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東方楽々記  作者: COPPE
第八章 妖怪の山を登ってみた
207/223

私たちが出会った季節

遅くなりました。すみません。

まぁ何とか……です。秋姉妹過去話れっつごー



雪が降って雪が溶けて、桜が咲いて桜が散って、暑くなって少し涼しい季節になる。その涼しい季節は、食欲の……と呼ばれるくらいたくさんの実がなって、葉が紅くなって落葉する。それが私たちの季節。秋。

秋の神である私と姉さんは、春夏秋冬と大まかに四つある季節の中で秋にしか表にでてくることができない。何故なら季節がごちゃごちゃになってしまうし、私たちのように季節によってでてくる妖怪や神様がいるわけで……やっぱり季節が違うとウマが合わないのよね。


あ。自己紹介が遅れたわね、私は秋穣子。姉さんの名前は静葉っていって、二人で秋を司っているの。まあ、見た目だけじゃそんな風には見えないと思うけど……



「ちょっと穣子!何勝手にやってるのよ!」

「あ。姉さん。今度は私たちの過去話になるらしいわよ?」

「だからよ。勝手にやるのはやめてくれる?」



う。姉さんの目が怒ってる……そんなこと言われても二人同時にやるらしいし、結局はどっちか一人がやらないといけないのよね。



「もう……しょうがないから今回は譲ってあげるわ。その代わりちゃんと私のも話してよね?」

「分かったわ。何とかやってみる」



な、中々難しい注文をするわね。私の語りで姉さんの過去も振り返れっていうの?こんな難しいことをするからグダグダになるのよ。まったく……ま。なんとか始めるしかないわね!



「お前らも芋掘り手伝えよ」

「何言ってるのよ。来年も豊作になるようにちゃんとお供えしなきゃでしょ?」

「くっ……って。お供えは焼き芋でいいのかよ」



よし。楽冶一人に芋掘りさせることに成功したわ。

それじゃあいくわよ!















もう何年前になるのかしら。それは分からないけど、最初の出会いはこの場所なのよね。

私と姉さんはその年も焼き芋を食べるために、このサツマイモ畑と化している場所に来た。そしたらその畑のすぐ隣から煙が。さらにその前には男がいるではないか。

もしかしなくてもサツマイモを勝手に掘り起こして、焼き芋にして食べているのでは?そう思った私は飛ぶ速度を早めて、その男のいる場所へ向かった。



「こらー!ここで何してるのよ!」

「ん?お前誰だ?」



私の声で振り向いた男は、私の質問には答えず逆に質問を返してきた。

見たところ人間のようだが、私のことを知らないのだろうか。一応これでも豊穣を司っている神だ。その為私に危害を加えることがないよう、人里の人間の殆どには私の容姿ぐらいは伝わっているはずなのだが。つまり私を知らないということは、その殆どに含まれないか人里の外で暮らしていて供えをする必要がないか、最近この幻想郷に迷い込んだ新入り外来人ということである。まあ一番可能性が高いのは、恐らく新入り外来人であろう。そう私は勝手に納得することにした。



「穣子〜。そんなに急がなくてもいいでしょ?」



息を切らしながら姉さんがやってきた。急がなきゃいけないわよ。私たちの聖地ともいえるサイツマイモ畑が食い荒らされてるのよ。



「別に荒らされてないでしょ……」

「何言ってるのよ!私たち秋の神の大好物を!私たちの目の前で食べてるのよ!」

「え?お前ら神なの?」



私たちの会話に、人間は驚いたように割り込んでくる。本当に私たちのことを知らないようだ。とりあえずどうしていいか姉さんに聞いてみることにしよう。決して自分で判断するのが面倒なわけではない。うん。決して。



