表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方楽々記  作者: COPPE
第八章 妖怪の山を登ってみた
205/223

200万PV達成記念小説〜あまり知られてない館〜④

まさかの毎週月曜日投稿になっている罠。いつ日曜に戻るのだろうか……いや、一応週一投稿ではあるのだけれど。


何か色々よく分からない話になって外伝終了。やはり思い付きでやるものではない。



「リリカ。あなたの番は終わったはずよ」

「だってずるいじゃない。ルナ姉たちは抱きついたりしてるのに」



俺にはよく分からない会話を始める二人。ただしルナサは俺の手から離れず、黒い傘の下でリリカと言いあいをしていた。

これは止めたほうがいいのか?と思ったが、メルランの苦笑いを見て何かあるのだと気付く。その何かが分かる俺ではないが、このまま見守っておくのが吉だろう。もしもの事がない限り。



「どうしよう。ルナ姉また不機嫌になっちゃった」

「リリカのせいだからリリカに任せるしかないだろ」

「うーん……そうね。私も不機嫌なルナ姉から辛辣なことを言われたくないし」



という訳で俺とメルランは静観を決め込むことにした。

ルナサとリリカの口喧嘩がヒートアップしていくが、やはりというかルナサ優勢のようだ。

何かよく分からないが、「おんぶは独断」とか「一番最初だった」とか、そういう言葉でリリカは押されているっぽい。うん。会話の内容が理解できない。

結局のところルナサが勝ったようで、ルナサとリリカの場所変更はなかった。



「うう……それで楽冶。音を聞きたいの?」

「リリカ。お前大丈夫か?」

「……大丈夫だよ。ちょっとご飯が食べられなくなるだけだから」



それは一大事なのでは?しかしリリカが遠い目をしているので中々言う気にはなれず、結局慰めるのはやめることにした。別に隣のルナサの目が怖かったからではない。断じてない。



「まあそれで……うん。聞きたい」

「じゃあ私が聞かせてあげるよ!……クスン」

「だから、これ以上ルナ姉怒らせたら知らないよ?って言ったのに……」



リリカの鼻をすするような音に、メルランが溜息を吐きながら呟いた。長女。恐るべし。















音が聞こえる。

雨の一滴一滴の音が。雨が葉に当たる音が。水面に波紋を作る音が。雨ならではの、色々な音が聞こえる。

リリカの能力によって聞こえるようになった音が、絶え間なく耳……いや、頭へと響いてくる。この三人は、このような素晴らしい音をいつも聞いているのだろうか。



「それがさ……いつも聞いていると慣れちゃうんだよねー」



とはリリカの言葉。そういえば新しい音を探すとか言ってたな。俺にとって今のこの音は新しいけれど、この音を聞き慣れてしまったら他の音を探すのは難しい。俺の頭では他に、風の吹く音とか、その風によって草が靡く音。それくらいしか思いつかないのだから。



「だけどいい音でしょ?」

「ああ。確かにな。初めて聞く音ばかりだ」

「慣れてしまうと、新しい音が見つからない……」



メルランに返答したところで、ルナサがポツリと呟く。



「そうだな。慣れたら確かに難しいだろうな」

「だけど、最近は新しい音を見つけた。自然の音ではないけど、自然に鳴ってしまう音」



な、何か難しいことを言ってるな……言葉じゃよく分からないから、例えばどんなものなのか教えてもらえるか?




「それは……ちょっと恥ずかしい」

「恥ずかしいことすんの!?」

「…………」

「あ。そういう事!ルナ姉。それなら私がしてもいい?」

「ダメ」



メルランの台詞に即答するルナサ。一体どういうことってうおっ!?



「リリカ!?危ないだろうが!飛びつくな!そして危ないから離れろ」

「ふっふっふ〜。いいの?これが新しい音なんだよ?」

「これが?」



この雨の中、自分の傘を捨てて飛びついてきたリリカを受け止める。リリカの身長は小さいので、俺の胸にスッポリとはまるような形になってしまった。

ただでさえ狭い傘の中で濡れないようにバランスを取るとルナサを押してしまいそうになるため、コケないギリギリの角度で留まるしかない。何これきつい。



「離れなさい」

「やだ」

「……離れなさい」

「やーだー!」



何かルナサがリリカを引きはがそうとしてるし!待って!無理矢理やらないで!お前らのほうが力強いから俺が倒れる!

俺が助かるだけなら、リリカの手を振りほどけば問題ないのだが、それをしたら二人ともベチャベチャの地面にダイブだろうからなあ……踏ん張るしかないか。

……ん?もう一人、メルランに何とかしてもらえばいいんじゃね?



「メルラン!ってどこ!?」

「ここよ!」

「また驚かせる気か!というか狭いんだって……」

「離れなさいって言ってるでしょ!」

「ルナ姉は腕組んでるからいいでしょ!」



また驚かせるようにか、メルランが後ろから抱きついてきた。ポルターガイストだからか?

