暖かくなってきました
春ですよ〜
春ですよ〜
春ですよ〜
最近は寒さも和らぎ、暖かくなってきた。
その証拠が、この前三人に貰った花といえるだろう。
窓際に綺麗に三種類の花が咲いている。
そういえば、この花には意味があるって言ってたが、何なんだろうか。
未だにそれは謎のままで、答えがいつでるのか分からない。
「ん~。眠い……」
暖かくなってきたせいで、日向にいると眠くなる。
本当に寝てしまおうかな……
「春ですよ~。春ですよ~」
この季節にしか聞けない声がする。
窓の外を見ると、白い服に白い帽子。春の妖精ことリリー・ホワイトがこちらを見ていた。
「よう。リリー。一年ぶりだな」
「春ですよ~」
「そうだな。もう春だな」
「春ですよ~」
「……おりゃ」
スコン
「いたっ!何するんですか!」
「いや。普通に喋れよ」
「私が 春ですよ~ しか言えないと思ってる人多いんですよ?」
「かまわん。喋れ」
「何て横暴!」
リリーとの交流は多くはない。
それはもちろん、リリーが春にしか現れないからであるが……
こうして繋がりがあるのは、昔のことだが、リリーがさっきのように窓から「春ですよ~」と言ってきたので、興味を持った俺が招きいれたのが始まりだ。
そこで結構話が弾んでしまい、リリーは毎年ここに春を呼びかけに来る。
「それで楽冶さん。いつものが欲しいです」
「あー。あれな……この前買ってきた」
そして持ってきたのは桜餅。
「わあい!頂きます!……ハグハグ」
「相変わらず早いな……」
春の妖精だからか、こういう春のお菓子が好きらしい。
もちろんタダではなく、俺は今の周りの情報を教えてもらっている。
「リリーよ」
「んぐっ。おいしいー!」
「リリー!」
「はいっ!何ですか?」
「毎年恒例のあれを教えてくれ」
「ああはい。情報ですね」
何故リリーに聞くのかというと、リリーは春を伝えるため、幻想郷各地を周っている。
だが、ここの家には停滞するため(あと桜餅を食べるため)最後に来るらしい。
だからリリーに今の状況を聞くのが手っ取り早いのだ。
「ええとですね。霧の湖が静かでした」
まあ。あいつはここにいるからな。
「紅魔館は門番が居眠りしている、変わらない日常でした」
美鈴。またか……
「白玉楼では、誰かが「家計がー!」って言ってました」
頑張れ妖夢。そして幽々子。少しは勘弁してやれ。
「そういえば竹林には筍が生えてきてました。春ですねえ」
何か最後だけ違う情報だな……春が好きなのは分かるが。
「成る程」
「このくらいでよろしいですか?」
「ああ。さんきゅ」
「それでは今年はこの辺でお暇しましょう」
難しい言葉知ってるな。基本妖精はバカなんだが……
「大妖精さんに教えてもらいました」
ああ。成る程な。さすが大ちゃん。
……あの子も妖精だけど。
「それでは」
「おいおい……そんな口で外に出るなよ」
「むぐっ」
リリーの口の周りについていた、桜餅のベトベトを拭きとってやる。
まったく毎年同じことしてるな。
「……ありがとうございます」
「ああ。じゃあ来年も。と言わずにいつでも待ってるからな」
「それは無理ですよ。春以外は寝てるんで……それでは今度こそお暇しますね。また来年~」
リリーは別れの言葉を言うと、窓から飛び立っていった。
春ですよ~
まだ言うか……
ふむ。リリーから貰った情報から考えると……
「筍だな……」
金欠なんで。
できるだけ食費を抑えたい。
「という訳で。筍掘ってくるわ」
「いってらっしゃい」
幽香に伝えると、簡単に許可がでた。
「だってお金ないんでしょ?」
「まあその通りだ」
「この家で働いてるのはいないんだから、しっかり取ってきて頂戴」
「……あいよ」
打算的な考えが含まれていたらしい。
けど確かに、そろそろ働かないヤバいよな……
……とりあえず筍掘りながら考えるか。
そう思い、倉庫から鍬と籠を引っ張り出して、竹林へと向かった。
まあ竹林自体はすぐそこなんだけどな……
さあ、やっと竹林だ!
春でよかった…




