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東方楽々記  作者: COPPE
第八章 妖怪の山を登ってみた
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200万PV達成記念小説〜あまり知られてない館〜③

3話で終わらなかった……まあいいか。




向こうから歩いてくる影が二つ。俺が探しに行ったリリカ・プリズムリバーの姉、ルナサ・プリズムリバーとメルラン・プリズムリバーの姿だ。そのまま歩いていくと、最初に集まっていたホールへ降りる階段辺りで、丁度鉢合せとなる。

ルナサが来たということは、それなりに機嫌を直してくれたのだろう。だがしかし……何故今の二人はそんなに険しい顔をしているんだ?何というか、静かな人が怒ると怖いって言ったけど、いつも笑顔のやつが無表情なのも結構怖いな……



「姉さんたち。やっほー」



俺の顔のすぐ横から、にゅっと手がでてくる。何ですぐ横なのかって?それはだな……



「ほら楽冶。早く階段降りてよ」

「はいはい」



リリカをおんぶしているからである。何故おんぶすることになったのかは聞かないで頂きたい。色々あって、最終的におんぶでリリカの機嫌を取ることに成功したのだ。非常に子どもっぽい感じだが。

俺の後ろを音もなく……いや、幽霊だから元々足音はないのか?まあ、歩いてくる二人が少し怖いが、折角直したリリカの機嫌を損ねるのもまた面倒である。階段を降りたら無理矢理にでも落としてやるけど。



「つーわけで降りろ」

「やだよー。あと三時間くらい」

「そんなにできるか!降りなさい!」

「きゃー!」



中々降りようとしないリリカを落そうと、身体を回転させたりしてみるが効果なし。むしろ首に回された手にこもる力が強くなった気がする。ええい!降りろ!いや落ちろ!

だが五回ほど回っても効果なしだった。こうなったらルナサとメルランに助けを頼むしかないな。



「ルナサ!メルラ「リリカ?」おっ。取れた」



俺が言い終わる前に、メルランがリリカをはぎ取ってくれた。しかしメルランの手の先を見ると、リリカの頭が掴まれていた……ん?何か滅茶苦茶怒ってない?

まるで俺が幽香にやられているよう……いや、あんな痛い過去は思い出さないでおこう。



「姉さん!痛い痛い!」

「あ・ん・た・ねえ!一人だけ何やってるのかしら?」

「ごめん!ごめんってば!」



頭蓋骨が砕けるんじゃないかと思うぐらい力が入っているように見えるが、リリカの頭は大丈夫なのだろうか。ルナサは何も言わないし……いや、怒ってるのは分かるんだけどさ。

まあ、姉妹喧嘩はやめようぜ?



「しょうがないわね。楽冶に免じて許してあげるわ」

「ううっ……痛いよお」

「これ以上ルナ姉怒らせたら知らないわよ?」



そうかそうか……え?ブチ切れる一歩手前なんですか?それはちょっと怖いな。いや、すみません。かなり怖いです。

しかし俺が内心怖がっているのを知ってか知らずか、ルナサは俺に近づいてきた。うわー。怒ってる……



「今から新しい音を探しに外に行く」

「はい?」



俺の疑問形の返しには答えずに、ルナサは俺の手を速やかに掴むと扉に向かって歩きだした。そう。速やかに……何でそんなに急いでるんだ?別に予定があるわけでもないから、もっとゆっくりでいいと思うぞ。



「ルナ姉照れてるね〜」

「うんうん」

「……っ!」



妹二人の言葉に、少しだけルナサが反応した気がした。俺としては何に照れてるのか分からないが、ルナサには心当たりがあるようだ。余計に急ぎだした気がするぞ。落ち着けって……


外にでてみると、やはり雨は降り続けている。俺が来たときより弱くなっているが、それでも雨粒は大きく、ザーという音が似合う程の強さだった。俺は持ってきた黒い傘を差して一歩地面に踏み出す。扉のほうを向くと、メルランの青い傘とリリカの赤い傘がパチパチと雨粒を弾き始めたところだった。ん?一本足りなくね?



