落ち着ける空間
過去話2です。
駄々をこねるゆゆさま
もぐもぐ……ゴクッ。次
楽冶の作った朝ご飯はそれはもうおいしかった。
期待以上の出来で休む暇なく料理を口に運んでしまう。
「幽々子様ー。朝からさすがに食べすぎじゃないですか?」
妖夢の発言に答えるべく私はやっと料理を食べるのを一時中断した。
「そんなことないわよ~。それにこんなおいしい料理、食べなきゃ損よ?」
「いえ……それを考えても多いかと……」
「まあまあ妖夢。作った側としてはこんなに美味しそうに食べてくれるなら、どれだけ食べてくれても嬉しいぞ?」
「美味しそうじゃなくて美味しいのよ~?」
「そうかい。ありがとな」
楽冶の言葉を聞いて私は食べるのを再開する。
……ホント美味しいわ。憎くなるくらい。
ある日の朝食後。
いつものように居間でゴロゴロしていると楽冶が来た。
「あら楽冶。どうしたの?」
「いや特に何もないが……今日は妖夢買い物に行ったからな」
つまり妖夢の稽古を見て暇を潰せないからここに来たわけだ。
まあ私も暇だし……
「じゃあ楽冶。私も暇だからお話でもしましょう」
「お。いいな。じゃあ茶請け持って来るわ」
「甘いのがいいわ~」
「あいよ」
楽冶がお茶請けのお菓子を持ってきたので二人でテーブルを挟んで座る。
真ん中にお菓子と急須。そして湯飲みを置いて。
……さあ何を話そうかしら。
「う~ん。いざ話そうとすると中々内容が思いつかないわね~」
「確かにな……まあとりあえず、ゆっくりお茶でも飲んでいれば自然と出てくるだろ」
「そうね」
ふう……おいしいわ。
「暇だな」
「暇ねえ~」
だが不思議と気まずい空間ではなかった。
どちらかといえば落ちつける空間。
「なんでだろうな……」
「何が?」
「何か分からないけど幽々子とはこういう……何ていうか静かな空間に二人っていう、普通は気まずくなるような感じでも落ち着けつけるんだよな」
なんという偶然か。
彼と私は同じことを思っていたらしい。
「奇遇ね~。私もそう思ってたのよ?」
「そうなのか?」
「ええ。普通は部屋に二人きりとか気まずいじゃない。なのに落ち着けるな~。って」
「そうだよな~。特に男女二人だしな」
これで会話は一旦途切れた。
そして確かに。と思う。
男女二人きりで部屋にいたら気まずい。
そうね~。男女二人きりで……男女二人きりで?
そういえば今……楽冶と二人きり……
「あ……」
「ん?どうした?」
「な!なんでもないわ!」
「そうか?」
それを意識したら急に恥ずかしくなる。
楽冶は気付いていないのか。それとも気付いているが気にしていないのか分からないが飄々としていた。
それが何だか悔しくて少しちょっかいを出してみる。
「楽冶?はい。あ~んして?」
「……何だ?」
「だから。あ~ん」
「だからじゃなくてだな……」
「男女が二人でいたらこういう事するんじゃないの?」
「いや……付き合ってるやつらだろ。そういう事するのは……」
「そうなの?」
分からなかった……
やはり長い間そういうのとはご無沙汰だからかしら?
「じゃあ付き合ってるって設定でいいじゃない」
「はああ?何言ってんだ?」
「こういうのやってみたいのよ」
「え?。ダルいな……」
拒否されてしまった。
だが楽冶には弱点がある。
「やだー!やりたいのー!」
「ええー……」
そうして楽冶に飛びついて
「やーらーせーてー!」
「分かった分かった!だから駄々をこねるな!」
「ふう……」
「おい!?」
楽冶の弱点。
それはお人好しすぎること。
だから少し駄々をこねるような素振りをすれば聞いてくれるのだ。
「わざとかよ……」
「やってみたかったのは本当よ?」
「そりゃ別にやりたくないのに駄々をこねる振りする奴はいないだろ……」
「ふふふ~」
それでも楽冶が自ら口で言ったのだからやって貰おう。
それでは……
「一日だけ恋人ゲームの始まりね~」
「それは無理よ……」
「紫?」
気がついたら紫が。
何しに来たのだろうか。
「楽冶にはやってもらいたいことがあるのよ」
「俺?」
「そう、……で。連れてくる際に間違えて落としちゃって」
「それで白玉楼にいたと……」
「そういうことね。という訳で楽冶とのゲームはまた今度にして頂戴」
「え~?。紫のケチ~!」
だが相手は紫。のらりくらりと文句を交わしスキマで逃げてしまった。
楽冶を連れて……
と。こんな風に最初の出会いは終わっている。
ならばこの続きをするしかないだろう。
そう思った私は楽冶に言う。
「じゃあ……一日だけ恋人ゲームをしましょう」
紫は寝起きだったんです。
恋愛はご無沙汰の皆さん。
嫁がいれば問題ないですよね!




