◇色褪せた想い
キーワード:ラブレター・失恋
高校を卒業してからもう5年がたった。
今更あの頃の色恋沙汰にとやかく言うつもりはないけれど、好きだった人がいた。
それは単なる好意だったのかもしれないし、恋心だったのかもしれない。曖昧にしか思い出せないそれを今朝、夢で見たことをおぼろげに覚えている。
顔も思い出せない想い人。
私にはもったいない、そんな人。その感情ばかりが私の心を独占していて、声も姿形も思い出も風化してしまった。
引き出しの奥にしまった宛名の無いラブレター。
きっとその人のためだけに綴ったもの。今では行き場のないままに色褪せてしまった。
名もないあなたへ過去の私が送ろうとしたもの。
今の私が送ったら、うまくいくのかな。
顔も分からない思い人へ想いを込めて、色褪せた封筒に真っ白い封筒を重ねた。
読んでくださり、ありがとうございます。