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12話・相反する魂

本日二話目です。ご注意を。

 名前リシャール=シーメンス

 年齢10

 性別男

 種族普人族


 能力値

 HP22/22

 MP97/180

 SP23/29

 筋力5

 知力5

 器用6

 敏捷3


 スキル

 火魔法 レベル六

 風魔法 レベル三

 MP回復速度上昇 レベル三

 詠唱短縮 レベル一

 魔法合成 レベル一

 気配察知 レベル六

 隠蔽 レベル一



 なるほど、能力値は魔力特化型というわけか。

 天才と言われている割には大したことないな。

 けどスキルの数とレベルの高さには目を見張るものがある。

 この年でここまでスキルレベルを上げるのにはかなりの努力が必要だったはずだ。

 スキルレベル六は学校の教師でも中々お目にかかれないからな。


 やっぱり、俺の場所がばれたのも気配察知のせいか。

 隠密のレベルを上げないと気配察知のスキル持ちには通用しないってわけだ。


 他の奴らは……似たり寄ったりって感じだな。

 俺からしたらAクラスの奴らも、Gクラスの奴らもほとんど変わらない能力値とスキルだ。


 さて、鑑定も終わったしどうしたものか。

 六対一でも負ける気はしないが、その後のことを考えるとな……。

 相手は辺境伯の息子で、次期辺境伯らしいからな。

 やるなら学院の退学はもちろんのこと、最悪この国との戦いは覚悟しとかないと。

 でも、さっきからウザいんだよな。


 必死な顔して殴りかかってきてるし、「クズが、動くな!」とか無茶を言ってるし。

 止まったらお前らにフルボッコにされるだろうが!


「この野郎! この野郎! なんであたらねぇんだよっ!」

「知るかっ! プジャ、早く捕まえろって!」

「ハァハァ、俺、お前、捕まえる。だから、止まる」


 力士みたいな体格をした奴が俺を捕まえようとするが、太い両腕が何度も空を切る。

 ハァハァ言いながら抱きしめようとするのは止めろ!


「こいつ一体何しやがったんだ!?」

「おい! クレアたちがもう直ぐ帰ってくるぞ!? 何、手間取ってやがる……チッ、お前ら火龍を撃つから時間を稼いどけ!」


 リシャールは俺に殴りかかるのを止めて、魔法詠唱の態勢に入る。

 と、同時に俺のスキル、危険察知が発動する。


 魔法を発動させるには集中、詠唱を行わなければいけなく、戦闘中に発動させるには余りにも時間がかかり過ぎる。

 その分威力は高く、戦闘状況を一変させることも可能だが、それも魔法が発動しての話だ。


 リシャールが魔法詠唱を終える前に一気に近づく。



 鳩尾めがけて拳をひと突き。



 ーードサッ。


 うめき声一つあげず、俺の前でリシャールは崩れ落ちた。


「え?」


 取り巻きの男たちは何が起こったのか分かっていない様だ。

 ここまで来たらこいつらも眠ってもらうか。


 ドサッ。


 ドサッ。


 一人、また一人と、一撃で倒れていく。


「俺、お前、好き。だから、止める」


 知るかっ!

 プジャと呼ばれた男にも問答無用に一撃を食らわす。

 少し力が入ったがまあこの体格だ、大丈夫だろう。


 にしても、やってしまったな。

 これで退学か、はたまた不敬罪とかで死罪か。

 けど後悔はしていない。

 リシャールは俺を殺す気で魔法を放とうとした。

 それは危険察知が発動したことからも間違いないだろう。


 それに今の俺は学院に無理して通う必要性はなくなった。

 勿論、学院というこの世界の知識の宝庫と言える場所は魅力的だが、それも転生当初よりも薄くなっている。

 安全性という観点からもそうだ。

 本当なら安全という魅力的な場所である学院が、これから更に危険な場所に変わることになる。


「そろそろ潮時か……」


 この学院に知り合いも居ないし、あえて言うならリースちゃんくらいか。

 善意を返していない人は。


 よし、決めた。

 このままバズの森の深層まで行ってレベルに関して調べる。

 目処が立ったらアストロ帝国を目指そう。

 今度は国を選んだポイントが無駄になった。

 本当に笑えないな。


 決めたら即行動!