「ルナサ。傘は?」

「この前壊れたの忘れてた」



俺と同じ黒い傘を持っているはずのルナサは、先日何かに引っかかって破れてしまったそうだ。メルランかリリカのどちらかに入れて貰えば。と思ったが、二人の傘は少し小さめで、二人入ったらどちらかの身体半分が濡れてしまいそうだった。それを考えれば必然的に俺の傘に入ることになるわけで、それならばとルナサを誘うことにした。



「ルナサ。入るか?」

「お、お願い……」



俺と比べ頭一個分ほど小さいルナサは傘の下にギリギリで入ることができたが、やはり普通に立っていてはどちらかが濡れてしまう。騒霊といえども女の子。濡らす訳にはいかないので、俺は肩が少しだけ濡れるぐらいまで傘からはみ出し、ルナサを完全に傘の中へと入れてやる。



「濡れてる」

「ん?ああ。気にするな」

「風邪を引かれたら困るからダメ……こうすれば濡れない」



ルナサは俺のほうへ身体を寄せてくる。それと同時に俺の左手を掴み、そっと傘を濡れている肩のほうへ動かす。騒霊にも少し低めの温かみがあり、それがじんわりと伝わってくる。ルナサの指先は、楽器を演奏するから気を付けているのか、それとも霊だからあまりケガなどは関係ないのか、透きとおるように綺麗だった。

指先を近くで見る機会なんてなかったので少しだけ見ていたが、いつまでもルナサの手が離れないのでどうしたのかと思い、ルナサのほうに顔を向けてみる。

何故か俯いていて、そしてポツリと呟いた。



「気圧が……上がる」

「……は?」

「なんでもない。音を探しにいきましょう?メルランも。リリカも」

「ルナ姉ハッピーだね!」

「何か私が一番ショボくない?」



俺の質問は華麗に流され、よく分からない返答をしたメルランと、何やら文句を言っているリリカと一緒に歩きだす。

先ほどから雨の強さは変わらず、まだ傘はパチパチと雨粒を弾く音をだす。



「いい音だけど、私たちの探しているのと違う」

「そうなのか?新しい音ってどんなのだ?」

「…………」

「本当は新しくなくてもいいのよ。ただ、久しぶりに自然の音を聞きたいなって思ってね?」

「私たちにとって新しい音なんて早々見つからないもの。ついでよついで」



メルランとリリカの言葉に少しだけ納得する。俺たちにとって聞いたことない音でも、騒霊の三人はもう聞いているかもしれない。いや、騒霊だからこそ聞こえている音さえあるのかもしれない。特にリリカの奏でる音は幻想……外の世界で忘れ去られた音だ。人間には聞こえない音を聞いていても不思議じゃない。

自然の音なら、この雨の音は違うのか?と聞いてみたが、「傘は人工的な物だから違う」だそうだ。言われてみたらそうだよな。



「それじゃああっちに行くわ」

「何かあったか?」

「分からない」



ルナサの言ったことに反論する者は誰もいなかった。俺はよく分かってないし、メルランはニコニコと、リリカは若干不満そうな顔を変えず方向だけ修正する。



「楽冶。濡れそうだからこのままでいい?」

「ルナサがいいなら俺はかまわないが……」

「……ありがと」



少し俯きがちなルナサに手を握られたまま、俺は歩を進めた。















結局俺達が来たのは霧の湖。何故なら歩いているうちに見えたから。しかし周りには木や草も生えているし、意外と理想的な場所といえるかもしれない。

ここまで歩いてくる間に雨は少し弱まっている。それでも霧の湖の水面には、大きな波紋が幾度となく発生していた。



「ここは……とてもいい音がする」



隣にいるルナサがポツリと呟いた。



「そうね。この草なんかもいい音を奏でているわ」



続いてしゃがみ込んだメルランも呟く。しかし悲しいことに、俺の聴覚ではその音を認識することができなかった。

俺にも全く音が聞こえないわけではない。しかし聞こえているのは、たくさんの何かに当たっている雨の音が、反響して大きく聞こえている音なのだ。ルナサやメルランが聞いている、それそのものの音ではない。

たった一つの、一枚の葉が奏でる音。忘れ去られた小さい音を、俺は聞くことができない。



「聞きたい?」



声の聞こえてきた方向は、ルナサのいる逆側。右後ろから。その声の主はリリカ。三姉妹の中では狡猾な性格の末っ子。服と同じ色の赤い傘をクルクルと回し、「私ならできるよ?」と悪戯を思いついたような顔で言った。



「聞きたいの?」

「そりゃ聞きたいが……できるのか?」

「大丈夫!リリカさんに任せなさい!でも条件があるわ」



そんなことを言い始めたリリカに返せる言葉は一つ。条件?それだけだった。まあ、そんな酷いことを強要はしないだろう。姉が二人いるし。という思いがあったといえばあったが……

しかし俺のこの返答を予想していたであろうリリカは、数分前のルナサのように俯いてしまった。え?ちょっと待って?俺は何もしてないよな?



「その……ね?」

「…………」

「ルナ姉と交代したい」

「はあ?」



リリカの言ったことをすぐに理解はできなかったが、ルナサが不機嫌になったのと、メルランの笑顔が引きつっていたのはよく分かった。


何か……不穏な空気が漂ってますが大丈夫ですか?


最近平日に書く時間があんまり無いです……申し訳ない。


恥ずかしがり屋のルナサさん

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