すれば奴の頭がおかしいって事になるだろう。何せ奴は犯罪者、誰も信じないだろうね。
「多分私を拉致しようとしたんだと思うんですよね、戦っている時、頭を狙わないで、お腹を狙ってきてたので」
「なるほど、ワール王国の件ね。確かにかなりしつこく言い寄っていたし、アリエルさんを狙った訳も納得いくわね」
全く、せっかく見逃したのにこれか……。
とにかく、こんな事今後何度もやられたら洒落にならない。
出来れば精霊をこれ以上怒らせたくない。
本当に土地が再起不能になったら環境が悪くなるし、強い魔物が生まれやすくなるから。
「本当に迷惑なんですよ、私は違う、探している人じゃないから関係ないって言っても、聞く耳を持ってくれませんでしたし」
「まあ、あの国はね、今日の連絡で聞いたんだけど、もう国民の8割が国を出たそうよ。だから、今度こそ再起は無理かもしれないわね。」
ふーん、ならそろそろ限界かな。
8割も減ったなら、わざわざ他の場所に動かせる兵力も無いだろうし、襲撃も奴で最後でしょ。
「まあ、自然が決めた事ですし、ワール王国の崩壊も運命でしょうかね」
「そうね、原因は精霊と言われている以上、精霊の逆鱗に触れるような何かをしたんでしょ。自業自得よね」
「ええ、何をすれば資源を枯渇させられる位怒らせられるのか、理解に苦しみます」
資源の枯渇は一時的なものだろう、王家さえ無くなれば私のお願いを聞いてくれるだろうし、全て元通りに出来るはず。
「そう言えばまだ泥だらけじゃないの、ここは任せて、お風呂に行ってきなさいな」
「あ、そうでした。じゃあ行ってきます」
そうだった、奴のせいでまだお風呂入れて無いんだった。
最悪だよ、早く行かなきゃ!
私は走って、家に戻って着替えを持ち、また走って公衆浴場に向かった。
「はぁ…はぁ……つ、着いた…」
公衆浴場に着くと、私は脱衣場で服を速攻で脱ぎ、浴場にはいり、洗い場に行く。
ふう、今日はかなり汚れてるなあ。
私はいつも以上に頭と体をごしごし洗い、その後、湯船に入る。
ああー。
疲れた体に効きますわー。
至福だ、私はこの為に生きている。
私はしばらく入り、いい感じに温まった所でお風呂から上がった。
さて、一応ギルドに行っておこうかな。
何か進展があったかもだし。
そう決めて、私はギルドに向かって歩いていく。
「カティアさん、兵士は起きましたか?」
「いえ、まだよ。ここは大丈夫だから、今日はもう帰って休みなさい」
「分かりました、そうします」
私は家に帰り、汚れた服を洗濯し、鎧を拭いてベッドに入った。
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次の日。
私は朝起きて、ご飯を食べた後、昨日の事の進展が気になりギルドに向かった。
「おはようございます。カティアさん、あれからどんな感じですか?」
「おはよう、それがさぁあの男、アリエルさんが精霊をけしかけてワール王国を陥れたとか訳分かんない事言ってるのよ、もうみんな呆れちゃってね」
「あはは、精神的に不安定な人なのでしょうね」
なに話を歪曲させてんの? 適当な事言わないでよ。
予想通り誰も信じなかったみたいだけど。
まぁ、兵士はこのままブタ箱直行だな。それは間違いない。
「そうねぇ、でも黒幕と目的は吐かせたわよ、まぁちょっと手荒なやり方でだけどね。じゃあまず黒幕だけど……ワール王国第二王子のサヘル・アム・ワールであることが判明したわ」
「はぁ、さすが奴隷狩りをする王国ですね、王族も腐りきっていたって訳ですか…」
ほんとあの男は、何の役にも立たなかったよなぁ。
王国でも、偉そうにしているだけだったし。
立場しか取り柄のない役立たずって感じだったね。
「あはは、そうだね。ああ、それと目的は大体アリエルさんの予想通りだったね。気絶させてワール王国へ拉致するっていう行き当たりばったりな感じの計画らしいわ」
「そうですか、ワール王国の現状を考えて、もう兵士は来ないでしょうし、安心しましたよ」
「そうね、良かったわ。ああいうのがまた来るのは街としても困るからね」
ふぅ、これでワール王国との縁も終わりかな。
終わりだといいなー。
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現在のワール王国
「くそ!まだアリエルは連れ戻せないのか!」
この男はワール王国第二王子サヘル。
サヘルの立場は非常に悪かった、現在の状況の原因と思われるアリエルの追放を勝手に決め、あろうことか、この国の所属を証明する国民登録を消してしまい、アリエルは自由都市の住人になってしまった為、容易に手が出せない状態になったからだ。
自由都市は完全中立、手を出したりしたら、不可侵条約を無視した侵略国として他国に袋叩きにされてしまう。
「お前の責任だ、もう私達はアリエルに手を出せない。迎えに行かせる兵も居ないからな。すべてお前の短慮が招いた結果だ。」
ワール王国の国王ジェイド。
この男は、これからどうすればいいのかと、途方に暮れていた。
「なら父上は、私にあのままアリエルと結婚すれば良かったと仰るのですか!?」
「いや、もう何を言っても遅いか……。この国はもう終わるかもしれないのだから」
「そんなことはありません! 私とカリーナが、必ずこの国を再び繁栄させます!」
「やれるものならやってみるがいい。この魔法も使えない状況でな」
この国はもう魔法も使う事も出来なくなっていた。
サヘルは再び繁栄させると言っているが不可能だろう。
全ての始まりは婚約破棄だった。サヘルはアリエルを追放し、4日後にまず、緑が少なくなった、その時はまだ何も問題ないと思った。
5日後には、山と森から何も採れなくなった。この時は王が調査を命じた。
6日後には、鉱山から何も出なくなった。この時も調査を命じただけだった。
そして7日後、作物は枯れ、この国は何も産出できなくなった。さすがにまずいと思い、国全体で大規模な調査を始めた。
その結果が現在、魔法も使えなくなり、土地は荒れ地と化した。もう何も出来ることが無くなった。
これがワール王国の現状。
国が滅びれば王族は、永久奴隷になるだろう。
サヘルもカリーナもそうなるだろう。その時この二人はどうなるのだろう。
王はそれが心配だった。
こうして、この国の終わりがまた1日近づいた。