 おっと、その前にしっかりと潰しとかないとな。


 善意には善意を、悪意には悪意を。

 殺意には殺意を。


「こいつを生かしておいても後々厄介なことになる可能性があるしな。一応苦しまずに済む様に『鎌鼬』でやって……って、誰か来た。そういえばこいつ、クレアたちがとか言ってたな」


 周りに隠れる場所が残っていない。

 しょうがない、面倒なことになったらみんな眠ってもらおう。

 みんな眠らしたら火の勢いが弱まっているとは言え、焼け死ぬ可能性もあるか。

 うーむ。


「リシャールさまー! 只今残党狩りが終わりました!」

「あれ? リシャール様? キャー!! リシャール様が倒れてます!」


 うわーーロリの大行進かよ!

 総勢10名に及ぶロリ達が、甲高い悲鳴を上げながらこっちに向かってくる。

 こいつ、こんなにモテるのか? 嘘だろ?

 逆立った赤髪の後頭部を見ると、何故かさっきよりも殺意が増してきた。


「そこのあなた! 何を突っ立っているのですか!? リシャール様を早く介抱しなさい!」


 銀髪ロングの釣り目ロリが、凄い剣幕で詰め寄ってくる。

 いや、何故俺が……。

 こいつも男に介抱されたくないだろうに。


 リシャールは瞬く間にロリ達に囲まれて介抱されだした。

 なんだか興が削がれたというか、どうでも良くなってきた。

 もういいわ! 一生そうやって囲まれてろ!


 俺を怒鳴った銀髪ロリも今はリシャールの介抱に夢中のようだ。

 このまま静かに立ち去ろう。

 何もなかったかのようにバズの森の深層に向けて足を進める。



 じゃあな、リネット魔法院。






「待って! 待って! リズ!」


 どこかで聞いたことある声だが気のせいだろう。

 この世界に俺の知ってる奴は居ないはずだからな。

 あ、少し居るか。


「待って、待ってよ!! リズ!!」


 チッ! その声で呼ぶんじゃねえよ。

 最近は治まってきたのに、また頭が痛くなってきた。


「クレアさん! どこに行こうとしているのですか!?」


 後ろで言い争う声が聞こえてくるが、そんなことどうでもいいくらい頭が痛い。

 さっさとこの場から立ち去ろう。


「リズ!! リズ!!」


 どうして俺を見てそんなに必死そうな声を出す?

 どうして俺はこれ以上進めない?

 くそっ!


「さっきからなんだっていうんだ!! 俺に用があるならさっさと済ましてくれ!」


 勢い良く振り返る。

 そこには四人の女の子に雁字搦めにされながらも、強い瞳でこっちを見つめる金髪の少女が居た。

 胸が痛くなるほど強く、強く、見つめている。

 この子がクレアだということはすぐに分かった。

 クレアの声、瞳から何か事情があることも分かった。


 でも今の俺には関係のないことだ。

 彼女と俺は初対面なのだから。

 俺は俺の目的のために進むだけだ。


「用がないなら俺は行くぞ」


 こちらを見つめたまま言葉を発さないクレアに背を向けて走り出す。


 関係ないことだ!

 関係ないことだ!

 関係ないことだ!


「俺には関係……チクショウ……」


 何かが俺の魂の中で暴れ回って、戻れ! 戻れ! と訴えかけてくる。

 こんな辛い気持ちになったのはいつ以来だろう。

 過去を遡れども遡れども思い当たらない。


 どうしてもあの声が頭から離れない。

 どうしてもあの訴えかけるような瞳が忘れられない。


 無意識に頬を伝う水を拭うと空を見上げる。


「雨?……え? 俺が泣いているのか?……どうして」


 俺が泣いているのか、俺の魂の中で暴れている奴が泣いているのか分からない。

 でも涙が止まらない。

 どれだけ歩いても止まらない。


 多分俺は間違った選択をした。

 魂の思うがままに進めば、道はこの先には続いていないだろう。

 きっと遥か後ろに続いているはずだ。


 でもそれを選ぶことは納得出来ない。

 選べば俺という確固たる存在が、この世から消滅してしまう気がするからだ。


 それから数日間、あてもなく道無き道を彷徨った。

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