終わる 始まる
リサは毎週金曜日に地元の駅をでるとすぐに見えてくる大通りにある
学生でごったがえしているチェーン展開しているコーヒーショップでコーヒーを買って
大通りに再び戻って、右にまっすぐ200mほど歩くと、左手に見えてくるさっきの賑やかな大通りのせいでより閑散としているように感じる、車一台が通れるか通れないほどの細い道を曲がり、そこをまっすぐ歩いて15分のところにある家までコーヒーを飲みながら歩いて帰る。というのが習慣になっている。
リサはいつものように学生でごったがえしている店内を横目にカウンターでコーヒーを注文した。
もともとこの店は学生をターゲットとしていたわけではない。ターゲットは社会人たちだった。
このコーヒーショップはコーヒーだけでなくフローズンドリンクなども販売している。そのフローズンドリンクたちが美味しいと社会人の間で評判となり、流行した。
それをみた学生たちの間では社会人に紛れてフローズンドリンクやコーヒーを飲むのがお洒落だと思われるようになった。しかし学生たちは社会人のに紛れて飲むのがお洒落だと思い込んでいて、その静かな空間で飲むのこそがお洒落であるとは気付かなかった。
店内で大声でべらべらと喋る学生たちのせいでコーヒーショップの本来ターゲットだった社会人は離れていき、このコーヒーショップのお洒落で静かな空間というコンセプトは崩壊してし、社会人に紛れてお茶を飲む自分がお洒落だと勘違いしている学生たちでごったがえしている五月蝿い空間というイメージが世間に染み付いてしまった。しかしはコンセプトは崩壊してしまったといえ商品の味は全く変わっていない。
リサは本来ならコーヒーショップでゆっくりコーヒーを飲んでから帰りたいと思っているのだが、
こんな五月蝿い学生でごったがえしているお洒落のかけらもない店内でコーヒーを飲んで、周りや店員を含めた店内の人たちから五月蝿くて下品な学生と自分を同一視されるのは自分のプライドがなんだか許さなかったし、それよりは閑散とした細い道で歩きながらのむほうがましだと思った。そうしてリサの毎週金曜日の習慣ができたのであった。
ちなみにリサと同じような考えを持っている社会人や学生たちもリサの知る範囲では同じ方法をとっているようだ。
コーヒーを待つ時間は携帯を弄るには短すぎるしぼーっとするのにも長すぎる。なのでリサは学生の会話に耳をすます。
リサは五月蝿い学生は嫌いだが五月蝿い学生の話す話題は好きだ。自分も学生だが、自分と違うタイプの性格の人のいろんな事情が聞けて知らない世界が知ることができておもしろいからだ。
そんな学生たちの会話に耳をすましているとコーヒーはすぐにくる。
リサはいつものようコーヒーを受けとるとそのまま体をカウンター横のトッピングコーナーにスライドし、見た目も量も味も全く同じのシュガースティックが山のように入っているボックスから適当にシュガースティックを一本取り出してコーヒーに混ぜて店を出た。
今日も車と人が沢山いるいつもと同じ大通りだ。
いつもの細い道を歩き、家まであと少しというとこまできた。
リサはコーヒーを飲もうとコーヒーと顔を持ち上げた際にふとカーブミラーに目をやった。リサのコーヒーを飲む手が止まった。
カーブミラーの中のリサの後には全身黒づくめな、絵に描いたような不審者が右手にナイフを持ってたっていた。黒いパーカーをきて、フードをかぶっていたのでリサからは不審者の顔がみえない。
リサは勢いよく後を振り返った。勢いよく振り返ったので、右手にもっていたコーヒーが少し溢れてアスファルトに落ちていった。
カーブミラーの中にいた不審者がそこにはいた。
さっきこぼれたコーヒーがアスファルトに染み込み始めている。
リサはああ、殺されるんだなと思った。
正直それもいいかなとおもった。正直毎週金曜日のコーヒーも飽きたところだしと思った。
見知らぬ学生の会話も別に絶対聞きたいというわけでもないしと思った。
別にこれといった生きがいもないしと思った。
好きなバンドの新譜が聴けないのは嫌だけど幽霊になっても聴けるかと思った。
私は生に執着していないと思っていたけどそうでもなかったなと思った。
いざとならないとわからないものだなと思った。
でももう遅いしと思った。
そしてリサはその場でゆっくり目を閉じて自分の胸にナイフが突き刺さる瞬間を待った。
不審者の荒い息だけが聞こえる。
リサが目を閉じてから30秒ほどが経過した。
リサはさっきまで唯一聞こえていた不審者の荒い息が消え、すすり泣きのような音がし始めた
ことに気づいた。
リサはゆっくりと目を開けた。
不審者の男は地面にへたり込んでいた。
不審者は小刻みに震えていた。
頬に涙が流れていた。
頬を伝って流れた涙は不審者の来ていた黒いパーカーに落ちて消えていった。
私はおそるおそるへたりこんでいる不審者の黒いパーカーのフードをはずし、顔をみた。
リサは驚いて目を大きく見開いた。
リサはこの顔をしっていた。
クラスメイトだ。
大崎リクだ。
大崎リクは成績優秀で運動神経抜群で容姿端麗で長身でスタイルがよくてお洒落で
誰にでも優しくて誰とでも仲良くできる、
絵に描いたような非の打ち所のない男子だ。
そんな非の打ち所のない彼なので、同級生の誰もが彼の存在を知っている。男子の誰からも好かれている。もちろん女子から絶大的な人気を得ている。
ちょうどリサの友人が彼に告白して先月フラれたところだった。
ちょうどさっき、コーヒーショップで彼の話題を耳にしたところだった。
「大崎くんだよね?」と
リサはリクが右手に握っているナイフに気をつかいながらおそるおそる話かけた。
「・・・・・・黒木さん・・・・?!」
リクは目を大きく見開いて震えるのをやめた。
その代わり顔が一気に真っ青になった。
そして再び震えはじめた。そして
リクはその場でリサに土下座をした。
そして
「頼む、このことはいわないで」
と今にも泣き出しそうな声でいった。
リサの父は単身赴任で家にかえってくるのは2ヶ月に1回ほどだ。
リサの母はパートにいっていて、毎週月曜と金曜は夜勤なのでリサが
帰ってくるころにはもう家にはいない。
ということをリサは思い出した。今日は金曜日だ。
リサはいわないからなんでこんなことしたのかじっくり聞きたいからうちに来てという趣旨のことをリクに言った。
リクはなにも言わずにゆっくりとうなずいた。
その動きが女子のようだったので、リサはそれが少し鼻についた。
それから二人は無言で並んで歩いた。リサはリクに気づかれないようにリクの横顔を見たが、リクは学校では絶対しないような覇気のない、
顔や目に全く力の入っていない死んだ顔をしていた。
リサはそれをみてむしゃくしゃした。
すっかり冷めてしまった残りのコーヒーを飲む気になれず、立ち止まりコーヒーを道路にぶちまけた。
冷めたコーヒーが色の違うアスファルトから浮いてしまった。
空っぽになったカップは丁度そのとき横にあった自動販売機の隣に設置されていた缶・ペットボトル専用のごみ箱に無理矢理押し込んだ。
リクはそれを見て、学校で見せたことがあるような驚いたような顔をするのかと思ったが死んだ顔のままだった。
それをみてリサは余計にむしゃくしゃした。
***
のろのろ更新していこうと思います。
フラグ立ってますが恋愛小説ではないです。
中二感満載な作品になりそうです。
挫折するかもしれないです。
よろしくお願いします。
あと上の文、まだ気に入らない部分がいっぱいあるんで書き直すかもです。