「姉さん。この人間私たちのこと知らないみたいなのよ。どう思う?やっぱ最近幻想入りした外来人かな?」

「うーん。その可能性は高いわね。人里まで送っていったほうがいいかしら。一応私たちそれなりの関係だし」



やっぱりそうよね。面倒くさいなあ……瞬間移動とかできるなら別だけど、外来人は飛べないから、私か姉さんのどっちかが連れていかないといけないし。

あ。この人間が人里に行きたくないって言えばいいじゃない。その可能性も否定できないわね。まあ、とりあえず聞いてみないことには始まらないわ。



「ねえねえ人間」

「何だ?神」

「むっ。その言い方はちょっとムカつく!」

「お前も人間って呼んだだろ?大体名前も知らないのに何て呼べばいい?」



くうっ!悔しいけどこの人間、言っていることが正論だわ。しかし私から名乗るのも何か癪だ。ああ。こんなときどうすればいいんだろ……



「そうね。私たちが名乗ってなかったわね。私は静葉。秋静葉っていうの。この子の姉よ」

「俺は楽冶だ。姉妹ってことは両方秋だよな?じゃあ静葉って呼んだほうがいいのか」

「そうね。そのほうが助かるわ。中々神をいきなり呼び捨てにする人は少ないけど」

「そんなこと言われてもなあ……他の神も呼び捨てだし。まあ、どうしてもっていうなら静葉さんって呼ぶが?」

「いいわよ。気にしないで……って他の神も?じゃああなたは最近幻想入りした訳じゃないの?」

「ん?ああ。俺は……」



姉さんが先に自己紹介をしてくれて「助け舟ありがとう!」と思ったのに……二人で会話を弾ませないでよ。私が一人ぼっちなんだけど。

しかし口を挟める雰囲気ではないので、とりあえず楽冶の話を聞くしかない。今の部分だけでも、最近幻想入りした人間ではないのが分かったのでよかった。もちろん人里に送らなくて済む。という意味でだけど。

他にも住んでるところは竹林の近くだとか、実は毎年のようにここで焼き芋を食べているのだとか。毎年掘り起こされた跡があったのは、妖怪じゃなくてこいつ……楽冶だったらしい。

むう。もっと前に会っていれば、それだけ私たちが多く食べることができたのに。



「おい」

「あ。何?」

「何じゃねえから……さっきから名前聞いてるんだが。静葉も呆れてるぞ?」



私が色々と考えている間に、二人の話は終わっていたようだ。楽冶が言うように姉さんは、呆れたような目で私を見ている。



「あ。えっと私は穣子。秋穣子よ」

「うん。だろうな」

「何で知ってるのよ!」

「だって静葉が来た時にお前の名前呼んでただろ?」



そ、そういえばそうだったような気がする。だけどそれなら納得いかないことが一つある。それはもちろん、知ってるなら何故名前を聞いたのかということだ。



「んなもん『だろうな』でからかいたかっただけに決まってるだろ?」

「あ、あんあたねえ!バカにしてるの!?」

「静葉がしていいって言ってたぞ」

「言ったわ。人の話聞かないことが多いからって」

「姉さん!?」



何と私は姉さんに裏切られたのだった。

って!そんなことで落ち込んでる場合じゃない!私はこの聖地から楽冶を追い出すんだ!そして今年こそ焼き芋を独り占めするのよ!



「というわけで楽「よし。そろそろ芋も焼けたな。静葉。食べるか?」……」

「いいの?じゃあ頂くわ」



何とその計画はすぐさま崩れ去ってしまった。何でちょうど焼けるのよ!それに姉さんも受け取ってるし!

私は受け取らないわよ。焼き芋の敵から焼き芋を分けて貰うなんて……



「美味しい!私たちが焼くより全然美味しいわ!」

「ん?それはだな。焼き芋にはコツがあるんだよ」

「そうなの?教えてくれたりする?」

「これは秘密だな」

「ええー」



そんなに美味しいなんて嘘よ!……でもちょっとだけ食べてみたいかも。いや、やっぱりダメよ!いやでもちょっとなら……チラッ



「ほら。お前の分」

「きゃあっ!」

「何驚いてんだ?丁度三個焼いてたからやろうと思ったのに。いらないのか?」

「……貰うわ」



あそこまで姉さんの絶賛する言葉を聞いて、私が誘惑に勝てるわけがなかった。我ながら情けない。でも秋を司る神に焼き芋は必需品なのよ。だからこれは仕方ないの!

そう自分に言い聞かせることに成功する。決して私は負けてないわ。ええ。

ただ、絶対に美味しいなんて言って……(ぱくっ)



「何これ美味しい!」



あ。言っちゃった。


今週会社でテストあるの忘れてた(笑)

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