竹林の奥の…兎さん?
二匹の兎さん登場
てゐっ☆
「おお。いっぱいあるな」
竹林の入り口にはあまりなかったが、少し奥に入ると筍が顔をだしていた。
とりあえず、一番近い筍を掘り出しにかかる。
「よいせっ!」
自分でもよく分からないが、少しは力の入る声をあげ鍬を振り下ろす。
ザクッザクッザクッ……ふう一本ゲット。
本当にいい時期の筍は、踏んでやっと分かる程度の出具合がいいらしい。
つまり今回は少し遅かったが……まあ、許容範囲内。つか金がないから、食べれりゃいい理論である。
さて。どんどん掘りますか。
「ふい~。疲れた」
籠が半分くらい埋まって、重くなってきたので休憩。
まだまだ周りに筍の姿はあるが、一人でこれだけ掘ると滅茶苦茶疲れる。
そのために休憩するのだ。けっしてサボりではない。
そんな言い訳を誰かにしていると、ふと気付く。
「あれ?どの向きだっけ?家……」
迷ってますね……
そういえば忘れてたよ……ここの竹林の名前。
ここの竹林の名前。
俺の状況をみて予想は付くだろうが、この竹林の名前は 迷いの竹林
偶に帰ってこないものが現れるという、危ない竹林だ。
「うーん。こっちか?」
独り言を呟いて、そちらに足を踏み出すと。
ズボッ!
「おおうっ!」
地面の感触がなくなり……目の前が暗くなった。
誰かの声が聞こえる。
もちろんガンガン聞こえるわけではないが、意識を取り戻すには十分な音量だ。
「あ。起きたウサ」
意識を取り戻し、声の方を見ると、兎耳を生やした幼女。
「てゐか」
「ウッサッサッサ。久しぶりウサね。我が同士」
その幼女の名は因幡てゐ(いなばてゐ)。い ではなくて ゐ らしい。ここ重要。
悪戯が趣味で、一時期二人で組んでいた事もある。
ガラッ
「起きたんですね?大丈夫でしたか?」
そこに襖を開けて入ってきたのは、またもや兎耳を生やしている。
ただこちらは少女。
「よう鈴仙。久しぶりだな」
こちらの少女は鈴仙・優曇華院・イナバ(れいせん・うどんげいん・いなば)。
長ったらしい名前なので、皆が呼んでいるように鈴仙で固定。
ウドンゲ(優曇華)と呼んでいる人もいる。
「その調子なら大丈夫そうですね」
「当たり前ウサ。私が仕掛けた罠で死人はださないウサ」
「てゐは黙ってなさい。本当にすみません」
「いや。俺も油断してたしな。仕方ない」
「精進しなさいウサ」
「あなたも謝りなさい!」
てゐは鈴仙に怒られているが、どこ吹く風といった感じだ。
まあ。いちいち謝っていたら悪戯稼業なんてしてないしな。
当たり前といったら当たり前である。
「あー。鈴仙。ちょっとトイレ借りるぞ」
「あ。はい」
さてさて。やられたからには何とやら……
「ただいまー」
「おかえりなさい」
「おかえりウサ」
トイレから帰ってきて、布団に座る。
「俺は今からどうすればいいんだ?」
「一応、頭を打ってるようなので、お師匠に診察を受けてもらいます」
「じゃあ問題アリウサね」
「お前に言われたかねえよ……」
てゐに言い返してみるが、「ウッサッサッサ」と笑われてしまった。ちくせう。
「そういえばてゐ。お師匠が呼んでたわよ?」
「何ウサ?」
「何かイナバ達にやってもらいたいことがあるんだって。イナバ達は、あなたの言うことのほうが聞くから」
「あー。しょうがないウサねえ……」
そう言うとてゐは部屋を出て行った。
「……予想通り」
「え?」
「鈴仙が来ると、何かしらの用があっててゐが出て行くパターンが多いからな」
「……もしかして?」
「ああ」
「ウサアッ!?!?」
今出ていった兎耳幼女の声が響いた。
イナバウワー!!!




