子どもの時のほうが物覚えがいい
そうだ。私だ!
「じゃあ、ここからここまで。覚えるわよ」
「えー。難しそうだよ……」
楽冶がテーブルに向かい、永琳がその横に座っている。
楽冶の目の前には、永琳がどこからか取り出した、ぶ厚い本があった。
その本の名前は「薬の全て」(これから含む)
「ゆっくりでいいから。それに、一回で覚えろとは言わないわ」
「でも……」
「それに……一日頑張ったらご褒美あげるから」
「本当!?」
「ええ。本当よ」
「じゃあ頑張る!」
そう言って楽冶は、本を読み始めた。
因みに本の名前の「薬の全て」というのは、元もとの名前であるが(これから含む)というのは、永琳が書いたものである。
それはつまり、永琳が、本に載っていない薬を作った際、レポートをこの本の最終ページにとめていっているからである。
「分からないことがあったら聞くのよ?」
「うん!分かった!」
永琳も暇ではない。足りなくなった薬の補充や、新しい薬の開発など、やることは沢山あるのだ。
だが、自身の机に向かった永琳は、すぐに楽冶に呼ばれる事となった。
「えーりんお姉さん」
「何?どうしたの?」
「これ……読み方が分からないよう」
「えーとこれは……腹痛ね」
「じゃあこれは?」
「……咳よ」
知識が、見た目レベルにまで、落ちてしまった楽冶は、殆どの漢字が読めなかったのである。
だが、そんな楽冶にも、永琳は甘くなかった。
「楽冶。次からはこれで調べなさい」
「これ……何?」
「辞典っていって、調べ物をするためのものよ。漢字が読めなかったら漢字辞典。意味が分からなかったら国語辞典を使いなさい」
辞典の使い方を説明すると、永琳は、また自分の机へと向かった。
「楽冶。今日はそろそろ終わりよ」
永琳が声を掛けると、楽冶は顔を上げた。
「どこまでいけたの?」
「えーと……ここまで!」
楽冶が指差したところを見ると、永琳が言っていたところより、だいぶ進んでいた。
「あら?こんなところまで進んだの?」
「うん!頑張ったんだよ!」
「じゃあちょっと復習してみましょうか」
永琳が本を持ち、楽冶に問題をだす。
楽冶は、永琳の問題を全部答えてしまった。
「楽冶……」
「なあに?」
「……凄いじゃない!」
「わわっ!」
嬉しかったのか、また楽冶に抱きつき、そのまま持ち上げた。
「じゃあ約束通り、ご褒美あげましょうか」
「いいの!?」
「ええ。楽冶頑張ってるから」
「わーい!」
永琳は、楽冶を抱っこしたまま、居間へと向かった。
居間に着くと、そこにはてゐがいた。
「あれ?お師匠どうしたの?」
「楽冶にお菓子でもあげようかと思って。今日は勉強を頑張ったから。ねー」
「うん!」
「お師匠が……ねー って……」
永琳と楽冶の会話を聞いて、てゐは頭を押さえた。
頭痛が酷くて。
「てゐ。何かお菓子あったかしら?」
「あー。饅頭があったんじゃないかな。戸棚のとこ」
「取ってきてくれる?」
「えー……分かりました。行きますよ……」
永琳が 私は楽冶と一緒にいるから オーラをてゐに向かって出すので、てゐが取りに行くしかなかった。
「はい。これでいい?」
「ありがとう。てゐ。ほら。楽冶もお礼言って」
「てゐお姉ちゃんありがとう!」
「まあ……うん」
それだけ言うと、てゐは立ち去ろうとしたが、永琳に呼び止められた。
「てゐ。相談があるのだけれど」
「お師匠が?珍しいね」
楽冶が必死に饅頭を頬張っている横で、二人は話し始めた。
「相談って?」
「実は……あなたが楽冶を運んできたときがあるでしょ?」
「あー。あったね。そんな時も」
懐かしむような口調で、てゐが言う。
「その時に……何ていうのかしら。楽冶の口に食べ物を持っていってあげたじゃない」
「うん。それがどうしたの?」
「本音を言うと……私は友達がどんなものなのか気になったのよ。だからてゐに変わってもらったの」
「……へえ」
てゐは、「嫌な予感がするなぁ……」と思っていたが、顔に出ないように気を付ける。
いつもなら、そんな事にも気付きそうな永琳だが、考えていることが恥ずかしいのか、気付いていないようだった。
そして言う。
「だから……今度は 恋人 っていうのが気になるのよねえ。どうしたらいいかしら」
だが悪い予感というのは当たるもので。
やっぱりか。と思う、てゐであった。
いや。本当にいきなり3連休するとは…
申し訳ないです。
初小説だから最後まで何とかやりたいですなぁ…