ルナサとリリカはまだ喧嘩中だ。本当にこけそうだからやめてくれないかな……



「ねえ楽冶。私の音が聞こえる?」

「お前の音?振動とかそういうのか?」

「もう……心の音よ!」

「心?ああ……まあここまで密着してたら、恐らくこれかな?って音は聞こえるな」



言われて気付く、トクントクンという音。こいつらに心臓はない。それなのに同じような音が聞こえる。それは三人に心がある証拠で、胸にいるリリカからも、腕を組んでいるルナサからも聞こえてくるとても心地の良い音。

ただ、一つだけ気になることがあって……



「何か……早いな」



気のせいではない、ほんの少しだけ早い音。何か緊張しているような、照れているような、そのくらいの早さの音。



「えへへ。バレた?」

「何となくだけどな」

「凄いね……で。何で早いか分かる?」



リリカがまだ暴れているのが非常にやかましいが、ルナサが引っ張っている為いつまでたっても離せない。仕方がなくリリカを押さえたまま、メルランに聞かれたことを考える……といっても俺は相手の気持ちがすぐ分かるほど凄い人間でも、頭のいい人間でもない。その為こう答えるしかなかった。「分からない」と。



「それはね?私が楽冶のことを好「「メルラン?(姉さん?)」」げっ」



急に同時に発せられた声と、メルランの焦っている声に振り向くと、二人の姉妹がジト目でこちらを見つめていた。俺じゃなくてメルランを。



「メルラン。ドサクサに紛れて何してるの?」

「姉さんがそんなことするなんて思わなかったなー」

「いやこれはその……ね?」



今度はルナサ&リリカ対メルラン。らしい。もちろん四人も傘に入っていれば、これまでの間に雨は弱くなったとはいえ周りの三人は濡れているハズなのだが、そんなものはおかまいなしに口喧嘩を始めた。とりあえず俺を挟んでやるのはやめて欲しい。

三人の声がこれだけ近くで発せられれば自然の音が聞こえるはずもなく、仕方がないので最も聞こえるもの……つまり三人の口喧嘩を聞くことにした。何て面白味のないことをやっているんだ。俺は。



「だったら二人も言えばいいじゃない!」

「それは……恥ずかしい」

「い、言えって言われて言うものじゃないでしょ!」

「じゃあ私が言ってもいいでしょ?」

「それはダメ」

「どうしてよ!」

「どうしてもよ!」



以上。何か恥ずかしいことを言おうとしてる事は分かった。というか意外とメルランが優勢?


三人の口喧嘩を聞いてどのくらい経ったか、まあそんなには経っていないだろうけど、少しだけ日が差してくる。いつの間にか雨という自然の音は消えていて、影がなくなっていく音をなんとなく感じることができた。

三人もそれに気付いたようで、口喧嘩をやめ空を見上げる。俺も傘を閉じて一緒に見ると、分厚い雲の隙間から、少しずつ太陽が見えてくるところだった。

そしてその太陽の少し下側。そこには幻想郷では久しぶりの現象。俺たちにすべての姿を晒すように、その周りだけ雲がなくなっていく。



「……綺麗な音」



ルナサが小さく言った。その目線の先には俺たちが見ているものと同じ、七色の帯。右から左、いや逆かもしれないが、空に架かっているそれは虹だ。



「久しぶりに新しい音を聞くことができたわ」

「うん。虹が架かる音なんて聞いたことないもんね」



メルランとリリカも今までの喧嘩はどこへやら、いつものように話しだす。新しい音が聞けて嬉しいのかもしれない。

俺はというとここにきてリリカの力の効果が切れたのか、それとも付け焼刃だったからなのか、虹が架かる小さい音を聞きとることはできなかった。



「聞きたい?」

「え?」

「勿論今から本物の音を聞くことはできないけど」

「私たちが虹の音を聞いて作った曲を奏でるのよ」



今見たばかりなのに、そのような事が可能なのだろうか?いや、言っているのだから作ったのだろう。俺が少しだけ考え事をしている間に。

折角なので聞かせて貰おう。この三姉妹に。



「それじゃあ始める」

「いっくよー!」

「ちゃんと聞いててよね!」



虹を背景にしながら、どこから取り出したのか、楽器を演奏し始める。木や草に付いた水滴が日の光に反射して輝き、神秘的なステージのようだった。

いつものように指揮者なんていない。それでも三人でしっかりと息の合った音楽を奏でる。

ルナサの鬱の音を、メルランの躁の音を、リリカが人間に聞けるように調整して音を届ける。それは人間が本来聞けないような幻想的な音で……何故だろう。さっきまで聞いていた雨の音よりも、格段に心に響いた。


そして一斉に演奏が終わる。ルナサは弓をおろし、メルランはトランペットを口から離し、リリカは鍵盤から手を離す。その仕草さえも同時に行われ、最初から最後まで俺は目を離すことができなかった。



「どうだった?」



ルナサに聞かれるも、もちろん感想は「凄かった」これしか言うことができなかった。

それでも三人は嬉しそうに笑う。とても仲の良い姉妹に戻って、綺麗な笑顔で。

そして三人一緒に言ったのだ。



「「「じゃあ次は楽冶も一緒に」」」



……だからその楽器はどこから持ってきたんですか?


プリズムは正確には虹ではないらしい。だからプリズムリバーと虹をかけた訳ではない。

すみません。嘘です。虹ではないのは本当です。


自然の音とはどんな音なのでしょうか。聞いてみたいものです。

結局取り合い的な感じになって、新しい音を聞いて演奏して仲直り、楽冶を誘う。となりました。雛祭り編でも曖昧だった楽冶を含めた演奏の詳細は不明のまま。まあ野郎だしいいかー。


キャラクター投票。三姉妹頑張れ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